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第141話 対光宮

「ハッハッハー!!」


 笑みを浮かべ、敷島兵を斬り殺していく限。

 光宮家の人間の爆死によって、一気に敵の数が減った。

 その間に回復したこともあり、現在の限は無傷の状態。

 まさにやりたい放題と言ったところだ。

 さすがに敷島の人間ということもあり、敵は逃げることなく限と戦っているが、これまでのように集団で攻めかかることができず、返り討ちに遭っている状況だ。


「これは……」


「我々も覚悟を決める必要があるようですな……」


 数の力で勝利を得ようとしていたというのに、今ではその有利はなくなった。

 このまま限に部下たちが殺されて行くのを、黙って見ている訳にはいかない。

 谷田と橋本は、腰に差した刀に手を当て、限を抑えるために自分たちが動くことを決意した。

 しかし、限の実力は驚異の一言で、最悪相打ちを覚悟した。


「…………」


 部下に自爆をさせてでも、限を仕留めるつもりだった。

 しかし、逆に部下を利用され、仲間を大量に失うことになってしまった。

 一度ならず二度までも限にしてやられ、光宮は体を小刻みに震わす。

 沸き上がる感情は怒りのみではないだろう。

 そして、許容できるストレスがピークに達し、逆に冷静になっていった。


「御二方……」


「……はい」


「……何か?」


 限から目を離さず、光宮は谷田と橋本に話しかける。

 光宮の様子がおかしい。

 そのことを感じ取りつつ、谷田と橋本は光宮へと目を向けた。


“スッ!!”


「っ!? 光宮殿!?」


「まさか!?」


 光宮が懐からある物を取り出す。

 その行動を見て、2人は光宮が何をする気でいるのかを察して目を見開く。


「もしもの時にはよろしくお願いする」


「分かりました」


「その覚悟承った」


 自分がこれからやることは、確実に身を滅ぼす。

 それが分かっている上で行動することを、あらかじめ2人に伝えた。

 谷田と橋本も、そこまでの決意を持って限を倒すことを覚悟した光宮を評価し、後のことは自分たちが責任をもって請け負うことを約束した。






「んっ?」


 目に入る敵を好き勝手に手に掛けていた限は、異変を感じ取り視線を移す。

 すると、何者かがものすごい勢いでこちらへと向かって来ることに気が付いた。


「ヌウゥーーー!!」


「おいおい……」


 服装や刀を見れば光宮のようだが、肉体が肥大化しており、理性があるのか疑わしい挙動をしている。

 離れた所で眺めていた時とは、全く様子が一変しているため、限は戸惑いの言葉を上げた。


「ガアァーー!!」


「っ!?」


 変貌した光宮は、叫び声と共に高速接近して刀で斬りつけてきた。

 その移動速度の速さに驚きつつも反応した限は、刀で受けようとする。


「おっ!?」


 光宮の攻撃を受け止めた限は、戸惑いの声を上げる。

 というのも、光宮の攻撃を受け止めたと同時に、体が浮いたからだ。


「フヌーーーッ!!」


「……っと!」


 受け止められたこともお構いなしと言うかのように、光宮は刀を振り抜く。

 それにより、限は数mの距離宙を舞った。

 吹き飛ばされた限は、空中で体勢を整えて着地をする。


「あ~あ……」


 吹き飛ばされはしたが、限にダメージはない。

 しかし、受け止めた刀の方はそうはいかなかった。

 光宮の攻撃を受け止めただけで、刃がボロボロになってしまった。

 これではとても人を斬れる武器とは言えないため、限は残念そうに呟いた。


「まぁ、刀の替えはいくらでもあるけどな」


 使えなくなった刀を投げ捨て、魔法の指輪から刀を取り出す。

 限は、これまで倒した敷島の人間たちの持っていた刀を集め、魔法の指輪の中に入れたおいた。

 その中の一振りを適当に取り出したが、菱山家の誰かが使っていた刀のようだ。


「ガアァーーー!!」


「おっと!」


 新しい刀を手にした限に、光宮は再度襲い掛かる。

 肥大化したしたことで2m近い身長になっている光宮は、小さく見える刀を思いっきり振り下ろした。

 その攻撃を、限は横に跳び退くことで回避する。

 すると、光宮の振り下ろした刀は、そのまま地面を陥没させた。


「無茶苦茶だな……」


 確かに光宮の力と速度はとんでもない。

 しかし、力に任せた攻撃では単調過ぎて躱しやすい。

 そんな光宮の雑な戦闘法に、限は呆れるように呟いた。


「フウゥー……」


「んっ?」


 地面を陥没させた光宮は、動きを止める。

 そして、突然大きく息を吐きだした。


「これ…は、昂る気を…抑える…のがきつい…な……」


 光宮の荒々しい殺気が少しずつ治まる。

 そして、途切れ途切れながら言葉を話し始めた。


「何だ? 理性が戻ったか?」


 先程までの、言葉が通じない様子が消えた。

 それを見て、限は光宮の理性が戻ったことを感じ取った。


「魔…無し!!」


 理性を取り戻した光宮は、限を睨みつける。

 そして、限へ向けて刀を向けた。


「ハッ!!」


「ぐっ!!」


 構えを取って地面を蹴った光宮は、一気に限との距離を詰めて上段から振り下ろしてきた。

 先程までとは違い、速度と力に技術も加わった一撃が限に迫る。

 避けることは難しいと考えた限は、その攻撃を受け止める。


「チッ! またかよ!」


 刀で攻撃を受け止めた限は、またも光宮のパワーによって吹き飛ばされる。

 しかも、またも受け止めた刀の刃がボロボロになってしまった。

 空中で体勢を整えながら、限は舌打ちと共に刀を捨て、またも魔法の指輪から新しい刀を取り出す。


「ハッ!!」


「おわっ!!」


 限が着地した所に、光宮が迫る。

 そして、刀を横薙ぎに振ってきた。

 出したばかりの刀で受け止めた限は、またも吹き飛んで行った。


「しつけえんだよ!!」


「っ!!」


 着地をしては攻撃を防いで吹き飛ばされ、吹き飛ばされるたびに刀を入れ替えるを繰り返す。

 それが何度か続き、このままでは戦いにならないと判断した限は、反撃に出ることにした。

 多少着地をミスしても、自分なら大したダメージにはならない。

 その自信から、着地を無視して火球の魔法を放つ。

 迫り来る光宮は、限のその攻撃を見て急停止して横へと跳び退いた。


「やっと止まったか……」


 着地を無視して魔法を放ったことで、限は背中を地面に打ち付ける。

 そして、そのバウンドを利用するようにして立ち上がり、態勢を整える。

 人体実験を受け続けたことで、限は痛みに鈍くなっている。

 そのため、地面に少し打ち付けただけでは痛みなど感じない。

 しかし、服が汚れてしまったことが気になり、埃を落とすために軽く叩いた。


「ぐうぅ……」


「…………」


 限が埃を叩いていると、光宮は苦しむような声を漏らす。

 その様子を、限は見逃さなかった。


「なるほどね……」


 肥大化した肉体。

 それによる向上した力と速度。

 そして、苦しむ姿を見て、限は光宮が何をしたのか分かった。



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