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第129話 殲滅

「フゥ~……」


 三浦・山科・南川の3人を倒し、限は一息吐く。

 彼らは、曲りなりにでも敷島の中の一族を仕切る当主たち。

 そんな彼らが強化薬を使用したというのに、思っていた以上にあっさり倒せたため、限としては少し拍子抜けした気分だ。

 所詮、父の重蔵にとって彼らは捨て駒程度の存在でしかない。

 アデマス王国貴族の残党狩りなんて面倒事を任される程度の彼らに、自分を満足させるだけの実力を求めるのは間違いだったようだ。


「お疲れ様です。限様」


「あぁ……」


 一息吐いて刀に付いた血を振り落としたところで、限の背後にアルバに跨ったレラが姿を現す。

 すぐさまアルバから降りると、レラは片膝をついて労いの言葉をかけ、限はそれに小さく頷いた。


「……どうかなさいましたか?」


「奴らの実力に少々拍子抜けだっただけだ。だから気にするな」


「そうですか」


 返答した限の表情が優れない。

 そんな些細なことに気付いたレラは、その真意を問いかける。

 問いかけられた限は、先程思ったことを告げる。

 この世界では、生物を殺せば微妙ながらも身体能力が向上すると言われている。

 強力な生物であるほど、殺せばその向上率も変わってくる。

 生物という以上、動物や魔物だけでなく人間も同じ。

 強者である敷島の菱山・五十嵐一族を滅ぼした限が、さらに実力が向上したために起きたことだろう。

 その思いから、レラは限の言葉に納得して頷いた。


「お前もご苦労だったな。よくやってくれた」


「いえ、身を潜めてタイミングを見計らっていただけですから」


 砦内で、限のみが敷島の者たちを相手にしていたが、実はレラも密かに行動していた。

 限の変装術によって砦内に潜入したレラは、密かに砦内の数か所に魔法陣を設置していた。

 その中でも、治療室に設置した魔法陣は特別に魔力を込めておいた。

 そう、砦内に起きた突然の爆発は、レラによって引き起こされたものだったのだ。

 敷島の人間は、限以外の者が自分たちと同じ変装術を使用して潜入しているなんて考えてもいなかったのだろう。

 変装がバレた時のため、限はアルバとニールに縮小化してもらい、レラのポケットの中に潜ませていたとはいえ、レラはこの危険な策に成功した。

 後は、身を潜めて限が当主の3人と戦い始めた所で、魔法陣を起動するだけ。

 結果、敵を大量に負傷させることに成功した。

 成功したは良いが、一歩間違えれば敵に殺される可能性もあった策なだけに、限は返すように成功させたレラに労いの言葉をかけた。

 労いの言葉と共に限に褒められ、レラは嬉しそうに返答した。


「さて、残りの始末をする。援護してくれ」


「はい!」「ワウッ!」「キュッ!」


 当主3人を討ち、レラが設置した魔法陣によって多くの敵が負傷した。

 砦を完全に掌握するために、限は残っている敵を完全に討ち滅ぼすことをレラたちに告げて援護を求める。

 それを受け、レラ・アルバ・ニールは元気よく返事をした。


「そんな……」


「御屋形様たちが……」


 限との戦闘と突然の砦内爆発によって、多くの者が死傷した。

 しかも、当主たちまで殺された所を見た生き残りたちは、絶望に打ちひしがれた。


「気落ちしているなんてありがたいな……」


「「「「「っっっ!!」」」」」


 当主たちがやられ、仲間も死屍累々の状態。

 そのことに気を取られているのを幸いと、限は生き残っていた敵に襲い掛かった。


「ハッハッハ!!」


「ギャッ!!」「ガッ!!」「グエッ!!」


 高らかな笑いと共に、限は生き残った敵たちをズバズバと斬りつけていく。

 強化薬を使用して戦闘力が向上しているというのにもかかわらず、敵は為すすべなく限に斬られていった。


「ハッ!!」「ぐあっ!!」


「ガウッ!!」「グハッ!!」


「キュウ!!」「ギャッ!!」


 限が斬って動けなくした敵たちを、レラ・アルバ・ニールが魔法で仕留めていく。

 息の合った連携により、敵は次々と数を減らしていった。


「くそっ!!」


「無駄!」


「っっっ!!」


 このままでは全滅する。

 それを阻止しようと、敵の中には当然限に抵抗を試みる者もいる。

 しかし、当主3人を相手にしても苦も無く倒した7割本気の限からすると、薬で強化しただけの敷島兵なんて苦戦する訳もない。

 若干の煩わしさを感じる程度で、限は問題なく敵を屠っていった。


「くっ!」


 全滅を阻止するために抵抗する者もいれば、逃げ出そうとする者もいる。

 逃げるは恥なんてことは、敷島では教えていない。

 もちろん、将となる者の場合は負けるような戦いをする訳にはいかないが、勝てないと分かっているのに戦闘を続けるなんて、無駄に命を捨てるということだ。

 敷島は少数精鋭。

 その精鋭を育て上げるのには、時間も労力も必要になる。

 無駄に死ぬくらいなら、逃げ延びて次に生かすべきだ。

 その教えの通り、限に勝てないと判断して逃げようとする選択は間違いではない。


「逃がさん!」


「ぐあっ!!」


 限を相手に逃げられるのならばの話だ。

 当然限は逃がさない。

 半身でも背中を見せた者を、容赦なく斬りつける。

 ほとんどは即死。

 辛うじて生き残ったとしても、レラたちの魔法によって止めが刺される。


「こうなったら!!」



 まともに戦っても無理、逃げることも無理。

 ならば、自分の命を犠牲にして、少しでも多くの仲間を生かす。

 そのための自爆攻撃だ。

 限の実力から考えると、自分1人が自爆した所で仕留められるとは思っていない。

 それでも、足止めくらいはできるはず。

 そう思った兵の1人が、限へと掴みかかる。


「良い判断だ……」

 仲間のための自己犠牲。

 強者を相手にした時、そういった判断をしなければならない状況があり得る。

 敷島の人間ならそのことを理解している。

 理解しているからと言って、実行できるかどうかは別だ。

 自爆することに思い至って、すぐに実行に移したこの兵の心意気は好ましい。

 

「だが、させるかよ!」

 

 だからと言って、それをさせる訳はない。

 術者が死ねば魔法も発動しない。

 自分を巻き込んで自爆しようとする接近する兵を、爆発する前に首を刎ねて斬り殺した。


「そろそろか……」


 戦っても勝てず、逃がしもしない。

 自爆攻撃すら苦にしない。

 もう八方塞がりになった敵たちは、破れかぶれというように限へと攻めかかる。

 そんな彼らも斬り殺し、限は周囲を見渡す。

 探知に生存者の反応はないことを確認した限は、砦の外に意識を向ける。

 そして、外のアデマス王国軍の方も敵を殲滅し終えると分かると、レラたちと共に砦内から姿を消したのだった。



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