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第102話 対五十嵐家③

「ハッ!!」


「くっ!!」


 仲間が切り裂かれた瞬間。

 その瞬間は、いくら限でも隙ができる。

 五十嵐家の面々は、その僅かな一瞬を狙って攻撃する方法に切り替えたようだ。

 何とか超反応で躱そうとするが、攻撃を完全に躱しきれることは出来なく、限は僅かに斬られる。


「休ませるな!」


 遮蔽物がないため、僅かな距離を動き回ることで何とか敵の攻撃を躱し攻撃を繰り出す限。

 いくら限でも、休むことなく動き回れば当然スタミナも減る。

 スタミナを削り、このまま仕留めるつもりでいるのだろう。

 五十嵐家当主の光蔵は、部下たちに仲間を犠牲にした攻撃を続けることを命令した。


「……本当に菱山家のとは違うな」


 菱山家が潰されたことを知って、あらかじめ戦法を決めていたのだろう。

 本当に限にとっては嫌な戦い方をしてくるものだ。

 大将を殺して戦意を挫きたいところだが、あくまでも部下たちを使って限を殺せるつもりなのだろう。

 菱山家の時とは違い、確実に苦戦することを理解した限は、顔を顰めて思わず愚痴をこぼした。


「ガッ!!」「セイッ!!」


「くっ!」


 またも襲い掛かってきた敵を討つ瞬間に攻撃をされる。

 それにより、限は浅いながらも体の一部を斬られる。

 そうして、少しずつ怪我の数を増やしていった。






◆◆◆◆◆


「さっさと死になさいよ!」


“キンッ!!”


 限が苦戦している中、レラは奈美子と一騎打ちを繰り広げていた。

 もう何度目になるか分からない言い合いをしながら、奈美子が刀でレラへと斬りかかる。

 レラはその攻撃を薙刀で弾く。


「それはこちらの台詞よ!」


“キンッ!!”


 今度はレラの攻撃。

 武器の長さを利用し、奈美子の刀が届くギリギリ外から斬りかかる。

 奈美子はその攻撃を刀で弾いた。


「ガウッ!!」


「ガッ!!」


 レラと奈美子の戦闘地帯から少し離れた所で、白狼のアルバが女性部隊の者たちと戦っていた。

 刀で斬りかかってくる敵の攻撃を躱し、アルバは右前足で殴り飛ばした。

 飛んで行った敵は、倒れたまま動かない。

 気を失ったのか、もしくは命を落としたのかもしれない。


「このっ!!」


「グルァ!!」


「ごぼっ!!」


 やられた仲間の仇を討つかのように、敵が襲い掛かる。

 袈裟斬りを放とうと刀を振り上げたが、その刀が振り下ろされる前にアルバが攻める。

 カウンター気味に腹に頭突きを受けた敵は、骨の折れる鈍い音と共に血を吐きだし、またも飛んで行った。


「白狼風情が調子に乗るな!!」


「ッ!!」


 アルバの攻撃後の着地を狙うように、敵は斬りかかる。

 限がやられている戦法は、女性部隊の方にも指示されていたのかもしれない。

 限と同様にアルバも反応は速いが、躱しきれそうにない。


「キュッ!!」


“ガキンッ!!”


「なっ!?」


 アルバ単体なら、その攻撃で深手を負っていただろう。

 しかし、アルバの背には亀のニールが乗っている。

 そのニールが張った魔力障壁により、アルバへと迫る敵の攻撃は弾き返された。


「ガウッ!!」


「ギャッ!!」


 ニールによって攻撃を防がれ、今度は敵の方が隙を晒す。

 その隙を逃す訳もなく、アルバは尻尾を魔力で強化して敵へと振る。

 強化された尻尾はまるで鞭のようにしなり、強力な一撃を敵に与えた。


「その白狼は舐めたらだめよ! この亀も見た目に惑わされないで! 防御魔法の能力が強力よ!」


 ただの白狼なら、彼女たち敷島の人間ならならどうということはないが、明らかにあの白狼は普通じゃない、

 それに、あの白狼の背に乗る小さい亀が放つ魔力障壁はかなり強固だ。

 仲間がやられる声を聞き、レラと戦う奈美子はそちらへ僅かに視線をやると檄を送る。


「仲間の心配ができるなんて、随分余裕なのね?」


「まあね……」


 自分との戦いをしながら、仲間の気を使う。

 その行動を、レラは揶揄するように話しかける。

 それに対し答えを返すが、奈美子はとてもではないが余裕のある表情ではない。


「……勝てないわよ」


「何ですって?」


「アルバ様もニール様も限様の従魔。彼女たち程度の質と数では傷1つ付けられないわ」


 レラに言われた言葉に、奈美子は反応する。

 理解していないような反応に、レラはその意味を説明し始める。 


「攻撃のアルバ様、防御のニール様。あの方たちはまさに矛と盾よ。たとえ敷島の人間でも、生半可な相手では勝てる訳ないわ」


 次々と五十嵐家の女性兵を倒していくアルバ。

 そのアルバと自分に迫る攻撃を防ぐニール。

 敬愛する限の従魔である二体は、レラにとっては神の使徒とも言うべき存在。

 そんな彼らが、この程度の数で負けるはずがない。

 レラは全く気にすることなく、奈美子の動きを観察していた。


「それに、助けに行きたくてもいけないでしょ? この結界(・・)から出られないのだから……」


「くっ……」


 発言を受けて奈美子は歯噛みする。

 レラのいう結界とは、ニールが作り出した半径10m程度でドーム状の魔力結界のことだ。

 その結果内にいるのは、レラと美奈子だけだ。

 何故このような状況になっているかと言うと、戦闘を開始する時に、限の婚約者だったという美奈子と、何としても1対1で仕留めたいと、レラがニールに申し出た。

 レラの頼みに一瞬ためらったニールだったが、それらな邪魔が入らないようにと2人だけを閉じ込めた魔力結界を作り出したのだ。


「結界の外のことよりも、私との戦いに集中することね。でないと……」


「でないと何だって言うのよ?」


 結界の外を気にする美奈子に、レラは警告のようなものをする。

 美奈子が味方のことを気にするのは構わない。

 この手で仕留めたいがために、わざわざニールに頼んだのだから。

 当然勝つつもりだが、あっさり勝ちたいとは思っていない。

 勝つならば、美奈子を完全に屈服させて勝ちたい。

 そのためには、自分との戦いに集中してもらいたい。

 そのための警告だ。

 敵に塩を送るような警告に、美奈子は訝し気な表情と共に続きを問いかけた。


「あっさり死ぬわよ」


「っっっ!!」


 良い終わりと共に、レラは全身に纏った魔力の量を上げる。

 その魔力量を見て、美奈子は目を見開く。

 レラがこれまで本気でなかったと理解したからだ、


「本気ってわけね? なら……」


「っ!!」


 レラの纏う魔力を見て、美奈子も本気を出すことにしたようで、同じように全身の魔力量を増やした。


「私も本気で行くわ!」


「そう……」


 互角と言って良い程の魔力を纏い、レラと美奈子は武器を相手に向けて構えあった。


「「…………」」


 無言で睨み合う2人。


「「ハッ!!」」


 僅かの間を空け、2人は同時に地を蹴ったのだった。



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