友達と買い物………その裏では……… 【リメイク版】
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昨日鮎美と約束したのは俺の実家で18:00に待ち合わせ。
そう、携帯電話がまだ普及してない過去の待ち合わせは、場所と時間を決めてひたすら待つしかなかった。
今思えば信頼関係がなければ成立しない行動だ。
それと家電(家の固定電話)で女性に電話するのにも勇気が必要だ。
彼女やこれから誘うつもりの女性に初めて電話する時なんかその家の誰が最初に電話に出るのかわからない。
手に汗をかきながら震えながら電話したものだ。
最悪父親が出て「うちの娘とはどんな関係だ?」など聞かれる場合もある。
恐怖で運のなさを恨みたくなる。
今思えば廊下やリビングにある電話で話してた内容は親とかに全部聞かれていたかもしれない。
実家に着いたのは17:30だった。
ATMに寄ったせいで少し遅くなったけど、待ち合わせ時間には間に合いそうだ。
正直どの服に着替えればいいかもわからない。まだ部屋着とスーツしか着た事がない。
服がない訳じゃないんだけど…………誰のセンスで買ったのか、妙にフリルが付いているのが多い気がする。
過去のこちらの俺はフリル=可愛いとでも思っていたのだろうか?いったいどんな性格の設定になっているんだろう。これも神様の仕業だろうか?
家には入らないで玄関前で鮎美を待つ事にした。母さんも仕事でまだ帰っては来ていないみたいだし、今から着替える時間もない、このスーツのままで行くしかないな。
そんな事を思いながら周りの景色を見て気が付いた。
あっ、あそこの土地にまだ家建ってない!まだ田んぼだ。懐かしいな~。
そんな風に辺りを見てぼんやりしていたら、鮎美の車がうちの敷地に入って来た。
うちの家の前は田舎らしく結構な広さがあり車が5台はゆうに停めれる程ある。
「おまたせ~~~。」
小走りで近づいてくる鮎美は若かった。未来では二人の子持ちで太ってしまっていたのだが。
「お疲れ~。お……………………私も今帰って来た所。」【あぶなっ!さすがにおれって言うのはマズイな】
「ちょうどだね。…………それ、この前一緒に買いに行ったスーツよね?」
何?一緒に買いに行った?そうなの?
「あっ、え~とそう、そうだよ。」
「なんか変な優紀。…………まっいっか。そんでどこに買いに行く?私と同じにする?」
そう言ってカバンから携帯を出して見せてくれた。古っ!見た目新品なのに古くしか見えないガラケー。
厚みもあるし重そう。2つ折りのタイプか………俺も昔あんなの持ってたっけ?
「やっぱり珍しい?この前出たばかりの一番新しい機種だよ。」
「そ、そうなんだ、凄いね~。」
いろいろな意味で凄いわ。アンテナ付いてるし。
「何が凄いか分かってないでしょ?これね、メールが出来るんだよ。メールって文書でやりとり出来る事を言うんだけど知ってる?」
知ってるから!メールの説明された方が驚きだから!
「大丈夫ちゃんと知ってるよ。それで鮎美のは2つ折りの選んだんでしょ?」
「そう、そう。なんか可愛いから。でもやっぱり事前に調べておくとかさすが優紀だね。」
「う、うん。」
「それじゃいこっか。時間だし。」
「ん?時間って他にも用事あるの?」
「えっ………な、ないよ。今日はひ………優紀の為に全部空けてあるから、大丈夫。」
ひ?なんか慌てた感じだけどなんだろ?
そして行こうとして、別々に自分の車に向かってしまった。
「優紀!まだ車来て4日でしょ?私のに乗りなって。」
あっ、そうなるよな。でも俺的には初心者の車に乗るの方が怖いんですけど。
「………うん。」
ここは諦めよう。よく考えたら場所もわかんないし。
諦めて鮎美の車に乗った。さて出発かと思ったら
「あっ、ごめん。連絡する所あったんだ。ちょっと待ってて。」
と車から出て行った。家にでも連絡するのかな?
車の中から鮎美を見ていたけど、連絡内容が短いのかすぐに戻ってきた。
「よし、準備OK!さて、行くよ~」
そして携帯電話を買いに出発した。
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俺は金田。姫のファンクラブの会長だ。裏には本当の会長がいるけど。
その鮎美から連絡が来た。
鮎美はマネージャーの様な役割をしている。
俺はすぐに姫のホームページに姫が買い物で市内に出る事を掲示した。
姫には悪いが姫の姿を見たいファンの気持ちを叶える為だ。
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『これから姫、初リクルートスーツ姿で市内にて買い物』
携帯電話を購入予定(ついに!)と市内でお食事予定。
1、近くにいるファン会員はいつもの様に駐車場の確保を!
00(ダブルゼロ)の車は黒のレビン 〇〇-〇〇 を見掛けたら駐車場を空ける事。
2、見守りが基本行動。
ファン各自一定の距離を置き、ファンバッチを着用の上一般人には迷惑を掛けない事。
注意事項
前回の失敗を考慮し、姫にナンパしようとする男には女性ファンが対応。引き離し裏で男性ファンに引き渡す事。
前回は男性ファンにて対応した為喧嘩になりかけ姫を怖がらせた。連携して対処願います。
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鮎美とは毎日定期連絡をしている。
未だに姫にはファンクラブの存在はバレていない様だ。
小さなトラブルはたまにあるが何とかやっている。
思い返せばファンクラブを作ってから3年が過ぎて会員数も1000人を超えた。
増えた事はわかっていたつもりだったが、2ヵ月前の事件でどれ程に大変な事なのだと認識させられた。
鮎美からの定期連絡にて知らされた情報をいつもの様にホームページに報告したら、皆混乱してエライ事になった。
内容は某有名芸能プロダクションから姫がスカウトされたのだ。
この報告によりファンの意見は二つに別れた。
1、スカウトを受けて全国の姫へとなるべき。
2、地元の姫として身近にいて欲しい。
皆、姫本人の意思が1番大事なのはわかっていたのだが姫が有名になるかもと、はしゃいだ。
そこで意見をどちらかに纏め、00(ダブルゼロ)にそれとなく姫にファンクラブの希望を話して貰う案をホームページにて提案したら反対意見も無く簡単に決まった。
このままどちらかの意見に簡単に纏まると思っていたのだが、しかし俺の予想とはかけ離れた事態に発展した。
ファンクラブの会員達の意見はぶつかり合ったのだ。
全国へとの希望も半数、地元にいて欲しいとの希望も半数。
ホームページ内での意見の言い合いが続いた。
そこにまた問題が起きた。
ホームページ内での意見の言い合いはネットが出来る1部の人間___ファンクラブの3割り程だったのだ。
ホームページの存在を知っていてもパソコンを持っていない、また触る機会がないファンからしたら、勝手に何をしてるんだって話になり急遽初の集会をする事になった。
最終的に市内の体育館を密かに借り、初の召集集会を決行した。出席率は80%。
2割近くは残念ながら仕事などで出席出来なかったが、仲のいい会員に頼むと託した。
結果は………地元にいて欲しいとの意見が勝った。姫が地元の会社に就職が決まっている事がやはり決め手として強かった。
しかしあの集りは良い方向に効果をあげた。皆が集まった事で会場では「お前も?」「あなたも?」と知りあいがファンクラブに入っていた事がわかり纏まりがなかったファンクラブが纏まり始めた。
今はまだ1000人だが、今日も皆が協力していい見守りが出来そうだ。
さて俺も行くか。