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ありえない新人① 後編 【リメイク版】

11/29修正追加しました


「おはようございます。」


昨日は受付のある正面入り口から入ったけど、今日から裏口から入り2階にある営業課に向かった。


この会社は8時~17時までが定時だけど、7時から早番が出ている。

現場に合わせると仕方ないのだ。


昨日の夕方では対応出来なかった監督さん達が朝早く出て頑張っているからだ。

それに工事現場には夜間工事もある。


主要道路など車の往来が少ない夜間でしか作業出来ない。その現場の監督さんも朝の6時に現場が終わり、次の現場の為の準備の連絡が朝になる。


これから頑張る監督さんと頑張った監督さんで工事は進んでいるのだ。


俺はこの仕事が今では好きだ。


若い時は忙しいとしか思わなくて嫌で辞めようかとも思った時期があったが、新しい建物や道路が出来ると『あぁ~この店のここの資材は俺が注文したやつだ。』『あぁ~この道路作る時あの機械を入れたっけ。』とか思い出して直接作った訳じゃないけど、係わった現場の完成した様子を見ると達成感がある。


そんな会社にまた1から入るのも不思議な気持ちだ。ってよく考えたら仕事しなくてもお金が毎日振り込まれるから生きていけるんだよな。まっ、いいか。


今日の早番は山田所長と林さんだったみたいだ。

『新人は15分前には出社するべき』とは桜田さんから俺が以前入社した時に教わった。

俺もそう思う。

今回の入社ではまだ言われてないけどね。


それもあって俺が部屋に入ったのは定時15分前。


「おぉ、おはよう黒沢さん。昨日は初めてだったから疲れただろ?な~に1週間か、1ヵ月も来れば慣れるから無理しないで頑張れよ。」と山田所長。


「おはようございます山田所長。はい、早く慣れられるように頑張ります。」


ちょうど電話が一本終わった所だったので林さんにも挨拶した。

すぐに電話が鳴ったから朝の挨拶ぐらいしか出来なかったけど、手を挙げて返してくれた。


「おはようございます。」


その声に振り替えると桜田さんが出社してきた。

俺はすぐに桜田さんの近くに行き挨拶した。


「おはようございます桜田さん、今日もよろしくお願いします。」


「あぁ、おはよう。今日から新人研修を始めるからな、ちゃんと睡眠とったか?」


「はい、大丈夫です。」


そして予定では1ヶ月の研修が始まった。


とりあえずとにかくひたすら午前中は、うちで扱う機械や器機が載ったカタログを見て覚える。

午後からは1時間はうちでよく扱う機械や器機の説明。

そして16時からテストを30分間。最後に間違いの復習。


俺が新人教育を任された時は、物覚えのいい奴でも40点だった。

正直半日で2000種類ぐらいあるのを覚えれる訳がないのだ。分かってやらせて大変だぞと教えているのだ。


そして俺のテストの結果は………………勿論100点と言いたかったけど、流石に古すぎる機械があって忘れていた。それでも多分歴代1位だろう。92点だった。


桜田さんは⭕️をつけていくうちに「マジか………これも正解…………これも…………これも……………嘘だろ?」


「て、点数は92点だった。……………黒沢っ!お前何者だ?おかしいから!絶対におかしいから。」


見事にしてやったぜ!俺も逆の立場ならそう思うよ。


「そ、そんな何者って酷いですぅ。それにおかしいとか………………………………入社する会社の仕事を調べて勉強してきたのに……………………そんな風に言われるなんてあんまりですぅ。」


ちょっとわざとらしいかな?

流石にテストしている時にあまり高点数取るのはマズイかと思ったけど、いつまでも研修したくなかったしな。早めに次の段階に移って営業に廻りたいからな。


「し、調べた!お前調べたって言ったってこの数をか?それも覚えてきたのか?」


「はい。それに全部じゃないですけど、取説も覚えてきましたよ。新しい機械とか機器だけですけど。」


「あぁ?取説もだと……………………そう言えばお前!鈴木部長の電話対応したよな?」


「……………………ん~そう言えば昨日対応しました。鈴木様も喜んで頂けたみたいで良かったです。あの~何か問題ありましたか?ダメでしたか?」


おっ、とうとう桜田さんが頭を押さえ始めたぞ。そりゃ~昨日入ったばかりの新人がそんな対応したら俺でも頭が痛くなりそうだわ(笑)

気持ちがわかるから、ちょっとそっとしておいてあげよう。



しばらくして冷静さを取り戻した桜田さんは頭をまだ押さえ下を向きながら


「わかった。この段階はもう止める。明日からは顧客の名前を憶えて貰う……………………」


と言葉の途中で頭を上げて俺の方を伺う様に見た。


「ま、まさか顧客先も覚えてるとかないよな?それはさすがに調べられないよな?」


顔の筋肉ピクピクしてますよ桜田さん。


顧客先ですか?いえ。勿論知ってますよ!とは言えないよな。今まで部外者だったんだから。

知ってたら何処から情報漏洩してたかって問題になるわな。


「いえ、それは調べようがなかったですから。」


おっ、見るからにわかる安堵の表情。面白いです。


「疲れたから今日はもう帰っていいぞ。山田所長には研修内容の変更を報告しておく。」


は~~~い。疲れたのは桜田さんですよね?


「わかりました、お先に失礼します。」


本日の業務終了です。お疲れ様でした。


これから鮎美と携帯買いにとご飯だ。

車に乗り近くのATMに向かった。今日の朝に神通帳を見たら残高20万になってた。

今日も10万だけ下ろそうかな。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


優紀が帰った会社では………………………………


テストの回答用紙を囲む4人がいた。


桜田 「これ見てくださいよ。これはありえないでしょ?俺頭おかしくなりそうでしたよ!」

林  「カンニングは?これカタログ見ながらじゃないと無理だよな?」

鈴木 「ヤバッ俺これもこれもわかんない。」

山田 「これ?本当に黒沢さんが?」


桜田 「調べてきたんですって!」


山田・鈴木・林 「「「ありえないって!!!」」」


桜田 「その上………………………………取説も覚えてきたらしいです。」


山田・鈴木・林 「「「えーーーーーーーーー!!!」」」



桜田 「異例ですが1週間の予定だったカタログ講習を止めて、明日から顧客先情報の研修にしますけどいいですよね山田所長?」



口をポカンと開けたまま頷くしかない山田所長だった。



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