ワールドスタープロダクション本社⑩
さ~て何処に行こうな。
思いがけない半日の自由時間。天気も少し雲があるけど晴れと言ってもいいと思う。
それにしても東京に来てからあからさまの視線がやたらと気になる 。地元だと気にならないんだけど、やっぱり田舎者って感じが出ているのかな?
そんな視線を気にしながら鮎美ととりあえず駅に向かった。
中々行先が決まらないのだ。俺も鮎美も絶対行きたいと思う場所が無かったせいなのだけど…………
駅に向かう俺と鮎美。
すると駅前で声を掛けられた。誰だ?と振り返って見ると男2人組だった。
「ねぇねぇ、これからどこ行くの?俺ら暇してて良かったら一緒に遊ばない?」
おっ!これはいわゆるナンパか?初じゃ初!やっぱり都会だからか?
実は最初鏡を見て俺って結構美少女ってか美人だと思っていたんだけど、地元じゃ誰も俺にナンパしてきたりする奴がいなくて俺ってそんなでもないのかなってちょっと落ち込んでたんだよな。
どうする?
男二人を観察してみると、中々……いや結構なイケメンだ。女に困らなそうだな、なら本当に暇しているんだろうか?
視線もあからさまの下心がなさそうだ。まっ、これは元男の俺だからわかる感覚かもだけど。
しかし何だろう?仕事感がする。スカウト等かもしれないな。
と男達の事を考えていたら隣にいた鮎美が………
「遊びません!2人で楽しくしていますので、他の方を誘ってみてください。では」
強い口調で男達に言い返す鮎美の顔には怒りが………怖っ!
流石に男達もその口調と表情に一瞬固まったが諦めなかった。
「ま、まぁ、そう機嫌悪くしないでさ、ちょっと話するだけでもいいからさ。」
「そうそう、何処か行きたい所とかあったら俺ら案内するからさ。」
二人の男達を俺は感心していた。
ほぉ~なかなか頑張るな。俺なら声を掛けるだけでも『自分頑張りました!』と褒めている所なのだが、それをあの断れ方をしたのにまだ諦めないとは………同じ男としては尊敬に値する。
だけどそんな事は気にもしない鮎美は、さらに………
「いえ、少しも貴方達と会話する気も一緒に行動する気もありませんので!」
とりつく島も与えない鮎美と何としてもどうにかしたいと頑張る男2人…………いや最初に声を掛けてきた男との壮絶な言葉の攻防戦が始まった。
俺はというと何も話さず何もしないで様子を伺っていた。しかし…………疎外感が半端ないんですけど?
攻防戦が激しくなるとともに集まる視線。
俺は終止符を打つべくして動いた。
「あ、あのさ。1つ提案なんだけど、私達これから観光するつもりなんだけど、暇なら何処か案内してくれない?」
「「……………………」」
俺の言葉に固まる2人。
「ちょ、ちょっと優紀何を言ってるの?」
俺からの提案が信じられないと慌てる鮎美だが、考えがあるからちょっと落ち着こうね。俺は鮎美にしか聞こえない様に耳元で自分の考えを伝えた。
「まぁまぁ、鮎美ちょっと落ち着こうね。あのね、私達ってほら行先もまだ決まってないし、どうやって行くとかもよくわからないじゃない。だったらちょっと利用させて貰おうよ、ここにいる時間も勿体ないしさ。でもちょっと確認してからだけどね。」
俺は男2人に向い目を視ながら確認した。
「ちなみに確認だけど、勧誘とかスカウトとかじゃないですよね?それならハッキリ断りますけど?」
「い、いや俺らはそんな仕事じゃないから。」
「そうですか…………ちなみにどんな仕事してるんですか?」
「俺らは、も「おい!」」
何か言いかけた男をもう一人の男が止めるように声を掛けた。そして止めた男が今度は話始めた。
「…………俺達は普通のサラリーマンだよ。それよりさっきの提案だけど俺達は問題ないし、案内出来るけどどうする?」
最初に声を掛けてきた男と違い冷静な感じのもう1人の男が聞いてきた。
どうもこっちの男の人はダメならもう諦める様な感じだ。
「…………ならお願いします。」
と俺は素直にお願いした。
鮎美は不満そうに先程まで攻防戦をしていたもう一人の方を睨んでいたけどね。
そこから私達は軽く自己紹介をしながら駅の中に入っていった。最初に声を掛けてきた男の名前は高木直人、歳は23歳。そしてもう一人の方は松田順平、25歳。
先輩後輩の仲らしい。
私達は普通にOLだと説明した。うん。間違いじゃないよな。
何処に案内してくれるのかと移動しながら聞くとお台場に案内してくれるみたいだ。今ちょうど踊る何とかって刑事の物語がやっていてフジテレビの辺りが人気らしい。
あ~そういえば俺も面白くて見ていたわ。
鮎美も最初の怒りと不満が薄れたらしく今は少し警戒しながらも会話していた。
会話していて何を思ったのかお台場に着いて早々に…………
「ちょっといい?」
「ん?どうしたの?」
「あの2人に個人的に聞きたい事あるからちょっとだけここで待っててくれない?」
「えっ、うん。まぁいいけど。」
そう答えると鮎美は2人を引っ張って10mぐらい離れた所で何か話始めた。
何事かと心配しながらその様子を見ていた。
会話は5分程で終わって戻ってきたけど高木さんと松田さんは困った顔をしているのだけはわかった。
鮎美さんは何を言ったのだろう?
それからの鮎美さんの変わりようは凄かった。
さっきまでの警戒心が嘘の様になくなり仲良くし始めた。高木さんも松田さんも心なしか肩の力が抜けて最初に感じた仕事感がなくなり楽しそうに私達をいろいろと案内してくれた。
鮎美はどんな魔法を使ったのだろう…………
そんな感じで夕食まで一緒に食べて、普通にその後ワールドスタープロダクション本社に帰って来た。
下心を出して来て夜のお誘いでもされるかと俺は警戒していたけど、そんな事もなく無事に帰って来て何かあれ?って思う程何もなかった。
鮎美なんか松田さんと連絡先の交換までしていたけど後からでもこっそり会う気なのかな?
まっいっか。明日は今日行かなかった所の観光を少しして地元に帰るだけだしな。
俺は明日の事を思いながら意識が薄くなりいつの間に眠っていた。
ーーーーー熊谷 鮎美-----
全く優紀もいきなりあんな提案するとは思わなかったわよ。
まさかジェシカ社長の差し金だとはね。
あの時ピンっときたのよね。何の仕事かって聞いた時のあの不自然さ。
『俺らは、も』って言った時のあの後の言葉はモデルだったのよね。まだあの時はそこまで考えが至らなかったけど、移動中にいろいろと聞き出したらますます怪しくなってきてお台場に着いてから2人にジェシカ社長の名前を言って問いただしたら案外簡単に白状してくれた。
何でもハニートラップ的なテストで異性に対しての接し方を調査していたらしい。
まっ、アイドルとかモデルとか芸能人としての行動を視る為にやっていて会社的にも今後に係わるから理由としては気持ちわかるけどさ。
ちょっとやりすぎじゃない?
だからあたしは松田さんに報告はあたしからジェシカ社長にするからって言っておいた。少しぐらい文句もいいたいし、そう思って優紀が寝るのを待ってからジェシカ社長に電話する事にした。
ーーーーージェシカ社長ーーーーー
あら?こんな時間に鮎美ちゃんから電話…………もしかして。
「は~い、もしもし」
「………………………………!!!」
「え?あ~バレちゃったのね。……………………うん、そうね。ごめんなさいね、優紀ちゃんには必要ないって私も思ったんだけど……………………ん?優紀ちゃんは気が付いていない?そ、そうなの。………………………………えっと、わかったわ。出来るだけ男を近づけない様にすればいいのね。………………………………え?徹底的に?…………………………………………い、いやそれはちょっと無理よね?………………………………!そ、それは女優としては絶望的じゃないかしら…………………………………………そ、そうね。キスシーンとかは無い方針でしばらくは大丈夫だと思うわ。………………………………え?鮎美ちゃんがしてからならいいの?…………………………………………処女って優紀ちゃんの個人情報言っちゃダメでしょ。……………………………!…………!……………さすがにそれは可哀想じゃない?結婚とか優紀ちゃんがしたかったら止められないでしょ。………………………↓…………………そうね。優紀ちゃんが幸せになれるなら見守りましょう。………………………………えぇわかったわ。本当に今日はごめんなさいね、明日は気をつけて帰るのよ。………………………………」
ふぅ~鮎美ちゃんとの電話が終わって私はため息が自然にこぼれた。
鮎美ちゃんの優紀ちゃんへの愛が凄いのよ。2人一緒に住まわせて大丈夫かしら…………優紀ちゃんを百合に目覚めさせるのだけは辞めてほしいのだけど。
読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字ありましたらよろしくお願いします。
あと、すいません更新遅くなりました。
3月11日にいろいろ思い出してちょっと沈んでいました。あれから9年なんですよね。
辛い記憶は中々消えませが、毎日を平和に暮らる事に感謝して生きて行こうとも思う日です。
平和と言っても今はコロナさんが怖いですけど…………
医療関係の人はもっと怖い思いをしてると考えると頭があがりません。
一個人としては大した事は出来ませんが、早く世界的に終息する事を願っています。




