伝説のカラオケ大会 (中編)
衣裳?私はメイド服に着替えて待合い室に戻ってきた。
一緒に着替えを手伝ってくれた鮎美はまだやる事があるらしく「じゃ、またね。」と呼びに来た人と何処かに行った。さすが主催者だな、忙しそうだ。
残された私はステージが見える出場者用の入り口から覗いていた。歌い終わって楽しかったのか笑顔でステージから戻ってくる人やこれからステージに行く為に緊張した顔で順番を待つ人。
もう13人目が終わった。午前の部は16人目が終わったら休憩時間になる。
みないろいろ曲を歌ってるな~って思って聴いていて、ふと気がついた。あれ?私の歌う曲って何?
ちょうど近くに16番目の子がいたので聞いてみると、みな参加エントリーの申し込みをする時に第1希望、第2希望とホームページで記入したらしい。
いやいやホームページさえも見てないから、私。
それに第1、第2希望って何で?って思って16番目の子に聞くと、その子も疑問に思って電話がかかってきた時に聞いてみたそうで、何でも歌う曲が被らない様にだそうだ。へぇ~ちゃんと考えてるんだな。
被らない様にか………もう鮎美が決めちゃてるのか、それともこれから決めるのかわからない。
電話で聞いてみようと携帯を見ると鮎美からメールが二件きていた。どうもこの音量で通知音が聞こえなかったみたい。
内容を確認すると1件目が「お昼、スタッフ用の楽屋にお弁当があるから、そこで一緒に食べるから来て。」
2件目は「ごめん。かなり遅れそうだから先に食べてて。」
…………忙しそう。
「とりあえずスタッフ用の楽屋に行ってみますか。」
どこだ、どこだ?って探しながら参加者の待合い室の方に向かうと、隣の部屋だった。
誰かいるかな?って思いながら入ってみたけど誰もいなかった。部屋を見渡してみると中央に大きめなテーブルが3つ繋げて置いてあって、一つのテーブルに段ボールがいくつか載ってありその段ボールには大きな字で『弁当』『飲み物』と書いてあった。
箱の中を覗いてみると書いてある通りに弁当と飲み物がある………けどさ、一人淋しく食べるのもどうなの?と思っていると部屋にガヤガヤと5人の男性が顔の汗をタオルで拭きながら入ってきた。
私に気がつき一瞬固まったけど、すぐに私に5人が向かってきた。
「弁当5つと飲み物も5本頼む。」
え~と箱の側にいたからスタッフに間違われてるのかな?
とりあえず箱から弁当を5個出して
「はい、どうぞ。多分食べてもいいんだとおもいます。」
「ん?もしかしてスタッフじゃないのか?」
「はい。カラオケの参加者です。最後ですけど………」
「最後………もしかして黒沢優紀さん?」
「はい、そうです。すいません、友達が主催者なんで特別に【急遽】参加させて貰いました。」
「あぁ、特別に【主役として】最後に歌うって聞いてる。別に主催者が決めた事だ俺達は気にしない。それよりまだ何を歌うのか聞いてないんだが……………………聞いてもいいか?俺達も演奏するのに知っておきたいからな。」
「あっ!演奏の方々でしたか、すみません。気が付かないで……………………実は私も何を歌うのか決めてなくて、決めるにもどの曲が被らないかもわからなくて。」
それならばと演奏のリーダーぽい人が私に名簿を見せてくれた。
名簿を見れば知っていて歌いたいなって思う曲が沢山もう歌われてしまっていたり、これから歌う予定に入っていた。
ん~~~~もう未来の曲しか思いつかないんだけど………………………………ん?待てよ、演奏のプロならここでメロディを簡単に教えれば合わせてくれるんじゃないかな。
ちょっとダメ元でお願いしてみよう。
私が名簿を見て唸っている間に演奏の方々は急いで昼食を摂り始めた。
そういえば休憩時間が30分しかなかったんだった。その食べてる姿を見ていたら私もお腹が空いてきたので一緒のテーブルで食べさせて貰った。
弁当を食べながら軽く質問してみた。
「あの~ご飯食べながらでいいんですけど、アカペラでどんな曲を歌ったりしても演奏って合わせたり出来るものなんですか?」
あれ?軽く質問したつもりだったのに、5人がご飯を食べるのが止まった。
「………………………………あん?舐めてるのか?俺らプロとして演奏してるんだ、歌う奴のリズムさえまともならどんな曲にだって合わせるに決まってんだろ!それに余程のマイナーな曲じゃなかったら俺らはほとんど覚えてるから演奏できる。」
他の4人もうんうん頷いていた。あぁ、やっぱりプロは違うんだな。
でもな~未来の曲だから知らないと思うんだよな~
「プロの演奏の方って凄いんですね。私、歌いたい曲あるんですけど……………………多分誰も知らないと思うんですよ。何とか演奏して貰えませんかね?」
「…………知らないだと?何て曲だ?どんなメロディーだ?」
何か凄い興味を持たれてしまった。でも、まっいっか。
「こんな曲なんですけど、ちょっと歌いますね。」
そこで私はこの前のカラオケで歌いたくて歌えなかった女性ボーカルの有名な『ありがとう』って曲を歌ってみた。勿論軽くだけ。
「どうです?聴いた事あります?」
なぜか誰もすぐには何も答えてくれなかった。あれ?シンキング中?
「………………………………誰の曲だ?」
「え?え~と【誰作ったんだっけ?】」
「もしかして自作か?」
「いや自作って言うか…………そのまだ世に出てない曲なんですけど【なんて説明すればいいんだろ】」
「………………………………今の曲を歌いたいのか?」
「えぇ、まぁ出来れば……………………」
「………………………………わかった演奏する。」
おぉ、言ってみるもんだね。歌いたかったんだよね~
「なぁ、黒沢さん。もしかしてそのまだ世に出てない曲ってまだあるのか?」
「えぇ、それは勿論まだまだありますよ。」
ヒット曲ばかりなら結構知ってるし。
「…………ならもう一曲ぐらいちょっと歌って貰ってもいいか?」
ん?この人作曲にも興味あるのかな?
「え~といいですよ。じゃ次どんな曲にがいいですかね?」
「出来れば今の曲みたいなゆっくりな曲で頼む。」
ゆっくりか………………………………ゆっくりと言えば『ハナミズキ』かな?
そう思ってまた軽くだけ歌ってみた。
5人は目を閉じて指でリズムを取っていた。やっぱりヒット曲は違うね、初めて聴いてグッっとくるんだよね。
ちょうど歌い終わった時に部屋の扉が開いた。
「すいません。富田さん、そろそろ時間です。お願いします。」
あっ、もう時間なんだ。あっ、私のせいでご飯半分しか食べてないよ演奏の人達。
「すいません。折角の休憩時間を潰してしまって。」
「……………………いや気にしなくていい。それより最初の曲を歌いたいんだな?」
「はい。でもいいんですか?」
「あぁ逆に俺は演奏してみたい。お前達もいいか?」
「「「「はい!」」」」
うわっ何か凄いやる気なんですけど?いいの?そう思っていると演奏の方々が足早に楽屋を出て行った。
私はその勢いに負けてただただ見送るしか出来なかった。
まっいっか。
それから鮎美に電話を何回か掛けたけど話中だった。やっぱり主催者って忙しいんだろうな~
メールで「曲が決まって演奏の方々にお願いしました」と報告だけ送信しておいた。
後は私の番が来るのを待つだけだ。
他の参加者の歌を懐かしく聴いていた。そして市長さんの番になった…………ってオイオイB'zかよ!




