伝説のカラオケ大会 (裏方編)①
何とか準備時間2日しかない状況で音響設備を設置出来た。現地にいた手伝いが18人もいたお陰だ。ほぼ素人の様な彼等だったがやる気凄かった。
「ん。完璧。」
隣で腕を組んで見ていた男が
「何でや?こんなちっちゃな会場でそない本気でやるとか何かあるんか?」
「………勘。………………やらないと後悔する。」
「あぁ勘って、響の勘は怖いぐらい当たるからな~おれも一応3台カメラ準備したけどな。ほんまに最後の1人までカメラ1台でいいんか?」
「ん。………………梶、最後だけ3台。」
「最後って、カラオケのエントリーの名簿みしてもろうたけど黒沢優紀ちゅう聞いた事も無い名前の子やろ?」
「ん。」
「まっ、期待せぇへんよおれわ。いい絵が録れればそんでいいし。せやけど、こっちも照明少くてステージが暗い感じで嫌やわ。ほんま、ステージ前に禿げたオヤジでも列べたいわ。」
天気は未だに曇り空。
午後から晴れるとか予報があったけど、まだ雲は厚い感じだ。
開始予定時間の11:00
カラオケ大会は始まった。予想通りの素人と思われる人達が歌い始めた、今の所音の響きも良い感じだ。
一人辺り6分として10人で60分(1時間)全員で34人だから3時間半。
途中演奏グループの富田さん達の為に休憩時間として30分、終了時間は15:00の予定。
「はぁ~始まったか~やっぱり予想通りやな~富岡のおっさんも何で来たんやろ?」
「…………ん。……………………一昨日、………………………………ビジュアルだけの若造、……………………リズム感ダメ……………………ストレス。」
「あぁ~やっぱりか!おれもそう思ってたんよ。あれは売れへん!富岡のおっさんもいつものいかつい顔がもっといかつくなってからな~。ある意味ストレス発散にきたんかな?」
「…………ん。」
「おれは一回、その黒沢優紀ちゅうのを見に行ってみるけど響もどうや?」
ん。行ってみたいかも。
それから私と梶は他のメンバーに音響とカメラを任せて見に行った。
「なぁ~気が付いてるか?なんやここに居る客の大半が胸にバッチ付けてるの?」
ん?言われてみれば皆小さいけどバッチを付けている。そー言えばあれからジェシカ姉さんと電話で話した時ファンクラブ主催のカラオケ大会と言っていた気がする。梶は聞いてないのかな?
「ん。……………………梶……………………ジェシカ姉さん、電話?」
「あ?ジェシカ社長とか?あぁ~おれはあの人苦手なんよ、話し方も聞いててゾワッってする時あるしな。それとあの目……………………何やおれの力をわかってるみたいな、これも出来るやろって。手を抜けばすぐバレるって何か怖いわ。」
そう、ジェシカ姉さんは何か視えてるみたいに私達の力を理解してくれている。
隣で文句を言っている梶だって、この態度のせいで他の会社からクビになった所を拾って貰った。
私もこの人と話すのが苦手な部分で前の会社で上手く出来なかった。
「うちに来ない?」って誘われた時は本当に驚いた。今は音響関係で責任者を任せられているけど、前の会社では副責任者の助手のように扱われ無理難題をこなすので精一杯だった。
女性としての見た目も気にする暇もなくいつも同じ様なデニムのオーバーオール姿。髪だって仕事で邪魔になりショートにしたぐらいだった。
「響ちゃんは女性なんだからもっと可愛くしなきゃ。」と初出社の日は買い物に連れて行かれた。
嬉しかった。見た目男性なジェシカ姉さんだけど、姉に思えた。
そんなジェシカ姉さんが珍しくスケジュールに無かった仕事を頼んで来た。
私はすぐに何かある!って思った。
あぁ~やっぱりジェシカ姉さんは凄い!
カラオケ参加者の待合室に入ってすぐに私の目に……………………いえ耳に入って来た声はとても綺麗な音と色。
この声で……………………この綺麗な色で歌うのか……………………全身が身震いする。私は自分の身体を抱きしめる様に身震いを止めようとしていると隣の梶も何かを感じたのか固まっていた。
「…………………………………………なんやあれ……………………なんでみな普通に見れるんや……………………」
多分、梶も何かを視れる部類の人なんだと思う。私の音を色で視える能力は誰にも話した事は無い。
ジェシカ姉さんにも言っていない。
それから私と梶は無言のまま持ち場に戻ってきた。
彼女が歌う時間まであと2時間。
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長く感じた2時間も、もう少しでお終いだ。




