伝説のカラオケ大会 (前編)
カラオケ大会当日
今日も曇り空。
昼頃から晴れるみたいな予報だけど、どうなんだろ?
それより……………………はぁ、やっぱり出ないとマズいよな?…………もうエントリーしちゃってるし…………それにこんな事ぐらいでビビっていたら芸能界デビューしてもお金稼げないよな~。
はぁ、でもな~
もう今日だというのに中々気持ちの整理が付かなくて悩んでいた、違う生理は落ち着いたんだけど。
気持ちの整理がつかないから、カラオケ大会が始まる11:00ちょっと前に会場に着いた。
愛車はまだ遠い駅の駐車場に独りぼっち。しかたないのでバスで来た。鮎美は主催者という事で朝から会場に行っている。それで会場に着いて見て驚いた。…………何?この人の数!
本当にお祭りの様で出店も結構ある。
どんだけいるんだ?鮎美さんあんた何者なのさ。
ここにいるみんなが人には言えない恥ずかしい趣味の持主?こんだけいたら恥ずかしい趣味じゃないでしょ?
そう思いながら入り口に向かうと、周りがざわつき始めた。何?
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この時、優紀に気がついたファン達は焦っていた。
ファンクラブで唯一販売しているバッチを胸に付けているのを、誰もが必死に『姫』に見つからないように隠そうとしていた。
それはファンの中で一つだけ噂になっている事が原因だった。その噂の内容は、もし『姫』にファンクラブの事がバレた時。その原因になった人物は、ファンクラブから永久抹消。その上ダブルゼロに捕まり何か恐ろしい罰を受けると…………
実際はそんな決まりも罰もないのだが、過去に一度だけ『姫』にバレそうになった事があった。その時はある小太りの男が軽い気持ちで「応援してます。頑張ってください。」と握手を求めた。
その時は一緒にいた鮎美が誤魔化した。鮎美は次の日に男を呼び出し30分程説教したのだが、その夕方にその男は説教されたのが原因なのかそうではないのかわからないが、急性虫垂炎(盲腸)になり入院。2週間後に退院するも下の毛を剃った事を馬鹿にされると思い込み誰か聞かれても「ちょっといろいろあって」としかこたえなかった。
他のファンには、こう見えた。鮎美に呼び出され2週間行方不明。2週間後に現れた時には痩せてトラウマになっているかの様に「ちょっといろいろあって」しか言わない。どんな仕打ちを受けたんだ?と思われた。
それが噂で広まった。
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何?
みんな俺と顔を合わせたくないのか背中を向けて行く。
それと俺の進もうとする先にいる人がみな避けるように移動して行った。
目の前には一本の道が……………何?何かした俺?
避けられているようで、心が痛い。ちょっと泣きそう…………早く会場に入ろうと思って気が付いた。
あれ?そーいえば会場の何処に行けばいいんだっけ?昨日電話で鮎美からカラオケにエントリーした人の待機場所を聞いたけど、思い出せない。
そう思い立ち止まってみると俺の後に誰かいる様な気配がして振り返った。
そこには迫力のある男性が……………………誰?
なんか見覚えがある気がするけど………………………あっ!思い出した。
市長だ!そうか俺が避けられていたんじゃなくて、この迫力のある市長が後から歩いて来ていたからみんな避けてたのか。良かった~って市長さん何でいるの?
「ん?お嬢さんは会場に行かないのかな?わしは参加エントリーしとるから急いでいるんだが…………」
俺が急に立ち止まったせいで市長も止まっていた。
「あっ!すいません。私も参加エントリーしているんですけど、何処に行けばいいかわからなくて。」
「おぉ、そうなのか!では一緒に行ってはくれんか?わしも一人だと心細くてな。」
え~と市長と一緒に歩くのはちょっと、と思ったけど断るのもどうかと思い一緒に行く事にした。
「えぇ、はい。お願いします。」
それから2人で会場の参加者用の待合室に向かった、けどみんなの視線が痛い。それでも道が出来るので誰にもぶつからないで待合室まで行く事が出来た。
待合室に入ると、おぉ~自前なんだと思うけど衣装ぽいのを着た人や二人組で歌いに来て振付を合わせている人、多分歌詞が書いてある紙を見て小声で歌っている人など活気と熱気に溢れていた。
しばらくその状況に吞まれて動けないでいると、待合室の奥の方から鮎美が近づいてきた。
「もう!遅いって!もう始まってるんだからね。」
「ごめん、ごめん。ちょっと緊張しちゃって……………………でも凄い数の人だな。本当にみんな同じ趣味の人なの?」
「え?あぁ~え~と今回は普通の人も沢山参加してもいい企画だから……………………それより優紀、その恰好で出るの?」
「え?マズイかな?この服装じゃダメ?」
「え~とダメって事は無いんだけど、優紀は最後だからもっと歌手みたいな方がいいかなって…………ほら最後の人がぱっとしないとこう何て言うかテンション下がるみたいな、ちょっとそれだと私が困るんだよね。」
「あぁ~何とかく言いたい事わかる。でも何も持ってきてないよ?」
「やっぱりね!だと思ったから私が持って来てあるけど、見てみる?」
さすが鮎美!準備しているとか凄いな。
「あ、うん。ちょっと見てみようかな。」
そうして鮎美が準備してあると言う場所に移動した。そこにはこの前着たメイド服と……………………着物?それから……………………何これ?ドレス?持って見ると何か最近見た覚えのある女神様が着ていた様な服だった。
いやいやこれは無いでしょ?着物も着た事ないから無理!
となれば………………………………メイド服しかないか。まっ前回、1回着ているからそんな抵抗もないけど……………………仕方ない。これで行こう。
女神ぽい衣装を元に戻し俺はメイド服を手に更衣室に向かった。
もう大半の人が着替え終わったみたいで数人しかいない。そこで鮎美に手伝って貰いながら何とか着替えた。地味に本格的すぎてひもで腰の辺りを引っ張って貰ったりしないと着れないんだよなこの服。
メイド服に着替え待合室まで戻ると、待合室の壁には現在6人目と大きな紙に書かれていた。
そーいえば俺は何番目なんだろ?
「なぁ、鮎美さん。ぉ…………私は何番目何でしょうか?」
「あれ?言ってなかったっけ?優紀は最後で34番目、市長さんの次だよ。」
おっと軽く爆弾投げて来たよね?市長の次って何それ?おいしくないから!普通、最初にとか最後に市長さんとかじゃないの?
「優紀さんそれは違うよ!市長さんが最後より可愛い女の子の方がいいでしょ?」
「まぁ言われてみればそうかも……………………って何心読んでるの!声に出してないよね?」
「優紀の考えそうな事なんて私には手に取るより簡単よ。」
こ、こえ~鮎美怖いんですけど!
「誰が怖いですって?」
………………………………無心になれ!ぉ…………私。




