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ゴールデンウィーク ⑤




しばらくしてやっと家々が見え始めた頃に携帯が鳴った。鮎美からだ。

車を路肩に停めてから出ると


「もしもし」


「あっ!やっと繋がった。優紀今何処にいるの?昨日の夜からメールしても返信無いし、携帯も電波の届かない所って言うし、朝家に電話したら泊まりがけで出掛けたって今本当に何処にいるのよ?」


慌てた感じで捲し立てる様に聞いてくる鮎美。

そんなに心配しなくても………過保護のお母さんみたい。


「大丈夫心配すんなって、今から帰る所だから。夕方までには着くと思うからさ。」


「……………わかった。後で詳しく教えなさいよ。後絶対気をつけて帰ってくる事、いいわね?」


納得はしてなさそうな、渋々感で鮎美はわかってくれた。帰ったら何て説明しようかな?


「はい、はい、わかってるって!」


電話を切り、さて発進しようかと右足に力を入れた瞬間下腹の辺りから………グルギュルと凄い違和感が………ん?と思ったらズキン!


「痛ッ!イタタタタ」


お腹を壊した時の痛みと何か違う痛みがズキンズキンって……………腰まで響いて来てるような気がする程に痛い。

マジでちょっと涙目になった。もしかしてこれはアレか!月ものとか生理とか言われてるヤツか!


鮎美の忠告通りに先週までは替えの下着と2種類の生理用品も持って歩いていた。そろそろか?そろそろ?と先週はドキドキしていたけどいつまで経ってもそんな予兆らしい体の変化もなかった。

この身体になって1ヶ月過ぎて、もうこの身体は来ないものなんだなって思い始めていた。


まさかこんな所で来るとは……………それにこんな痛みが毎月?ありえない!どんだけ世の中の女性は痛みに強いんだ?


た、たしか鮎美があまりに痛かったら薬を飲むのも仕方ないって言ってたな。ただあまり薬に頼るのは良くないと……………だ、ダメだ。耐えれる自信がない。


俺は下腹の痛みと闘いながら何とか市内まで運転して薬局にヨタヨタと入って生理用の下着と生理用品、それに薬を買った。


飲む前に鮎美に電話した。


「も、もしもし」


「あっ!優紀何処まで来た?」


「あ、鮎美、アレが来た。」


「阿連?阿連って何処だっけ?」


「違う!痛っ!生理が来た!痛くて動けない、どうすればいい?」


「い、いつ?」


「さっきの電話の後、一時間前。」


そこから鮎美は的確に俺に対処方法を指示してくれた。

本当は横になってお腹を温めた方がいいらしいのけど、まず薬を飲んで痛みが和らいだら駅に向かい電車で帰る事となった。鮎美が一人でいるより早く帰って来た方がいいと言うので、愛車には可哀想だが駅に置いて行く事にした。ちゃんと後で迎えに来るからな!


愛車との別れに胸が痛む、いや実際におっぱいが痛い。俺はヨタヨタと切符を買い電車に乗った。薬の影響なのか眠くなり寝てしまったけど乗り過ごす事無く到着の1時間前には目が覚めた。

薬って凄いな。寝て起きたらあれ程の痛みが軽くなっていた。心も軽くなった気がした。


地元に電車が到着して降りて改札を抜けるとそこには心配そうな鮎美がいた。


「優紀!大丈夫?」


「あぁ思った以上に薬が効いて今は軽い痛みだけ。でもマジでビビったわ。あんなに痛いと思わなかったよ。」


「そんなに?何か最近ストレスとかあった?それとも何か激しい運動でもした?」


「……………………ストレスは無いかな、でも昨日登山したせいかな?」


「はぁ?登山?何?昨日登山しに行ったの?何で?」


「あぁ~え~とお婆ちゃんに会いに行く為?」


「何で疑問形?」


そこから鮎美の車に乗せて貰い実家に帰る間に嘘にならない様に遠回しに昔からいるお爺さんとお婆ちゃんに会いに行ったと説明した。うん!間違ってないよね?


あまりに質問されたので反撃とばかりに俺も質問した。


「っていうか忙しそうにしてたけど何やってんの?お、え~と私にも教えてよ。」


「え?え~と、ほ、ほら前にBBQしたじゃない?あれの2回目の集まりの企画の準備してたの。」


「へぇ~もう2回目やるんだ。そんで今回もBBQ?」


「…………え~と今回はちょっと違う企画で、え~とカラオケ大会みたいな。」


「ふ~ん。カラオケ大会か~何かいいな~私も出てみたいな~」


「……………………え?今何て?」


「ん?いやほらこの前歌ったじゃん!あの時凄い気持ち良かったからさ、ステージとかで歌ったらもっと気持ちいいのかな~って。でも大勢の前とか緊張するから無理かな?あっ、でも芸能界にデビューするなら慣れといた方がいいのかな。」


「優紀……………………歌ってみる?」


「え?お、私も参加出来るの?」


「え~と私が企画責任者だから優紀さえ良ければ参加出来るよ。」


「おぉ、なら参加してみようかな。んじゃ鮎美お願いしま~す♬。」


その時の俺は薬の影響なのか自分では気が付かない程テンションがあがっていた。

次の日に家で寝込んでいると鮎美からゴールデンウィーク最終日の5日目最後になるけど参加エントリーしたからと言われ「え?マジで?」と答えたのは仕方ないよな。





次の日(ゴールデンウィーク4日目)


薬が切れ痛みがまた襲ってきていた、鮎美の助言でお腹を温めたら幾分か軽くなったけどトイレに行くたびに自分の小股を見て吐きそうになったのは誰にも言っていない。

グロっ!何アレ?マジで俺の身体から出てきたの?それにオムツ付けているようで違和感ハンパないし!

身体もだるいしもう最悪!





そしてゴールデンウィーク5日目。


のちに伝説の始まりとまで言われるカラオケ大会が始まった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



鮎美視点




もう勝手に遠くに一人で行くとか信じられない!

その上あっちで生理になって動けないとかもう何やってんのよ!

こっちはどんだけ心配したと思って……………………

え?カラオケ大会に出たい?

嘘!マジで?え?何かテンション高めだけど、優紀本人が参加したいって言ってるからいいけど……………………あれ?いろいろ無理やりにでも参加させようとアレコレ考えていたけど……………………こんな簡単でいいの?


それにカラオケ大会前日の準備とかバレない様にどうしようって思ってたけど、生理で寝込んでいるからバレる心配も無く順調に進めたし……………………後は衣装だけど、どうやって着させようかしら。

案外この前のメイド服気に入っていたから、あの服をまた渡せば簡単に着てくれるかな?


私は合流した音響グループの響さんや撮影担当の梶さん、あと演奏グループの富田さんと前日遅くまで打ち合わせをした。


明日は絶対優紀の歌でみんなを私と同じ様に感動で泣かせてみせるんだから!



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