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入社式 (後編)


1階のフロアーでの騒ぎで1時間程遅れた立食パーティーが始まった。

正直居難い。偶然にも苗字が同じ黒沢がもう1人いたのだが、すぐに黒沢(女)の方だと広まってしまった。そしてそれは入社式で唯一の女性営業のあの美人だと知れ渡った。


今は同じ県から来た、同期10人に守られる様に端にいるけど視線が痛い。

10人に簡単にだが説明した。無理やり宣伝課に来いと言われたと……………………退職届の事は伏せておいた。

入社式に退職届を持って来ていたのは多分俺だけだと思うし。


「みんな、ごめん。何か巻き込んだみたいで…………」


「ううん。どう聞いてもその都丸部長ってのがおかしいよ。入社式当日に本人に自分の所に異動希望出せ!とか横暴過ぎ。」

「そうそう。」


ありがとう…………みんな、ありがとう。


「それでさ、後もうみんなでバックレない?」


ちょっとチャラい感じのえ~と遠藤君だっけ?がみんなに提案した。

みんなも乗り気で「もういいんじゃない?」「バレないかな?」とか言っていると会場がざわつき始めた。


「あ~聞こえるかな?………社長の矢神達郎です。本来なら来る予定では無かったんだけどね、どうしても君達に伝えたい事があって来ました。」


そう話始めたのは2代目の矢神達郎社長。

前の人生では、この2代目になって5年後くらいから革新的に会社が良くなった。

今だとまだ2年目ぐらいかな。まだ40代と若い。


「みなさん!本当にすいませんでした。」


え?矢神社長が新人達に向かって丁寧なお辞儀で謝った。俺もだがこれには会場にいる全員が驚いた。


「社長に就任してから2年、正直部下の教育も満足に出来ていません。先程見た様な威圧的な行動に出る馬鹿もまだいます。しかし私はあれを見て決めました。もう待っていられないと!」


あっ、馬鹿って言っちゃったよ。


「改革をします!それには君達の協力が欲しい、理不尽だと思う事や会社のおかしいと思う事を私に直接教えて欲しい。後で君達に私のメールアドレスを公開します、私と一緒に会社を変えて行きましょ。お願いします。」


これには新人より社長の周りにいたお偉いさん達が驚きざわつき始めた。

そりゃこの時代にそこまで実行しよとしたのは初かもな。未来ではツイッターとかあるから出来るけど……………………

今までは部下は上司がどんな不正やら威圧的な行動、命令をしてきても会社に報告しにくかった。いや出来なかった。どこかで絶対に隠ぺいされたり簡単に理由を捏造されてクビにされていた。


「後、黒沢優紀さん!事情は大体わかりました。本当にすいませんでした。」


そう言ってまた丁寧にちゃんと俺に向かって謝った。

うっ、名指しで……………………

でも、これでみんなの前で謝罪したって事は先程の件を会社が非を認めたとなり社長の思いが伝わると思う。


実際先程の騒ぎを見て「何だこの会社?大丈夫か?」とか「辞めようかな。」って声が聞こえたいたし。

でも今の社長の言葉で間違いなく空気が変わった。社長がこんな人なら大丈夫なんじゃないかと…………逆に自分の意見が社長に届く安心感さえ出来たみたいだ。


未来より3年早いけどこれでこの会社は良くなると思う。

こうして入社式当日は無事に…………………………………………終わらなかった。



会場では隙あらば俺に声を掛けようとギラついた男達に狙われ、立食パーティーが終わりホテルに向かう時も狙われ逃げた。逃げまくった。立ち止まってタクシーを捕まえて逃げる余裕もなかった。

一緒に逃げる10人。何か楽しかった。後ろは怖いけど…………


もうヤケクソで路肩の方で手を上げて走っていると、バスがバス停も無いのに停まった。

もしやと思い開いた入り口から運転手を見ればあの時の運転手!

顔を赤らめて笑顔で頷いてくれた。


「みんな!乗って!」


みんなで一目散に乗り込むと直ぐに入り口を閉め発進してくれた。何とか巻けたみたいだ。

やっぱり北海道のバスって停まってくれるんだな。


みな息を切らして「助かった~」と話ていると5分程走ってバスは停まった。

周りを見ると、どうも住宅地のようだ。不思議に思っていると運転手は入り口を開け指差した。

指差した先には同じ色のバスが一台、あれに乗れと言いたいのかな?

その時にやっと名前を見る事が出来た。俺は秋元 克高(あきもと かつたか)さんありがとう。とお礼を言い皆も「ありがとうございました。」とお礼を言って降りた。

良い人だな。


そして向かった先のバスはまるで俺達を待っていたかのように停まっていた。俺達が近づくと入り口を開けてくれた。

乗り込もうとして運転手を見た俺達は固まった。


え?さっきの運転手さん!どう見てもそこにはさっき乗せてくれたバスの運転手さんと同じ顔があった。

どうなっているのかと思っていると胸にある名札が読めた。

秋元 克広(あきもと かつひろ)

双子かよっ!


どっちが最初に乗せてくれた方かわからないが、俺達はまたバスに乗り自分達が泊まる予定のホテルの近くのバス停まで乗せて貰った。

頬を赤らめた笑顔の秋元さんにお礼を言って降りた。


北海道と言えばバス、と思う程印象深かった。


こうして入社式当日は終わった。

明日の午後からは長期の休みだ。ゆっくりしたいものだ。



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