伝説のスカウトマンの裏側
秋元 ジェシカ視点
店内に入って行く彼女を追いかけるあたし達。
雅史ちゃんは入り口で待ち合わせって言ってたのに中に入って行くんだもの焦っちゃたわよ。
雅史ちゃんの機転で電話して何とか追い付いたけど、本当に神秘的な子。大人の様な落着きと少女の様なあどけなさを残して………写真じゃわからないわね。
あらあたしの紹介を、ふんっ!………また間違えたわね。
本当に名刺の名前変えてあげようかしら………
さて彼女がどんな存在なのか確かめないとね。
とりあえず通路の真ん中で会話するのは、あたしが目立って嫌だから………
やっぱりお店に入っても他のお客の視線を感じた。
ふん!見たきゃ見なさい。あたしは女なのよ!
でもよく見れば目の前の彼女はあたしの事、普通の人の様に見ているわね。気持ち悪いとか思ってないのかしら………気になったあたしは聞いてみた。
な、何なのこの子。あたしを………あたしみたいな人達を理解してくれてる。やっぱりあたしと同じなの?その上将来あたしみたいな人種が意味なく嫌がられないでテレビで活躍するですって………まるで未来では当たり前みたいに自信ありげに………どう見ても同情や機嫌取りじゃないみたいだし………
あたしが動揺してる間に飲み物が来て雅史ちゃんが真面目に仕事を始めたけど…………見事に最初から断られているじゃない。はぁ、いままでどんなスカウトしてたのか後で詳しく聞かないとね。
もういいわ。ズバッとあたしが聞くわ。
「その事なんだけどね、黒沢さん。貴女に聞きたい事あるのいいかしら?」
「…………私で答えられるのであれば何でもいいですよ。」
何処まで素直に話してくれるかしら?
「貴女の目的は何?」
さっきの会話でわかったわ、普通の考えの持ち主じゃないわね。それに将来って自信持って言ったわよね?未来がわかるからその力を持ってるの?何をしたいの?
「目的ですか……………………恩返しです。」
……………………貴方……………………鶴なの?今時、恩返しって…………それに貴女の歳で恩を感じるって何歳なの?
まぁ、いいわ。
「……………………そう。その恩返しは出来そう?」
「えぇ~と今のままだと難しいです。」
……………………その姿だと難しいって事?やっぱり鶴の姿か何かにならないと無理なの?それとも機織り機?
「……………………そうなの?何か足りないの?」
「足りない……………………足りないと言うかどういう方法を取れば助けられるかわからないって所です。」
助ける?……………………鶴じゃなかったみたいね。確か鶴の恩返しは織物を織って作って渡して売らせてお金持ちにさせたお話だものね。……………………なら恩返しされる人はどんな人なの?それとも人達?
「………………………………助ける人は一人だけ?」
「いえ出来れば沢山の人も助けたいです。でもどうすればいいか……………………」
恩返しなのよね?どれだけ沢山の人から恩を売って貰ったのよ?それってどうやって助けたら恩を返した事になるの?
「………………………………なら結果的に沢山の人をどうすれば助けた事になるの?」
「それは………………………………その時にその場所から安全な場所に移動して貰うしか……………………」
はい!キター。その時って言ってる時点で未来を知ってますって事でしょ?それに自分の力で解決できないって事は神ではないわね。やはり使命の為にその力を神から授かった巫女?
「それは今の貴女ではその人達は移動してくれないの?誰かに頼むとか出来ないの?」
「それは……………………その人達は私の事を知らないし、信じて貰えないから。誰かにってそんな話を信用してくれる人なんていないし。」
恩を返す相手が自分の事を知らない?………………………………どういう事?……………………恩を受けたのなら会っているから知られてるはずだし………………………………未来を知っている……………………まだ会っていない?…………これから?…………未来から来た?…………運命を変える為に?……………………その為のその力…………神から?
あたしの中で何かが繋がった。神からの意思みたいな想いを感じた。
この子のあの力が無かったら到底信じられない事だけど、この子は使命を持ってる。
「………………………………そうなの?あたしは信じるわよ貴女の事。協力させてくれないかしら?」
「協力って……………………ジェシカさんは私を芸能界デビューさせようとしに来たんじゃないんですか?」
「えぇ、そのつもりで来たんだけど…………貴女を見てわかったの。芸能界にデビューするとかよりも大きな何かをしなければいけないのでしょ?」
「えぇ~と何処まで出来るかわからないですけどやれるなら出来る限り助けたいです。」
そうよね。神様から使命を受けているんですもの。そしてあたしに逢った、芸能界に詳しいあたしに……………………それって…………
「…………なら、何でも利用してでも恩返しを成功させないとダメなんじゃないの?その恩返しに名声やお金は必要ないの?」
彼女も気が付いてなかったのね。そして今、理解したのね。そして問題なのは…………
「その時までは後どのくらいの時間があるの?」
とうとう彼女は答えてくれなくなった、多分直接は言ってはダメなのかしら。神様も酷な使命を授けたものね。
「ジェシカさん!11年…………いえもっと助けて貰わないといけないかもですけど俺頑張ります。」
その時は11年後……………………それにやっぱり俺なのね。
「……………………そう、わかったわ。これからあたしの全部を掛けて協力するわ、頑張りましょう。」
あたしはあたし優しく手を差し伸べてくれた。
彼もその手を嬉しそうに握ってくれた。
最初に見た時からあたしはわかっていた彼女の中にはあたしと同じ様に反対の性別がいる事を。
なぜって、あたしの感性は色付きで見えるの。男なら青、女ならピンクって感じで。そして彼女は青。
まだ自分らしくは出来ないみたいだけど、演技も中々上手だし何よりスキャンダルの心配が無いわ。後、誰かを助けるって言っているって事なら、悪魔とかと契約したとかの力じゃないでしょ?
「あの~どうゆう事なんですか?優紀さんOKしてくれたって事なんですか?まだ、ぐふぅ!」
彼とこれから頑張るぞっていい気持ちの所に雅史ちゃんたら…………ふんっ!少し大人しくしてなさい。
苦しむ雅史ちゃんを放置して、今の会社をいつ頃辞めれるのか?とか、親御さんの許可は貰えるのか?とかいろいろ打ち合わせをした。
そして彼女(彼)が帰った後にあたしは雅史ちゃんの紹介で、ちょっと胸の大きな女性と会った。




