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信じる?未来のお話(後編)


一つ目の料理が届いたのを皮切りに次々と料理が届いた。

高そうな松茸もあった。


一つ二つ三つ…………おっ!4つ5つ6つ…………おぉ!7つ8つ9つ…………おぉぉ!10…………んん?


「お姉さんお姉さん?料理全部でどのくらいくるの?」


俺は慌てて10個目の料理を持ってきた店員に聞いた。


「はい。あと2つですね。そちらのお品書きにも書かれていますので、どうぞご覧になさってください。」


指差されたのはテーブルの上の端に寄せてあるお品書きだった。

あぁ、そこに見ないで寄せたの俺だわ。そっか、予算10万って言ったからか…………一人3万ちょっとだもんな。


流石にこの料理達の登場で暗い雰囲気だった二人も料理に目を奪われていた。


「さて…………食べますか!」


「いや食べますかって黒沢、この量を3人で食べるのか?完璧多いだろ!」


「嬢ちゃん、俺も歳でそんなに食べれんぞ?」


いやそんな事言ったって…………そうだ。


「じゃ~もう最初に食べれる分だけ寄せて後はお持ち帰り用にしましょう。」


それから店員にお持ち帰り用の入れ物を準備して貰い味見して入れ物に入れるみたいな変わった食事になった。これでいいんだろうか?


「そう言えばまだ話したい事あるんですよ。って言うか仕事の話なんですけど…………」


「おいおい、今度は仕事の話って、さっきの事だけでもこっちは驚きなんだけどさ。」


そりゃ~3年後『家建てろ!』ですもんね。


「すいません。まずは不幸な事を早く回避したくて、これからはいい話ですから。」


「いい話?嬢ちゃんもしかして儲け話か?」


おっ!勘がいいですね。鈴木社長。


「そうです。未来を知ってるって言ったでしょ?ならどんな仕事があったのかとか勿論覚えてますから。」


「黒沢よ、俺はまだ半分ぐらいしか信じてないからな。」


「まぁ、そう言うな桜田さんよ。俺も信じられんと思う気持ちがまだあるが、あまりにも具体的過ぎてな俺はあり得るかもって思っちまったんだ。聞くだけ聞いてみようや。」


無理もないか…………そりゃ信じられないよな。でも…………


「だから言ってるじゃないですか、信じる信じないはお任せしますって。ただ、俺はそうなった時、違う選択も出来る様に聞いて貰いたいだけなんです。」


桜田さんはまだ納得はしてないみたいだけど、とりあえず聞こうと言う鈴木社長に従った。


「それでこれからの仕事の話ですけど、まず近い大きな仕事となると駅裏に長いバイパス道路が出来ます。その後その道路の両側に大きなお店がいくつも建つ事になるんです。」


「おっ!それは噂のアレか?」


「ん?噂になってるんですか?」


噂になってたなんて初耳だ。まぁあの時はまだ新人研修中だったし後から結果しか聞いてなかったからな。


「あぁ、俺は信じてないんだがちょっと聞いた事がある。市内の駅周辺がもう発展する可能性が低いってんで、なら駅裏を開発するかって話をな。俺的にはそんな案件が県で通るとは思ってなかったんだが……………………通るのか?」


「はい。噂になってたんですね知りませんでした。」


「まぁ信じる奴は少ないからな。」


噂は噂だからな~結構この業界噂は多い。

何処かの社長とかが、あの辺り工事とかないかな~って営業マンに言った話が、次の営業マンの訪問先ではあの辺りに工事の話があるみたいですよって変わって伝わってしまったり、曖昧な情報が溢れている。


「それで噂を信じた岡村道路が大半の道路工事を取っちゃたんですね。今さらですけど納得しました。」


「なっ何!岡村道路だと?アイツの所だってうちの会社と同じ様な規模だ、そこに大半取られるって何があった?」


驚いている鈴木部長に詳しく教えた。


「それが10月にその工事が県から発注されるんですけど、工期が結構短くて短期間に出来る会社がって事で岡村道路が選ばれたんです。岡村道路は早くから噂を信じていたんでしょうね、9月に新車を3台も買ったんです。メーカーもちょうど新型を開発してて工場で作っていたのが3台あったらしいので注文してから1ヵ月で納品になったそうですよ。」


「くっ、うちのボロい2台じゃ無理か……………………」


まだ起きてない事なのに勘違いして悔しがってる鈴木部長。それだけ俺の話を信じてくれたのだろう。


「悔しがらないでください。まだ負けてないんですから!」


「おっ!そうだ!そうだったな、しかしどうすれば……………………」


「先に買っちゃいましょう!俺がメーカーに頼んでみますから。」


「おいおい黒沢。お前メーカーに知り合いでもいるのか?そう簡単に新人の話なんかで優先して新車とか回して貰えないぞ。」


わかってますよって、それに秘策もありますから。


「そりゃ勿論、桜田さんに紹介して貰いますよ。あの道路機械メーカーの笹本さんを。」


「はぁ?なんでお前笹本さんの事知ってるんだ?それにあの人は言っちゃ悪いがいい噂を聞かないぞ。」


「えぇ知ってますよ。その噂って実際あの人横領して、え~と今から4年後ぐらいに会社クビになって捕まりましたから、何でも会社には値引きの金額を不正に報告してお客さんに売る時の差額の一部を懐に入れてたとか。あの時えらい騒ぎになりましたよ、8年間で2億横領したって。」


「……………………マジか?」


「えぇ、だからその事を知ってますよってね、内緒にしますからこっちに安く売って下さいってお願いしましょう。」


「お、お前……………………」


「嬢ちゃん。さすがに俺も引くわ。」


「えぇー悪い事してるんですよ?クビになる前に少し頑張って貰いましょうよ。」


「こえーこの女こえーよ…………」


「いやだから元男ですって!」


「あーそれだけは信じらんわ。どこから見てもお前女だもんよ。未来の事は本当に具体的過ぎて引くぐらい信じるしかないけどよ。その元男だけは信じられないわ。」


「嬢ちゃん。悪いが俺もその元男ってのは信じてないわ。」


「えーーーーーなんでですか?」



鈴木部長・桜田【そりゃー見た目神秘的で美人なのに中身が元男とか言われてもな…………信じたくないって思うわな。】


何故かどんなに言っても二人は元男だと言う事だけは信じて貰えなかった。

なんでよ?


その後にも仕事の話を数件教えた。

ここに大学が出来るとか、高速道路が出来るとか。

勿論、鈴木部長だけの為の話だけじゃなく桜田さんにも得になる話も教えた。

家を将来ここに建てるのだけど、川が増水して床下浸水になるとか。




ーーーーーーー2時間後--------


「これで俺が知っている話はあらかた伝えられたと思いますけど、内緒ですよ?」


「あぁ勿論だ。」

「内緒って誰も信じてくれないわ!」


それもそっか。でも未来が変わると困るから注意だけしとかないと。


「後、それから南さんが帰って来るまではいつも通りでお願いしますね。」


「ん?なんでだ?嬢ちゃん。」


鈴木部長は娘の名前が急に出たので慌てて聞いてきた。

あぁ、大事な事だからちゃんと理解して貰わないと、と思い詳しく説明した。


「いいですか?今知った事で違う行動をすれば未来が変わるかもしれないからです。南さんには帰って来て欲しいですよね?なら、なって欲しい未来の為に違う事はして欲しくないんです。だから南さんが帰って来てから動きましょう。鈴木部長が新車を買う未来は岡村道路の代わりになる行為で済むのかとか、その先はどうなるかわかりません。未来をどこまで変えれるかわからないんです。」


「…………そうか。未来は変わるか……………………いい未来にしたいものだな。」


「はい。………………………………あっ!そう言えばお土産ありますけど要ります?」


「はぁ?何だよ急に…………お土産?」


「少しでも信じて貰える様にって思って準備してたんですけど先に出すの忘れてました。」


そう言って俺は座敷の隅に風呂敷で隠してあった焼酎と日本酒とイカの塩辛の高級詰め合わせを出して見せた。


「こ、これは…………俺の好きな焼酎の高いヤツじゃないか!」

「い、イカの塩辛と高級日本酒……………………」


「お二人が好きな物を準備して最初に渡せば簡単に信じて貰えるかな~って甘い考えしてました。二人ともこんなに信じてくれたのに舐めた真似してすいませんでした。これは返品しときますね。本当にすいませんでした。」


俺はまた風呂敷で隠そうとしたら……………………桜田さんに腕を掴まれた。うわっ怒られる?


「い、いや返品は…………せ、折角だから頂こうかな。」

「そ、そうだぞ。嬢ちゃん。折角だからな。」


怒らない?貰ってくれるの?

あぁ、二人とも俺の顔を立てて貰ってくれようとしてる。やっぱり良い人達だよな。





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