信じる?未来のお話(中編)
「おっ!来てたか、嬢ちゃん。」
最初に部屋に入って来たのは鈴木部長のち社長だった。
仕事の時の様な堅さがいくぶん無くなっている。その鈴木部長のち社長の直ぐ後ろから桜田さんの姿が見えた。
「よし、ちゃんと来てたな。」
何その言い方?
「お疲れ様です。何ですか?来ないと思ってたんですか?」
「いんや、来るってはわかってたよ会社にも出て来てたしな。ただ、これからやっといろいろと聞けるって思うと…………な。」
そんな会話をしながら桜田さんと鈴木部長のち社長は座った。
はぁ、そりゃそうかあれからずっと気にしてたもんな桜田さん。
「なんか言い方いやらしいんで、私も今度『恵』さんに会ったらいろいろ言っておきます。」
「なっ、何でだよ!ってかアイツにお前の事聞いたけど知らないって言ってたぞ。」
おっ!聞いたんだ(笑)でもな~わからないでしょうね、だって初めて会うのが今から大体1年後ぐらいだもんよ。
「……………………その事については後でちゃんと教えますから、とりあえず注文しましょう。」
案内で来てくれていた店員さんも待っていますし。
そして静かに待っていてくれた店員に俺は声を掛けた。
「注文いいですか?」
「はい、どうぞ。」
「え~とそうですね。とりあえず生3つで!」
「「「……………………?」」」
あれ?返事がない。何?この時間が止まった様な静寂…………
「ん?どうかしました?」
「黒沢お前な…………3つじゃないだろ?」
なんかやれやれみたいな顔で俺を見る桜田さん。もしかして…………
「あれ?桜田さん飲まないですか?」
「っておい!何で俺が飲まないんだよ!未成年者が普通に注文してんじゃねぇ~よ!」
「はぁ?何言ってるんですか?未成年者?誰が?」
桜田さんはおもむろに俺を指を差して。
「お前だよ!」
え?俺?何を……………………え?そこで俺は気が付いた。
「えぇーーーーーーーーーーーーーぇ!、嘘、マジで?え?……………………って事は何?あと二年は飲めないって事?」
そう言えば過去に戻ってから一滴も飲んでない!体が欲してないからか?
会社帰りにコンビニに寄ってもスイーツしか買ってないし!何コレ女になった影響?
え?俺主催者なんだけど?その俺が吞めないって酷くない?せめて……………………
「一杯だけとか……………………だめ?」
恐る恐る言って見たけど、一番の年長者の鈴木部長のち社長に…………
「いやいや、流石に嬢ちゃんダメだろ。」
俺はアレがなくなった時と同じぐらいショックを受けた。
ショックで固まっている俺を無視して桜田さんは俺の代わりに注文していた。それを俺は虚ろな目で眺めていた。
「え~とすいません。生2つにウーロン茶1つで!」
「…………は、はい。」
店員は俺の事を可哀想な子を見る様な目で見ながら座敷を出て行った。
チッックショウーーーー
頼んだお酒が届くとそれまでの微妙な空気を変える様に鈴木部長のち社長が話を切り出した。
「さてと、嬢ちゃん。早速娘の事を教えてくれんか?」
やっぱり気になっていたんだろうな。娘さんが家を飛び出してから確か2年ぐらいなる頃だもんな。
「わかりました。でも信じるか信じないかはお任せしますよ?今から私が言う事は時間が経たないと証明できないんですから。」
「…………どういう事だ?嬢ちゃん。」
「そうだ。黒沢お前の言い方何か変だぞ?」
そりゃ~そうですよね。今から俺が言う事は普通は頭の可笑しな奴としか聞こえないですから。
「遠回しに言うのも嫌なんで言いますけど、私……………………いや俺は二人の未来の事を知っています。」
「お、お前な「まぁ、まぁ、最後まで聞いてから反論してください。いいですね?」」
俺は二人の顔を真剣に見ながら話始めた。
「まず今から話す内容を教えて貰ったのは、未来の鈴木社長からです。これから3年後ぐらいに今の社長の『石井 誠』社長が脳梗塞で倒れます。でも家で倒れた事もありすぐに病院へ搬送され命には別状無かったそうです。…………ですがリハビリが必要な状態になり息子さんの『誠二』さんに社長の話が浮上しました。でもまだ仕事を始めてから5年程の息子さんに社長を継がせるのは不安があったそうです。そこで石井社長は息子の誠二さんが社長を継げるぐらいになるまで鈴木部長に社長をお願いします。石井社長にお願いされた鈴木部長は渋々承諾して4年社長を見事にこなして定年退職します。」
俺はここで一旦休憩する様に話すのを止めた。内容が理解出来たのか二人の顔を見て確認すると、馬鹿にする様子は無かった。
少し意外だけど俺はまた話始めた。
「鈴木社長は定年まぢかな時に俺に教えてくれました。娘さんの『南』さんの事を……………………内容は、娘の南さんがどこの馬の骨ともわからない男を追いかけて家を出て行ったそうです。後でわかったらしいのですが、なんでも神奈川で2年間男を支える為に一生懸命に仕事をして支えていたらしいです、ですがその男は南さんを裏切り別の女を作って出て行ったそうです。その時にはもう南さんのお腹には子供が出来ていました。南さんはおろす決意も出来ずおろすとしてもお金がない状態で、途方にくれてすがる気持ちで実家にゴールデンウイークの最終日に帰って来たそうです。」
ここでまた俺は話すのを止めた。ここまでの話をちゃんと聞いてくれて理解してくれたなら気付くはずだ。
そう思い鈴木社長を見た。
「…………い、今の話が本当なら……………………みなみ、南は来月には帰ってくるのか?」
「…………はい。」
真面目に聞いていてくれた。良かった。でも…………
「でも、ここからが問題なんです。」
「なっ!何が問題なんだ?嬢ちゃん教えてくれ!」
「それは、今この話を聞いてなかったら『南』さんが帰って来た時どんな態度でどんな対応したと思います?」
「……………………そ、それは……………………」
「実際、未来では南さんの話を一切聞かないで玄関で叱り追い出しました。『この親不孝者が!』って……………………その後南さんは家の近くの古いアパートに住み。身籠った身体で何とか仕事をして子供を産んだそうですが、しかし産後に体調を崩してそのまま病院で亡くなったそうです。亡くなる直前に南さんは鈴木社長の奥さん…………南さんのお母さんに宛てて手紙を書きました。家を飛び出してからの事、後悔している事そしてもしもの時は娘をお願いしますと書いてあったそうです。その話を泣きながら俺に話してくれましたよ鈴木社長は…………あの時せめて話だけでも聞いていればと…………孫の『愛』の母親を殺したのは俺だって……………………」
まだ起きてない未来の話だけど、鈴木社長は目を瞑って考えている様子だ。
桜田さんも暗い表情をしていた。
信じてくれたのかな?
「…………黒沢、お前どうして知っているんだ?その…………未来の事を。」
そうなるよね。俺でもそう思うもの。
「簡単ですよ。未来から戻ってきたんですから俺。無理に信じて貰おうとは思いませんが未来では俺は男で桜田さんの部下として38歳になるまで一緒に仕事していました。だから桜田さんが『恵』さんのお父さんから3年間同棲出来たら結婚していいって言われている事も3年後にまたお父さんに追加の条件を出されて家を建てたら結婚していいって言われる事も知っていますよ。」
おっ!何かショックだったかな?
項垂れたぞ(笑)
「……………………嘘、マジか…………3年後に家って……………………いやそんな…………でも言いそうだし…………」
あっ!料理が来た。
え?何この暗い雰囲気みたいな顔の店員。
あぁ、すいません。
そんな店員の表情にせめて俺だけはと思い笑顔で料理を受け取った。




