指導の賜物です。
緊急会議から一週間後……………………
女って…………女って…………なんなんだーーーーーーー!!!
あれから会社が終わってから毎日鮎美に指導されてる。
やれ、寝る前にスキンケアだの。外に出る時には紫外線対策だの。ビタミンがどうとか…………………昨日なんてとうとう一緒に風呂に入ってまでいろいろ指導された。
髪の洗い方やトリートメントの仕方とか……………………
入る前は、一緒に風呂?とか思って「おぉぉ」って少し喜んでみた自分がアホだった。
鮎美の裸を見てどうなったと思う?
下半身に血が集まる?
全くなんもなかった。
最初の数分でテンションは下がる一方だった。反応するはずのあの子がいないんだもの。
38年間一緒に育ったあの子はもういない……………………
何て言えばわかるかな?こう、体の奥から来る熱って言うかどうしようもないあの感じがない。
賢者モードがずっとみたいな…………それよりも酷いみたいな。
男の性欲と女の性欲って全く別物なんだってそう思ったわ。
女に性欲がなくなった俺は女に触ろうとする気持ちまで亡くなった。さようなら俺!
そして酷な指導のおかげで俺は意識していれば女性だとちゃんと思われる程には仕草など出来る様になった。
まっ指導をされてわかった事は、女ってかなり計算高いって事だ。
いつどんな風にどこを男が見てるかってわかってて行動してるんだぜ。ラーメンとか食べる時わざと片手で髪を寄せて斜めに顔をして食べたりとか……………………本当に邪魔なら後ろに結べばどんだけ食べやすいかよくわかった。
女性らしく見せる事=大袈裟に魅せる事
あと簡単だけど化粧も習った。
習って思ったのは、特殊技術だって事だ。誤魔化しは当たり前、目の錯覚を利用する?
科学技術かよ?
そしてその技術の要の材料が高い!めっちゃ高い!普通の男が美容に使う金額の10倍は簡単に飛ぶ。いや飛ぶってより水に流れる。あれだけ高い材料が泡で簡単に排水溝に流れて行く。
下水道が汚れる原因の何%かは多分、化粧だ!
兎に角、世界の男達よ。女って凄いぞ!騙されてるからな普通に!
あと言葉使いも指導を受けた。
かなりいろいろ言われたけど、簡単に言えば語尾に「わ」と「よ」と「ね」と「の」を付ければ大抵女性っぽく聞こえるってわかったわ。
例えば「そうだ。」これを→「そうね」→「そうよ」→「そうなの」→「そう思うわ。」
男)そう言えば話はかわるが、仕事の方で進捗があった。明日から営業の外回りの研修になった。
女)そう言えば話はかわるけど、仕事の方で進捗があったわ。明日から営業の外回りの研修になったの。
見事だろ?
さて、独り言はこのぐらいで終わりにして、そろそろ鮎美が来る。今日も指導を受けますかね。
今日は何を教わるのか…………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃優紀の会社では、これからどうするか話し合いが行われていた。
「明日から本当に外回りの研修をするのか?」
「そう言いますけどね山田所長。逆にあと会社の中で何を教えればいいんですか?」
「いや…………しかし、早すぎじゃないか?普通は3ヵ月ぐらいでやっと連れて行けるもんだが…………」
「普通はでしょ?正直俺はもう黒沢を普通だとは思ってませんから。あれは新人と言う皮を被った化け物です。いや逆にベテランが新人の皮を被っていると言ってもいいと思ってます。」
「そ、そんなに……………………」
「わかりますか?どれだけ俺の心がへし折られたか……………………『俺この仕事何年目だっけ?』って布団の中でマジ泣きましたから!」
「辞めないよね?桜田君。」
「辞めようかとほら、辞表さえ書きましたよ。でも何か負けたみたいで悔しいじゃないですか?俺が辞める時はアイツに勝ってからです。」
「いやいや、辞めるの前提は困るから。」
「見ててください。絶対勝って辞めてみせますから。」
「辞めちゃダメだって!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃優紀の本社で……………………
「この子、凄く美人じゃないか?」
「そうですよね。例の企画に彼女を使ってみるのはどうでしょう?」
「だが、どう本人を説得するんだ?」
「説得などいりませんよ。な~にまだ社会に出たばかりのヒヨッコです。なんとでもなるでしょう。」
「そうか。これが上手くいけば……………………」
「えぇ、間違いなく役員になる事も…………」
「……………………だが、まだ時期ではないな。準備の方は任せるぞ。……………………そうだな……………………1年後の夏がいいだろう。」
「はっ!わかりました。」
「くれぐれも内密にな。」




