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異世界極道  作者: 味噌田楽
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第七話  自由

一応、2人づつバラけて、獣人組のアジトに帰る。俺はニーヤと共に歩き、道すがらこの後の計画を詰める。

この後とは『ニーヤの首輪を外し、ゾンダ殺す』事だ。

首輪に入れたカネは、奴隷の主人が設定した場所に転移されるのだが、恐らくゾンダはそれを己の財布に設定している筈。金貨は結構な重量があるので、いきなり大量のカネが財布に入ったら、奴は不審に思い警戒するだろう。

だから、ここはニーヤだけ首輪を外す。そしてゾンダを殺した後に財布を奪い、首輪を外すと共にカネも回収するって訳だ。

「なる程、しかし…奴が転移先を財布に設定していなかったら如何する?」

「いや、それは無い。今の奴がヤサにしている部屋は、只の木賃宿だ。金目の物は必ず身に着けているだろう。」

そう、家を持たない奴にしてみれば、部屋に金を置きっぱなしにしておくのは不安で仕方が無いはず。しかも奴は金遣いが荒いしな。財布に幾らも入ってないだろう。

問題は何処で殺すかだが…一番良いのはヤツの部屋だが、死体の始末が面倒だ。外で狙うのは飲み屋に向かう道しか無い。獣人組を見張りに立てて、一気に殺すか?

「あれ?そう言えばアンダの死体は如何した?」

「ああ、まだアジトの麻袋の中だぜ。」

そうか…始末するなら、2人分一緒の方が世話が無いな。ならば、外で狙ってそのまま麻袋に入れて、一端アジトに運ぶか。その後は、宿屋の肥溜めに石を抱かせて落とそう。

そうと決まれば早い所アジトに戻り、夜まで仮眠をとろう。少し休まんと体がもたん。


アジトに戻ると獣人組の連中が、カネを並べて浮かれていた。「これで旨いものでも喰おう!!!」とか「先ずは全員の首輪を外そう!!」とか騒いでる。いやいや、まだ作戦は終わった訳じゃないからね。

「おいっ皆!!浮かれるのはまだ早いぜ!!この後まだ一仕事あるんだからな!!」

ニーヤが皆の気を引き締めにかかる。そうそう、それに、作戦通りにしてくれりゃ、全員の首輪は外せんだから、ここは俺に従ってくれ。

「だったらせめて、昼メシは良いもん食わねぇか!?ゼニはあるんだし!」

皆がワイワイ言い出した。いやだから、全部作戦済んでからにしてくれよ…

「アサカ、こりゃダメだ。コイツら浮かれ上がっちまってる。これを抑えるには、、美味いモンでも食わせるしか無ぇぜ。」

むぅ、ニーヤが言ってもダメか。仕方ない。どうせゾンダが部屋を出るのは夕方だしな。それまでに済ませてくれれば良いか。

しかし、宝箱にあったのは1万ゾルの大金貨が500枚と宝石だ。大金貨なんざ、俺たちのような奴隷の持ち物じゃ無ぇ。こんなん使ってるのを見られたら、後々面倒なことになりそうだ。かと言って、何処かに両替頼もうったって怪しまれるのは同じ事だしな…

そうニーヤに説明すると、ニーヤは「…仕方ねぇ、ここは俺たちがカネをだすぜ。」と言って、部屋の奥から小さな箱を出してきた。

「これは俺たちのヘソクリだが、まぁ良いだろ。今となっては木っ端みてぇなもんだ。」

え?何?お前ら貯金していたの?よくそんな余裕があったな。

「俺たち獣人は寿命が短いからな。何とかして奴隷から解放されたかったのさ。」

それは分かる。分かるが…かっぱらいの金をコツコツ貯めたって、そんなん奴隷解放するには一人分だって大変だろう。…こいつ等も、一人分貯まったらゾンダを殺る気だったのかもな。

獣人組から2人、こっちからはクンタが大通りの屋台へ行き、普段は買えない肉串やパンなんかを買い込んできた。あんま食い過ぎんなよ。この後まだ一仕事あんだかんな!!



夕方、ゾンダの定宿から酒場への道で、一番人通りが少ない場所を選び、獣人組を配置する。俺は通りの中ほどに待機し、ニーヤは通りに面する宿屋の二階のベランダに潜んでいる。

ゾンダがここを通ったら、すかさず飛び降り、その首をぶち折る手筈だ。

「俺らは奴に散々辛酸舐めさせられたんだから、そんなさっくり殺すんじゃ無く、じっくり苦しめてやりたいんだが。」

と、ニーヤは言ったが、気持は分かるがそんな暇無いって。それに、中年のおっさんいたぶったって面白か無ぇっての。

それでもブツブツ言うニーヤを宥め、全員の配置を完了させる。後はゾンダが出てくるのを待つだけだ。

「来たぞっ!!」

見張りの獣人から合図が走る。いよいよ決行だ。俺は奴の方からは見えないように軽く手を上げ、上にいるニーヤに合図を送る。


「なっ!!!ブッ!!!」


ゾンダの最後は、悲鳴にもならない声だった。

薄暗い路地で、上から飛びつかれ、一瞬で首に全体重を掛けられ後方に押し倒される。頸椎骨折で一瞬にして死亡だ。

「よし!作戦通りだ!」

最初はニーヤの爪で首を切る手筈だったが、それだと路地に大量の血痕を残す事となり、後で騒ぎになるかもしれないので、ここは首をへし折る方法で行く事にしたのだ。

まぁ、俺がやれば簡単だったんだが、ここは一応、ニーヤに手を汚してもらう。と、言うか、奴の方から自分にヤラして欲しいと言ってきたんだが。ゾンダのヤツ、憎まれてたんだなぁ…

正直、俺はゾンダに対してはそんなに恨みはない。つーか、【アサカ】の記憶は俺にとって体感を伴うものでは無いので、自分の記憶と言うより、昔見たドラマみたいな感じだ。なんで、奴が恨みを晴らしたいって言うんなら是非とも晴らしてほしい。

「さっさとズラかるぞ!ゾンダの死体は獣人組でアジトに運んでくれ!!」

辺りは真っ暗で何か痕跡を残してないかの確認ができないのが痛いが、ここはもうグズグズしないで逃げるのが上策だろう。

やはり、刑事ドラマの犯人みたいに、全部が全部手際よくは行かねぇか。まぁ、街の警護兵もゴロツキ一匹死んだところで、そんなしつこく調べないだろ。

「よしっ!!これで自由だ!!」

そうだな。取り敢えずはこれで全員の首輪は外せ、俺たちは自由の身だ。こっちの被害はゼロだったし、まぁ完全勝利と言えるだろう。これもニーヤが俺の指示に素直に従ってくれたからだ。

「ありがとうな、ニーヤ」

「そりゃこっちのセリフだぜ!ありがとう、アサカ。」

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