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異世界極道  作者: 味噌田楽
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第五話  作戦と殺人

「まぁ話だけは聞いてやろう。今日はもう用事もないしな。」

ニーヤは少しあごをしゃくり、俺たちに自分の前に座るよう促す。俺もみんなに目配せして、ニックとクンタを後ろに、俺の横にはアンダを座らせる。

「話をする前に、宿屋の下男連中を外してくれないか?」

「…いいだろう。ガズ、お前が連れていけ。」

先ほど扉の前で俺たちに絡んできた猫男が、奥のベッドで寝ていた3人の人間を起こし外へと連れていく。あいつがガズか。

「…これで良いだろう。さぁ話せ。」

ニーヤの目に強い光が宿る。…昨日一日考え抜き、検証した計画を今からニーヤに打ち明けるのだ。もう後には引けない。勝負はここから始まっている。


「俺の考えた計画と言うのは、娼館へ向かう客を、俺たちで襲う作戦だ。」

「帰りの客を襲っても金を使い果たしてたら意味がねぇからな。」

俺はニーヤの目を見て、はっきりとそう伝える。

「…けっ!やっぱり時間の無駄だったか。」

途端にニーヤが鼻白らむ。

「娼館へ客が出向くのは、大体が夕方辺りからだ。そんな時間じゃ人目が多すぎる。第一、襲う場所も無ぇ。」

「娼館までの乗り合い馬車でくる奴はもっとダメだ。護衛もいるし、第一人数が多すぎる。」

「個人で馬車を使ってくる奴らはもっとダメだ。当然護衛は雇ってるし、それに誰が、何時、何処を通って来るかわかんねぇ。こんなんじゃ、襲いよう無ぇだろ。…八方塞がりじゃ無ぇか。」

俺の計画に呆れたように、一々可能性を潰してく。確かにニーヤの言う通りであり、襲う相手としてはリスクが高すぎる。

「まぁ聞け、これは只の行き当たりばったりの強盗って訳じゃない。ちゃんと作戦を立てられる相手を見つけたんだよ。」

ニーヤは半ば興味を失ったかのように、横になって眠そうな顔で欠伸をする。そんな様子には構わずに、作戦の概要を話し続ける。ここで引く訳にはいかねぇ。

「狙うのは教会の馬車だ。誰が乗ってるのかは知らねぇが、ここ数週間は毎日、週末以外はアドラーム娼館に教会の馬車が乗り付けてるんだよ。」

「あそこは高級娼館だからな。元々金持ちしか来ねぇ。だから、平日の朝方なんかはガラガラだ。それを狙ってきてるんだろ。」

未だ寝転がりながらも、ニーヤの目が此方を向く。如何やら少しは興味が沸いたか?

「まぁ、乗ってるのは間違いなく坊主だろう。奴ら平日の夕方には、教会で信者と共にお祈りをしなくちゃならねぇ。だから、朝方から来て昼過ぎに帰るんだ。」

「つまり、来る時間と使う道順が分かるんだよ!」

「道順って?何処通ってくるってんだ。」

寝転がっていたニーヤが座り直し、俺にそう尋ねた。

「あの紋章は、丘の上のダラム教会のもんだ。とすれば、ダラムの丘の裏手にある、森を抜けて街を大きく迂回する道を使ってるはず。」

「流石に坊主が娼館に行くのに、町中通っては行かねぇだろう。直ぐに噂になるしな。」

「すると、大体日の出の辺りで森を抜けるはずだ。」

「だから、森で待ち伏せして、そこで一気にやるんだよ!!」

そこまで話すと、ニーヤは目を閉じ、何かを考えているようだ。俺は一先ずニーヤが何か話すのを待つことにした。

「…しかし、戦いとなればこっちは6人、向こうは護衛の兵士が最低でも2人は居るだろう。武装した兵士2人はキツいな。それに護衛が獣人だったらお手上げだ。なんたって俺たちは、ろくな武器も持ってないんだからな。」

「それに、お前らは荒事では役立たずだろうし。」

ニーヤは値踏みするかの様に、俺たちを見回した。

俺は振り返らず、親指で肩越しに後ろを指さし

「まぁ確かに、こいつらは役立たずだが、俺は違うぜ?」

にやりと笑って、今度は後ろを振り返り、ニックとアンダに目配せする。そして


「必殺パンチ!」


と言って、横に座るアンダのわき腹を小突く。するとアンダは、糸の切れた操り人形のように、座ったまま前に倒れた。俺は片膝立ちになりアンダを足で裏返すと、その顔をニーヤに向けて、見えるようにした。

「…死んでる?」

ニーヤは、眼前で何が起きたのか理解できないようだったが、口を半開きにして息をしている様子もなく、様を成さなかった瞼を見開き、動かなくなったアンダの姿をみて俺に尋ねたのだ。

「そうだ、俺が今殺した。…これが俺の能力【必殺技】だ。」



俺があの白い空間で貰った能力。忘れていた俺の力『【必殺】と着けて対象を攻撃すると、どんな相手だろうと必ず死ぬ。』能力だ。

人だろうが獣だろうが関係無く、パンチでもキックでもチョップでも何でもOK。当たりさえすりゃ必ず殺せる。正に【必殺技】と呼ぶに相応しい力。

「これがあれば、俺一人でも、やり方次第で護衛を1人、いや上手くすれば2人は始末できる。」

「どうだ?現実味が見えてこないか?」

未だ倒れたアンダの顔を覗き込み、生死を確認していたニーヤに声をかける。

「…俺たちは何をすればいい?」

ニーヤが問いかける。これは作戦に参加するって事だ。

「ここからは本格的な計画を練って行く。そっちの全員を集めてくれ。」

「分かった。だがその前に、一つ確認させてくれ。」

「なんだ?」

「…何故コイツを殺した?」

ニーヤの目が俺を射抜くように睨む。まぁ、これから一緒に大仕事をしようってのに、仲間を簡単に殺すような奴は信用できんわな。

だが、俺にはアンダを殺さなきゃいけない理由がある。

「…コイツは俺たちがゾンダに反抗したりしないかを監視してたんだ。」

「何だって!?」

「コイツはゾンダの愛人だったんだよ。」


ゾンダが稚児趣味のホモ野郎だった事も、アンダがその捌け口となっていた事も、そしてアンダが密告屋だった事も【アサカ】の記憶にあった。【アサカ】は全てを知っていた。が、何も出来なかった。ただ、知っていただけだった。

「アイツは俺たちを見張ってたんだよ。結託して裏切ったり、逃げたりしないようにな。」

【アサカ】は気づいていた。が、どうしようもなかった。と言うか、密告されるような事は考えられなかったので如何でもよかった。、

俺は首輪を指差し「確かにコイツがあれば、奴に逆らう事は出来ねぇ。下手すりゃこっちが間単に殺される。」

「だからよ、誰か一人が首輪を外し、奴をぶっ殺しちまえば良いわけよ。」

ニーヤとその仲間の獣人共が息を飲むのが分かる。この計画が上手く行けば、一気に自由の身だ。

「…だが…しかし」

うん、何が言いたいのかは分かる。

「分かってる、最初に首輪を外すのはニーヤ、お前だ。」

ニーヤがハッとして俺の目を見つめる。うん、オレが信用しきれないのは分かる。だから、俺の方からも判りやすいリターンを提案しとく。

「まぁ、坊主が100000ゾル以上の金を持ってりゃ良いんだが…それでも問題はあるがな。」

「そこも手筈は考えてはある。だから…」


「ニーヤ、お前がゾンダを殺すんだ。いいな?」

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