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プロローグ
サブタイの変更をしました。
2018.8.14
物語は、伝承の様な物で御座います。
夜、寝る前に物語を母親は語ります。
寝具に横たわる貴方は、頭上から音色を上げる言葉に、耳を傾け、小さな灯の中で一つ一つ拾い上げ、辺り一面に広げます。
それは、胸が震えるような冒険譚であり、身も凍る恐怖譚でもあり、頬から雫が流れる悲劇でも、心が躍る喜劇でもあったでしょう。
貴方の、拾い上げ、紡いだそれは、歪な物になっていたかもしれません。
もしかしたら、一つの物語ではなく、或いは複数の物語を、違えて解釈しているかもしれません。
が、それでも貴方はその物語を確かに、聞いていたのです。
今では遠い過去の話。
文字も読めぬ幼児が、頭の中で幾度も反芻し、その意味を真には理解できなかった話。
昔を懐かしんでも、思い出せるのは母の腕の、胸の、その掌の、温もりだけ。
これは忘れ去られた話。
始めましょう。
剣と魔法の物語を。
忘れられた、男の物語を。