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頑丈そうな扉の奥には意外にも普通の独房と廊下があった。
見張りがついてこないことにも驚きながら連なる独房を見る。
独房は左5右5の全部で10個ほどのようだ
……寒気がする。
やばい気配がする。
ここから先に踏み出したくない
なんなんだこの感覚……。
本能的なやつ?
二重の鉄格子が意味を持っていない気がする。
今いるところから一番近い左の独房からただならぬ気配がする。
…………こういうのはスルーに限る。
しらんしらん。
手元のリストいわく左の3番目に詐欺師がいるからまずそっちいこー。
そそくさと通り過ぎる。
チラッとみたが筋骨隆々の2メートル以上ありそうなやつがみえたぞ。
拘束具凄かったし。
無理無理無理。
左3番目
さてと……国家転覆とかいうやつはどんな奴なんだろう
「おや?……見ない顔ですね。新人さんですか?」
鉄格子の向こうに洋風のアンティークな家具に囲まれたへやが見える
ティーカップを持ったイケメンがこちらにほほえんだ
…………あ、やべ、錯覚だ
格子の向こうは他の独房と同じくちょっと広めできれいなだけの殺風景な部屋だ
こいつは凄い優雅さだな。あと、腹立つくらいイケメンだな。
貴族みたいだ。
あと、なんかでもなんか詐欺師っぽい。俺の想像通りって感じだ
「これはどうも、はじめまして。私は……「あああああああ!!!ごめんちょっと待って!!!!!!いやあさあ!俺は通りすがっただけのただの一般人なんだよー!!!!!ごめんな!ひと違いだわ!!そうだわ!!!!!!うん!!!!残念だなあぁぁぁ!!!!!!」
……俺は昔おかんに言われた
詐欺師の言うことなんて聞くなってなあ!
完璧じゃあねえかよ!おい!
教え生きてるねぇー!
「じゃあ。そういうことだから」
俺はきびすをかえしその場を立ち去ろうとした。
しかしこのイケメン詐欺師は全くものおじせずに穏やかな口調で話かけてきた。
「こんなところを通りすがるなんて面白い人のようですね。いいでしょう。自己紹介はまたの機会ということにして、少しお喋りしませんか?ここにいると暇で暇でしょうがないんです。私の檻の前で立ち止まったということはなにか気になることでもあったということではないですか?私こう見えてもの知りなのなもので、答えられる範囲で特別になんでもお答えしますよ?」
しつこいな。
俺の必殺、会話のキャッチボールブレイクが効かないなんて。
でも確かに聞きたいことはある。
でもどうしようかな。うーん。
「もちろん、不快だとおっしゃられるのであれば、すぐにしゃべるのを止めましょう。如何です?通りすがりの一般人さん?」
そうだな。嘘を言われるかもしれないが、じゃあ一つだけたずねることにした。
「……国家転覆って何したんだ?」
「ああ、そのことですか。そうですね。冤罪……といっても信じてもらえなさそうですね。なんでもと言ってしまいましたし、お教えしましょう。」
なんか話し方とか手振りが腹立つし、話が長いな。
「100字以内で。」
「ある宗教団体をひいきし、複数のマフィア、資産家から財産等を騙し取り提供。その後、その宗教団体の目的である国家転覆を起こさせ、失敗させ、その団体の全てをもらい受けました。国家転覆罪はその時のことですね。」
ぴったり100文字だな。
すげえことしたんだな。
「初対面での印象を悪くしてしまいそうでしたのであまり言いたくはなかったのですが。管理人室で尋ねればすぐに分かることですしね。」
おおっと、それ以上は100字オーバーだ。
俺はイケメン詐欺師と別れた。
右2番目
その檻の中には白いマントを羽織り後ろを向いている金髪の少女がいた
ずっと待機してたんだろうなあ……………。
あ、よく見たらマントじゃなくてシーツじゃん。
こっちチラチラ見てるな。
めんどくさそうだし素通りしようか。
俺が離れようすると金髪は慌てた様子でシーツをバッとひるがえした。
「くっふっふっふっふ。我が名は世紀のだいか…けほッ…いと、ごほごほ…でいじ……、いったっ目にほこり……」
シーツから凄い量のほこりが舞った。
みるからに古くて汚いそんなものを振り回すからだ。
デイジーが目をこすりながら苦しんでいる。
この残念なのが見間違えることない、デイジーだ。
見間違いであって欲しい
あ、目をこすり過ぎて片目にだけ入れてたカラコンとれた…
俺達が見ていた怪盗デイジーはひいき目というか理想がはいってたんだなと現実にうちひしがれる
発明品もないしな。
ああ、そうそう、四年ほど前から三年間くらいこいつは、怪盗なんてことをしていたんだ。
シルクハットに奇抜な格好を身に纏い、自身でつくった数々の発明品を駆使して警察から華麗に逃げ切る姿は子供だけでなく大人達からも大変人気があった。
そして、さらに変装の名手で、決して人を殺さない。
世界中に予告状をおくり、狙った獲物は逃さない。
世間が認める最高のダークヒーローだった。
「ふぅ、よし! これで大丈夫!」
カラコンを入れ直すとデイジーはこちらをはっきりと見た。
半年の監獄暮らしのせいで、やつれていて、健康が万全の状態ではないが、
肩までの金色の髪はとてもきれいだし、顔はとびきりの美少女だ。
囚人服がはち切れんばかりのおおきな胸を持っている、
なのに体はすらっとしていて、正直完璧な容姿だ。
同年代の嫉妬の的だろう。
デイジーが捕まった時に、よく見る姿が、変装でなくそのままの容姿であったことが多くの人を驚かせたな。
二つの意味で。
「我が名は大怪盗デイジー! 天才発明家にして、世界中の秘宝を盗み出し………あっ、ちょっと待って! 待ってよ-!」
やり直しやがった。
現実は厳しすぎる。
彼女に完璧な容姿と才能を与えた神は上手くバランスをとったのだろう。
こいつはファンブックと称して自分の発明品のリストをご丁寧に詳しい解説付きで配り、自分のブロマイドカード(顔写りバッチリ)なんかも配ってた。
絶対その辺が捕まる原因だろ。
そういやあのカラコンにもなんか機能があった気がする。
これ以上イメージを壊されないうちに足早に立ち去ろうとすると、
「ひっく、ひっく、やだよぅ、行かないでよぅ」
………泣き声が後ろから聞こえてきた。
残念!運命の出会いってのは金髪のことじゃないよ!
長くなってしまって今回四人目出せなかった…