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ぼくだけを見つめてくれたきみを  作者: 夢兎
第三章 二人で手にしたものだから、二人の空間だ。
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四、葵 六月二十八日(火)


 しとしとと雨音が家の中に響く。


 この時期、夜になると外では騒がしく蛙が鳴いている。

 雨音と鳴き声、とどめとばかりに肌に纏わりつく湿っぽい空気を煩わしく感じながら、しかし、それ以外の理由で葵はため息を吐き出した。


 ソファにもたれ、天井を見上げる。

 浮かんでくるのは紫苑の顔だった。


「無理……」


 ぽつりと漏らした言葉は虚空に溶けていった。

 態勢を整えた葵は、テーブルの上に置かれた一枚の紙を取り、じっと紙面を見つめる。

 その顔は真剣そのもの。


 しばらくにらめっこしたのち、負けたのは葵だ。

 まあ、はなから紙に勝てるわけもない。

 ぐったりと横に倒れ、ソファの上でごろごろと身体を転がす。


「無理、無理……絶対無理」


 ――恥ずかしいし。


 それではダメなのだと勢いよく身体を起こし、再び紙を取る。

 そして、またソファに倒れた。

 もうこの行程も何度目か。

 何度やっても思い切れない。


「やっぱり、無理だよ……」


 これは流石に勇気が出ない。

 諦めきれないが、どうして踏ん切りをつければいいのかも分からない。

 無理なものは無理なのだ。

 いくら決意しても出来ないことはある。


 ――でもっ、でも!


 出来ないけれど、どうにかしたい。

 なにかいい方法はないものか。

 葵は深夜まで悩み続ける。

 だが、やっぱり策は浮かばなかった。


 次の日、葵は初めて授業中に寝た。


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