Take2 草原
さて、第二話でございます。
地下鉄での騒乱からどうなったのか、気になっていただけていたらうれしいですね。
ちちちと鳥の鳴き声が聞こえる。柔らかな風が頬を撫で、それに乗り草木の青い匂いが鼻をつく。先ほどまで感じていた熱気はどこかへ去り、代りに感じるのは爽快感と開放感。
(・・・ッ!?)
瞳を開けると、目の前には草原が広がっていた。あまりの驚きで声も出ず、私はただただ口を開けたまま固まっていた。
ここは一体どこだろう。そんな当然ともいえる疑問が浮かんだのは、あたりを十分見渡た後その場に腰を落ち着けた頃だった。周りにあったのは草原、そして遠くのほうに森。私が腰を下ろしている場所は丘の様になっており、周りからは少し高い位置にある。公園などにある中くらいの高さの山を想像していただけると分かりやすいと思う。眼下に、といっても高低差5mほどだが、広がっている草原を300mほど進んだ先に森が見えた。ここからでもはっきりわかる程大きな樹木が突如として草地から生えており、まるでゲームの様に草原との区切りがついている様は、どこか非現実的光景だと感じた。
いや、もっともこの場で非現実的なのは私をおいて他に無いのだが。そこは現実逃避を図らせていただきたい。だが、そんな私の願望は叶うことはない。
「誰だよ、このイケメン」
つい口に出てしまった。零れるようにポロッと、そんな感じである。
丁度手に持っていたスマートフォンのブラックアウトした画面に映っていたのは、金髪碧眼で彫りの深い顔立ちのイケメン。おや、これは可笑しいことである。私本人の髪の毛は日本人らしい黒であるし、瞳もそのまま同色だ。まさかと思い、カメラを起動した。内部カメラに変更し自分の顔を画面に映しだし、シャッターを切った。そこに映っていたのは、引き攣った笑みを浮かべ、せっかくの整った顔立ちを崩している金髪碧眼の男。つまりは私だった。
(おかしい。あれ?私は金髪じゃないぞ。そしてこんなにイケメンでもない)
混乱の極みである。突然見知らぬ大地に、そして見知らぬ体になってしまった私。しかし、その記憶はまさしく日本人であった時のまま。ここはどこなのか、私は誰なのか、これからどうしたらよいのか。何もかもが分からないまま、私は投げ出されてしまった。記憶はあるのに記憶喪失。この状況を言い表すならばこうだろう。実に適切。
「ああ、ちくしょう。どうなってんだ!」
今度は故意に叫んだ。そうでもしないと、この状況に対する苛立ちでどうにかなってしまいそうだったからだ。
不可解だ。不可解なのだが、このままでは餓死するしかない。行動するしか、私には生きるすべはない。ひとまずは食料、ないし水源の確保が必要だ。サバイバルの心得はないが、この絶望的な状況下において何よりも必要なのは食料と水であることは分かる。
(さて、ひとまずはあの森で湧水でも探しますか。ついでに食べられる期の実でもあれば最高だな)
私の脚は森へ向かって動き出した。
第二話、どうだったでしょうか?
突然の異変に動揺しまくりの主人公。
向かった森で、彼は食料を手に入れられるのか。それとも・・・?
次回、こうご期待!