2.初めてのVR
Now Reading...
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言語設定、日本国。
ただいまより身体情報の読み取りを行います。
しばらくお待ちください。
… … …
心拍、血圧、体温、平常値を設定しました。
脳波の測定を開始します。
… … …
脳波の基本波形を設定しました。
… … …
性別、年齢、体型の自動設定を行いますか?
… … …
性別、年齢、体型の自動設定を行いますか?
ああ、これ私に聞いているのか、と案内が止まって初めて気が付いた。
VRって勝手に設定進むとは聞いていたけど、こういうところ融通きくんだなあ。
脳裏にたくさんの選択肢があることが伝わってくる。というか、目をつむっているのに状況が分かるって、変な感じ。ちょっと気持ち悪いかも。
これ、そのうち慣れるのかな。
一応中学校の時には授業でVRについての説明があったから、身体情報に関しては現実と同じにしておくのが一番いいとは聞いていた。
職業訓練や学校の授業、会社の研修など、現実と違う体で覚えても差が出てしまうのだとか。
難しいことは分からないけど、脳の中身も現実との違いに戸惑って、ダイブ中でも上手く距離感がつかめなかったりするらしい。
まぁ深く考えなくてもいいか。
自動設定する、っと。
性別、年齢、体型の自動設定を行います。
… … …
性別、女性。
年齢、16歳。
体型…読み取り中…読み取り中…読み取り完了。
基本情報の設定が完了しました。
ただいまより仮想実体を再現します。
「わっ」
自分の存在が急にはっきりとしてびっくりしたら、声が出てそれにも驚いてしまった。
急に自分の体が出来て、目も開くことが出来ている。
身体情報の登録が済むと、VRでの体がようやく出来上がるとは聞いていたけれど、VRってこんなに現実味があるものなのか…。
今いるのは、なんて言うかかなり昔の映画に出てきそうな、所謂仮想世界ってこんな感じ、ってイメージの、立方体の部屋の中。青白い光を放つ壁に囲まれた、現実味のない場所。
『仮想現実の世界にようこそ』
そこに突然、女性の声が響いた。というか、これは先ほどまでの案内の続きなのだろう。
『仮想現実、通称VRでは、基礎情報を登録しておくことが出来ます。ご使用中のヘッドギア、もしくはお持ちの国籍の登録サーバがご利用いただけます。登録なさいますか』
登録しないといちいち毎回読み取りされるらしいので、当然「します」と答えた。
『ヘッドギア、登録サーバ、どちらをご利用になりますか』
正直登録サーバにすれば、公共機関でも情報を引き出して、違うヘッドギアを使った時、VR機器を使用したときでも情報読み取りを行わずにすんなりVRが開始できるのだとか。
でも、はっきり言って怖いので、とりあえず「ヘッドギアで」。
『ヘッドギアが選択されました。 … エラー、すでに登録者がいます。既存の登録者情報を消去されますか』
ありゃ。多分お兄ちゃんだろうな。
どうしよう…これ中断して内容消していいかなんて、お兄ちゃんに聞けないしな。
「消したらどうなるの?」
って、こんな質問に答えてくれるのだろうか。
『消去されますと、登録者の身体情報及びヘッドギアを指定して登録されたVRの利用履歴、情報、全てが消去されます』
おお、答えてくれるんだ。
「復元できる?」
『消去された情報は、専門の機関にお持ちいただければ復元できます』
それって思うに、かなり面倒くさいってことだよね。
はあ、仕方ないか。どうせいずれは、国の公共機関でもある登録サーバ利用することになるんだし。…本当は嫌だけど。
「日本国の登録サーバ使用します」
『登録サーバが選択されました。国籍、日本国。基礎情報の登録を開始します。しばらくお待ちください』
やっぱりなんだかVRって怖いな…特にこの一人でいる感じ。ああ、やだやだ。登録だけは一人ずつ行わなきゃいけないらしいし…どうにかしてほしかったよ。
『基礎情報の登録が終了しました。次回より、自動照合が適用されます。ただいまカード情報の読み取りを行っています。しばらくお待ちください』
その声に合わせて、壁に「Now Loading」の文字が現れた。右から左に流れていくようにしばらくそれは表示されていたが、「Completed」の文字とともに、ざっと周囲の景色が変わった。
風の音、一面の草原、揺れる草木、流れる雲に、青い空。そして、どこからか聞こえる音楽。中央には大きくあの、ピンクのカードと同じ文字が浮いている。そして、その下に紹介文のようなものが書いてある。
『Only Dream Online』
貴方の叶えたいことは、なんですか。叶えたい夢の指標を選んでください。それに合ったクエストを進め、貴方の夢を叶えましょう。これは、夢に向かって進めるあなたの物語です。
胡散臭い上によく分からない。本当にこのゲーム、売れ行き好調なんですか。ていうか、オープニングなのか、それともダイブするVRの選択画面なのか…よく分からない。
『ダイブ先を選択してください』
しばらく困って待っていると、案内の声が戻ってきた。目の前には光る三角が二つ、右と左にそれぞれの頂点を向けて現れた。
これで選べってことなのだろうか。というか、ゲーム以外に何か選べるの?
好奇心に負けて、右側の矢印に指先で触れてみる。というか、触れる、という感じがちゃんとする。VRって結構面白いのかも…?
すると、周囲の景色が一気に変わってまた無機質な壁になった。その壁に、今度は『公共VRサーバ一覧』と表記されている。もう一度矢印に触れると、今度は『VRサーバ自動検索』。もう一度触れると『VRサーバコードを指定する』となる。
どうやらネットの検索と同じで、ネットにつながっているVRサーバを色々と選択することもできるみたいだ。
とはいえ、ゲームのために始めたVRだし、公共VRサーバやフリーのVRサーバで他の人と接触する自信はないので、当然、もとのゲームの部屋に戻す。
風の音に、草原に、青い空。これがこのゲームのイメージなのだろう。この音楽も、なんだかとても心地いい。
「…これ、始めるにはどうしたらいいんだろ」
選択ボタンみたいなのも見当たらないし…どうすればいいんだろ。
『VRサーバを選択したら、「ダイブ」とコールしてください』
おお、ちゃんと返事が返ってきた。
なるほど、だからみんなダイブするって表現をするんだ。
よし。
「ダイブ」
ちょっと恥ずかしくて声が小さくなってしまったけど、無事にコール出来たらしい。というか、考えて見たら全部頭の中でやってるんだもんね、そりゃ通じるよね。ていうか、こういう無駄な考えとどう分けてるのかな…あ、声に出すって行為で分けてるのか、なるほどー。
って待って待って景色変わりすぎて怖いんですけど!!
ダイブをコールした瞬間から景色がきゅーっと一点に向かって収縮し始めて引き攣れてますけど!? なにこの演出!? 怖いからやめて!!
思わずしゃがみこむと、ポンっと間抜けな音とともにお花が降ってきた。なんかクラッカー鳴らした時のあの感じですよ。きゅーっとひきつれた所から、ポンっと一杯花が噴き出して降ってきてますけど。
ほんとなんなのこの演出!?
気づけば足元は原っぱ。ふわふわ降ってくるお花が散らされてわーきれー。はっきり言って棒読みにもなるわ!
「もうなんなのよー!」
あ、声が出た。さっきまで喚きたくても出なかったのに。これ、無事にVRサーバにダイブできたってこと?
そういえば、さっきまで真っ白な布の服上下、って感じだったのが、中世ヨーロッパの村娘?風になっていた。
狭いと思っていた四角い空間も、いつしか開けて草原の真ん中になっている。遠くに森やら、山やらと開放感満点だ。
ちょっと緊張感が取れてほっとしたところに、今度は目の前に小さな竜巻が起こった。本当に小さくて、つむじ風って感じだけど、それは降り積もった花を巻き上げると、ポン、と先ほどよりも小さな音を立てて白い煙を上げた。
「ようこそ! Only Dream Onlineへ!」
そして現れたのは、羽の生えた猫だった。
結構設定適当なので、あまり深く考えずに読んでいただけると…助かります。
2月13日誤字訂正