19.クエスト選び
「まず一つ目。単純にスカートのレシピが手に入る。ついでに経験値もな」
まあそれは分かる。あとの二つとの違いが分からない。
「で、二つ目。これは、型紙が手に入るよな。型紙があると、ある程度ランクが上がった時に生地を自分で選んだり、装飾をつけたりとかアレンジができる。一つ目の場合は、教わった通りのものしか作れない。その上、<裁断>のスキルが手に入る。この部分に<>が付いてるだろ?」
アキラが指したのは、二つ目のクエストの<裁断>の部分だ。
「こんな風に文章の中で<>が付いたものは、手に入るスキルだ。すでに持っているスキルでも、経験値が手に入る」
「じゃ、この三つ目の<パターン>もそうなの?」
「ああ。あと、ランクが上がっていったとき、自分でデザインしたものをいずれは作るだろ?」
「うん」
そりゃあ、自分で考えたものを作れたら、一番いい。
「そういう時に必要になるのが、この<パターン>ってやつだな。職業によって名称は多少変わるが、要は考えた形を立体にするために必要なスキルだ。これがないと、デザインしたものを実際の形にすることはできない。ゼロから物を作るには、必要なスキルだな」
詳しく聞くと、要はODOにもともとあるデザイン…すでに存在する型紙のアレンジは出来ても、ODOに存在しないデザインの服などは作れないということだ。
うーん、なかなか深く作られている。正直、頭がこんがらがって分からなくなりそうだ。
「ま、とりあえず裁縫師の枠に在るクエストは全部挑戦しておくことだ。条件があるから、それだけ満たせれば受けることが出来る」
初期のクエストは、まず必要なスキルの基礎を集めていくようなものだそうで、必要なスキルが揃った頃には、どのクエストを受ければよいのか大体分かるようになっていくらしい。
「俺は細工師だから、裁縫師の詳しいところは分からないけど、大体第3の町くらいまでこなせば、基本的なスキルが一通り揃うってのが通例だな。心配なら、とにかく受けられるものは全部受けておくくらいの気持ちでもいいかもな」
是非そうさせてもらおう。
「あと、クエストには期限付きのものや、同時に他のクエストを進行できないものとか、色々ある。基本的に同じ地域で受けられるものは、最低でも2~3は同時に進めるほうが効率いい場合が多い。例えば討伐や採取とかな。そうだな…」
手慣れた動きでクエストボードを操作して、アキラが何かしている。
何をしているのかは、動きが速いので詳しくは分からないけど、クエストを探しているらしい。
「例えばこの辺のクエストなんかは、全部草原に出るモンスターの討伐だから、一度に受けておくのが楽だ。あと、採取で行くと、この辺がどこでも採取しやすい草花の類いだから、町から町に移動するときに便利だ。どれも期限もないしな」
示されたクエストを見ると、確かにここに来るまでに見かけたモンスターが一通り揃っている。採取は…まだやったことがないので全くの謎。
「こういう討伐とか採取のクエストって、どこで完了すればいいの?」
今までにやってきたクエストは、誰かに報告したり、行動し終われば完了していたけど…。
「ここ見て。依頼主の欄があるだろ?」
示されたクエストを見ると、確かに依頼主が載っている。
「で、この依頼主の部分がunknownになっているやつは、条件を達成し次第その場で完了になる。報告をする必要も何もなくて、報酬も自動で手に入る。ここに個人や店の名前が載っている場合は、終了報告をしに行くと報酬がもらえる。採取系の依頼は、ここ見て。報告先が載ってるだろ」
詳細に展開したクエストには、一覧の時よりも細かく条件が記載されていた。
「こうやって選択すると、かなり細かく条件が見られるようになってる。ものによっては違うけどな」
クエストはとにかく数をこなした方がいいみたいだ。うーん…着物が作れるようになるまでには、まだまだ遠い…。
まあ、焦ることもないか。どう考えても現実で作れるようになるよりは早いだろう。
「あ、そうだ。コハク、いらない素材たまってるでしょ? 一緒に売ってこようよ」
「その前に、何か一つクエスト受けてみないか? せっかくだし付き合うけど」
「えーと、じゃあ…三人でクエスト受けてみたいかな。素材はそのあとで」
イベント以外で初めて受けるクエストなのだし、一人で受けなくて済むならちょっと安心。
「うん。まずはクエストね」
エリステルも快く受け入れてくれたが。
「じゃあ、このクエストにしましょ」
といって、あっという間に決めてしまう。
「おいおい、コハクに選ばせてやれよ」
「たくさんあって迷うよりいいでしょ? ね、コハク」
「うん。別に何でもいいよ」
「あそう…ならいいけど」
アキラは納得いかないって感じだったけど、どうせそのうち自分で選ぶんだから、気にしない。
エリステルが選んだのは、コッケイ鳥の討伐クエストだった。指定の地域内で、指定数を倒せばいいらしい。
ついでだからと、アキラが一角ウサギ討伐のクエストも受注した。
「素材の買い取りは各商店でもやってるけど、クエストボードのある建物に設置されてる買取所で売っちゃうのが手っ取り早いの」
場所を移動しながら、エリステルが教えてくれる。なんでも、素材やアイテム、装備品など、特殊なアイテム以外は買い取ってくれるらしい。
「なんか質屋みたいだね」
「ああ、確かにそうかも。でも、質屋と違って売ったものを買い戻すことはできないから、気をつけないとね」
「あとは、商店と違って買い取り価格は低めだから、高く売りたいなら買い取ってくれる商店かプレイヤーを探した方がいい」
変にリアルな設定なのか、どうも買取所というのは仲買業者のようなものらしい。まとめて買いあげて、必要な先にさらに売る…という設定なのだとか。
これに関しては色々理由があるらしいけど、まあ自分にはあまり関係なさそうなので、覚えておかないことにする。
買取所というのは、簡単な造りの銀行の窓口みたいなところだった。NPCはいるんだけど、どうも多数にプレイヤーに対応するためか、窓口に直接話しかけることもできるが、近づくとクエストボードと同じでウィンドウが展開するように出来ていた。
そのため、エリステルと同時に売却を行うことが出来た。ここに来るまでの間に手に入った一角ウサギやコッケイ鳥からの素材を売る。
ある程度の小金にはなるけど、それよりも、所持アイテムの重量を減らすのが目的になりそうだ。一角ウサギの角とか、何気に重量2もあるし。
「さて、クエストに行く前に、アイテムとか補充しに行くか?」
「うん。…ここに来るまでに結構減ったし」
何せあのサンショウウオ(もはや正式名称は覚えていない)のときに回復アイテムはほとんど使ってしまったのだ。
「コハク、装備品とか見に行く?」
道具屋に移動しながらエリステルが聞いてくれる。
「とりあえず大丈夫。あとで見に行くから」
ほんの少しだが、始まりの町よりは良い装備品があるのだとか。
「初心者シリーズは、第3の町くらいまではそのままでもどうにかいけるから、節約したいなら変えないのを勧める」
耐久値が減ると、素材と修理費用が必要になるらしい。
「もしも買い換えるなら、修理時にどういう素材が必要か、先に確認しておくといい」
「うん。ありがとう」
アキラは何かと親切だ。面倒見がいいというのか。
ただ、時折目線が耳に来ているように感じることがあるので、若干残念なのが否めない。
道具屋では、エリステルに勧められて初心者ポーションを10個と初級ポーションを10個購入した。レベルはまだ7だけど、もうすぐHPが100を超えそうなのと、レベル10を超えて使えなくなったらもったいないというのが理由だ。もしも初心者ポーションが使えないレベルに達してしまった時の、保険の意味もある。
ちなみに初級ポーションは重量も1なので、総重量も圧迫しない。ただし、一つの値段は20q。HP回復量は200だ。
「さて、準備も済んだし、クエスト行くか」
「うん」
なんだかちょっと、わくわくしてきた。




