17.スキルを覚える三つの方法
第1の町は、始まりの町に比べてはるかににぎやかだった。
まず圧倒的にプレイヤーの数が多い。
「これ、ほとんどプレイヤー?」
「そうね。道を歩いているのは大体そうだと思う」
NPCの場合は、名前が表示されているか、名もないキャラクターでもNPCと表示されているのですぐにわかる。町の大きさのせいか、NPCの数も始まりの町より多いみたいだ。
名前の表示がなかったり、称号を隠していたりする人は大体がプレイヤーだという。
ちなみに、称号というのは私がこの間まで掲げていた「初心者」がそれだ。
どうも、クエストを進めたり、一定のスキルを取得すると手に入ったりするらしいんだけど、今のところ私が持っているのは「初心者」と「裁縫師見習い」、それから「刀剣初心者」の三つだ。
お兄ちゃんに聞いた限りでは、「○○初心者」という称号はたくさんあるらしい。進化していくタイプの称号で、主に使っている武器や道具なんかのスキルレベルが上がると、上位の称号が手に入るのだとか。
アキラさんの称号は「細工師」となっていて、エリステルは隠している。私も、お兄ちゃんに勧められたので隠している。
でも、町を歩く人の中には、「初心者」や「魔法初心者」、「革職人見習い」など、明らかに初期の称号を隠さずに掲げて歩いている人たちもいる。
「さて。スキルを取得する方法はいろいろあるが、大きく分けて三つ」
近くで空いていたベンチに腰掛けて、アキラは三本指を立てた。…しかし装飾品の多い指だな。
「さて、何か分かるか?」
「え…と、あー。それっぽい行動をする?」
「コハク…」
そう言った途端、両手で顔を抑えてエリステルがその場にしゃがみこんだ。アキラは微笑んでいるが、その顔が何となく意味新に見えるのは被害妄想だろうか。
「…バカにするなら、それらしく大声で笑ってもらえない?」
今きっと、不細工な顔してるんだろうな…私。
「バカになんかしてないさ」
ニコニコしつつアキラが私の頭を撫でる。
…はっとして飛びのいた時には、すでにアキラの相好はだらしなく崩れていた。
しまった、お兄ちゃんによく撫でられるので、ナチュラルに拒否るの忘れてた。
「あー、残念」
隠しもしない本音がアキラの口から洩れている。
「セクハラ!」
復活したエリステルが、アキラを怒鳴りつけつつピコハンで頭をたたいた。
「なんだエリステル、うらやましいのか?」
衝撃もなんのその、すがすがしい顔でアキラが言う。
これはあれだな、私というよりはエリステルをかまってるのかな。
「ふーんだ。アキラと違って私はいつでもコハクを撫でられるもの」
エリステルが勢いよく抱きついてきた。
「はいはい」
胸が苦しいですよー、お姉さん。
「で、三つって?」
若干肩を落としているアキラが苦笑して頷く。
「一つは今言った通り、自分でスキルに対応した行動をとること。これまでの中にも、そうして手に入ったスキルがあったと思う」
頷きつつ話を聞く。今まで手に入れたスキルの多くは、そうして手に入れたものだ。
「ただ、基礎に当たるスキルはそれで手に入ることが多いけど、実際のところ多くのスキルは複合的な要素を含んでいる」
「つまりね、動き以外にも、状況とか、他に持っているスキルが必要とか、条件が複数必要になってくるってことよ?」
よっぽど私が分からない顔でもしていたのだろうか。エリステルから注釈が入る。とりあえず、スルー。
態度がわざとらしかったのか、アキラが軽く笑った。
「行動で手に入れられるスキルは、ある程度限られているってことだけ分かればいい。そう言うのを検証している奴もいるから、複合条件のスキルもネットで結構公開されてるけどな。ま、正直厳しい条件多いから、勝手に覚えるもの以外はあんまり深く考えない方がいいだろうな」
正直言って、そう言うゲームの要素はあまり興味がないので、問題ない。一つ頷き返しておいた。
「で、二つ目。人に教わる方法。指定のNPCか、あるいは上級職って言われる高位の称号を持っているプレイヤーから教わることが出来る。NPCに関しては、対象になるNPCを探す必要があるのと、大体教わるのに条件を提示される。プレイヤーから教わるのは、人の伝手を頼るのが普通だな。条件は相手次第。まあ、もし友達からなら気楽に教われるだろうし、逆に人に教えることで報酬を得るようなプレイヤーもいる。ある意味情報だから、価値ある情報に値段が付くのは当然のことだけどな」
なるほど。じゃあライトさんに教わった時に得たスキルが、それに当たるわけか。
「最後。クエストで手に入れる方法」
「クエスト…」
「そう。スキルを手に入れられるクエストがある。基本的なスキルから、上級スキルに至るまでね。各所にあるクエストボードに載っているものもあれば、特定のキャラクターから受注するものもあるし、条件が整うと発生するものもある」
クエスト…といっても、私が受けたクエストは最初の初心者イベントだけだ。あの時は識字スキルを手に入れたんだっけ。
「条件の中には、例えば『初心者』とか『見習い』と呼ばれる称号を身につけておくとか、そういう単純な条件のものもある。その状態でなければ受けられないクエストなんかがあるんだ」
「じゃあ、称号を隠さずに掲げているのは…」
「そう、そうしたクエストを受注したいか、あるいは受注しているプレイヤーということになるんだ」
なるほど。これで町中で堂々と称号を掲げている理由がわかった。
「スキルには、クエストに自然と付随しているものもあるし、クエストをこなした報酬として手に入るものもある。とまあ、大体のスキル入手方法はこの三つに分類される」
「大体ってことは、その他にもある?」
アキラは頷いて自分の手の甲を見せた。
「厳密には違うけど、こういう装飾品に付加して使えるようになるという方法もある。装備するだけで使えるようにはなるけど、まあ自分で覚えたのとは違うからな。制限とかいろいろ条件もある。覚えて使うスキルに比べても、威力は5割から8割程度かな」
「なるほど」
それぞれに利点と難点があるがあるわけか。
「エリステル、そろそろ離れて」
段々と首がしまってますよ。お姉さん。ギブギブ。
「あん」
べりっと勢いよくはがせば、エリステルから抗議の声が上がった。
ごめん、言わないけど、いまちょっと声が色っぽかったです。
ほら、アキラがあっち向いちゃったよ。
「あー、あとは、EXスキルってやつな。高難易度かつ攻略者数限定のクエストで手に入ったり、特定の称号を得ることで手に入れられたりする。まだ3つしか確認されてない特殊中の特殊なスキルだ」
視線をそらしたまま強引に話を続けるアキラ…結構純情なのね。
「まあこれらは例外ってやつ。基本的には最初に言った三つがスキルの入手方法だな」
「なるほど」
スキルに対応した行動をとる、人に教わる、クエストで手に入れる。
今までなんとなく取得してきたスキルだけど、考えてみると大体これに分類されるというのは分かった。
「コハクが目指すところはいわゆる生産職だから、スキルの入手方法としては人に教わるか、クエストで入手するのが一番効率のいい方法だな。スキルの入手に合わせて、レシピも手に入ることが多いからな」
「レシピ?」
これまた聞いたことのない単語が出てきた。
「レシピってのは通称で、要は材料と作り方の事だな。料理以外でも、薬の調合、装備品の作成とか、スキルで作り出せるものをそう呼んでる。メニューから選んでショートカットで作る方法もあるけど、これは経験値をもらえない」
「………」
固まった私を見て、アキラが喋るのをやめた。
「えーっと、ちょっと整理するから、待ってね」
「おう」
少々お待ちください。状態です。
前回の更新から一年以上間が空いてしまいました。
仕事で気力のほとんどを使いきっていました。
今後も不定期更新になるかと思いますが、気長な方、お付き合いください。
ここまで読んでいただいたみなさま、ありがとうございます。




