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人を想う

作者: れの

 人の権利とは、何だろう。

 むしろ、人とは何だろう。

 人権は、全ての人が有する権利だと思う。人が人として、人らしく社会を生きるための権利。その権利を考えると、自ずと、人とは何だろうかという疑問にぶつかってしまう。

 平成二十三年、三月十一日、午後二時四十六分。東北地方を、未だかつてない大きな揺れが襲った。

 強く長く続く地震。引き起こされ、沿岸を飲み込んだ巨大な津波。そして、福島原発の事故。東北を、日本を襲ったこれらの災害に、それによって引き起こされた事故に世界中が驚愕しただろうと思う。

 ニュースでそのことを知ったとき、僕が大きなショックを受けたことは言うまでもない。募金には参加したものの、直接被災地に支援活動をしに行くことも出来なかった。しかし僕は、こう思う。まだ自分に出来ることはあると。まだ解決していない問題は山ほどあるのだ。

 東北は今、復興に向かって確かに歩みを進めている。津波によって甚大な被害を受けた沿岸の光景は、特に変わった。瓦礫は片付けられ、建物が新しく建ち、閉ざされていた店のシャッターも開き始めている。しかし、震災から一年と半年が経とうとしている今、もう一度目を向けるべき問題があると思う。

 滋賀県大津市で大きく問題となり、今、世間を騒がせているいじめ問題だ。

 中学二年生の男子生徒がいじめによって自殺したというこの事件は、あまりに残酷だ。このいじめに関する問題は、僕にとっても身近である。それこそ、今までもニュースでたびたび見かけてきたし、日常的に耳にするワードでもある。それほどいじめというのは他人事ではなく、僕達がより深く考えられる身近な人権問題なのだろう。

 しかし、今までもメディアでたびたび取り上げられてきたいじめ問題も、これほど報道されたのは僕の記憶にある限りは初めてかも知れない。どのニュース番組でもこの大津市のいじめ問題が取り上げられる中、僕はふと、福島の原発を思い出した。

 ほんの少しだけ震災の傷が癒え、放射線に追われて故郷を離れ、他の地域、他の県で新たな生活を始める人たちが出てきた頃、メディアではいじめ問題が話題になっていた。被災地から転校してきた子供たちが、放射線を理由にいじめられたことを。

 どれほどの痛みだっただろうか。家を失い、慣れ親しんだ土地を失い、安全な日々や家族を失った上に、放射線がうつるから、という理由でいじめられてしまうのは。

 無論、放射線はうつったりしないし、それを理由に遠ざけたり、いじめたりするのはおかしい。第一、安全などないのだ。少し状況が、条件が違えば我が身に降りかかっていたかも知れない。もちろん、僕にも。それを考えれば、いじめることなんて出来るはずがない。怖いのは僕だってそうだ。でも、被災者を思いやる気持ちが少しでもあれば、いじめなんて起こらないはずだ。

 だから僕は、考えている。人の権利について、身近な人権問題について、今だからこそ、考えている。

 誰もが有する平等な権利。それを、同じ権利を持つ人間が侵害すること。改めて考えて、こうやって文章にしてみると、なんだかすごく歪んでいるように感じた。良くないことだと思っていたけれど、純粋に不思議だと思う。どうしてこんな事になるのだろう、と。

 人の権利とは、何だろう。

 むしろ、人とは何だろう。

 世界中には色んな人が生きている。人種も民族も様々な、考えも様々な人が、同じ世界で生きている。

 他人のことを思いやりなさい、と今まで沢山の人に言われてきた。その通りだと思う。でも僕は今、大人に言われたからではなく、自分から、考えている。誰かのために考えたいと思ったから、考えている。

 これこそ、何より大切な気がする。

 誰かに言われたから、それが何となく大切そうに思えるから考えるのも、それは悪くはないと思う。でも、そこに自主性が加わるだけで、こんなにも人は変われるのだ。僕が、自分の意志で考えて変わったように。より深く、自分のことのように誰かを思えているように。

 考えていたい。僕のように、みんなも考えて欲しい。僕が気づけたのだから、みんなだって気づけるはずだ。どうか、一人でも多く気づいて欲しい。

 僕に出来ることは多くはないけれど、こうして考えられる。それを発信できる。小さな事でも、いつか大きくなるように。誰かを変えられるように。

 人の権利とは、何だろう。

 むしろ、人とは何だろう。

 そう思ったから、僕は誰かを想っている。

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― 新着の感想 ―
[一言] 依頼、ですか。。。 消される前に読めて良かったです(笑) なんだかんだ言って受け止め方は人それぞれですしね。 いい文章をありがとうございます(*^▽^*)
[一言] んーーー。 深いですね。 あたしは、いろんなことを考える能力が欠如しちゃってるのでなんとも……言えないのですが。 でもね。やっぱり考えたいと思うのと、考えさせられる(強制的に)とは違うものが…
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