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魔法使いの心得  作者: 鹿の子
ジンジャー・ペンの物語
8/25

8・忘れ物①

「あれ?」


 ジンジャーの潤んだ瞳に、廊下の出窓に置かれた一冊の本が映った。 

「……え、うそ。これ、絶版になっている、薬草学の本だぁ」

 ジンジャーの目が輝く。

「本物が見たいなら、中央図書館に行かないと、ダメって聞いていたけど」

 学校の図書館には、本を映像化した映像本しか置いていなかった。

 それは本屋でも似たような状況で、紙を媒体にした本の取扱数は多いとは言えず、古いものとなると、映像本しかないのが現状だった。

 勿論、紙でも映像でも本の内容は同じなわけだから、ジンジャーにとってこの本は「既に読んだ本」ではあったのだが、紙でできたこの本との対面は初めてなわけで。


 ジンジャーは泣きそうになったことも忘れ、本をそっと手に取ると、そのままストンと廊下にしゃがみ込んだ。

 手の平に感じる柔らかくなった紙の感触を楽しみながら、表紙を捲る。


 すると。


 ふわりと、古書特有の埃っぽい香りとともに、「拾った方は、下記住所まで」の文字が、飛び出してきた。 さらに文字でだけでなく、地図の映像も浮きあがり、持ち主の住所と思われる地点で赤く点滅し始めたのだ。


 本には、所有の魔法がかかっていた。


 所有の魔法は、魔法の中でも簡単なものだ。 魔法の種類を、時に「軽い」・「重い」と表現することがあるのだが、それで言えばこれは軽い魔法だ。


 ジンジャーも小さなころ、着る服にその魔法がかけられたと聞いている。 ちょこまかと動き、年中迷子だったジンジャーへの、両親の苦肉の策だったというわけだ。


 そこではじめて、ジンジャーは、はっとした。


 魔法をかけるってことは、本人にとり大切なものだからだ。 その大切な本が、こんなところに置きっぱなしになっているのは変だ。

 しかも、この本は既に絶版だ。 失ったからといって、そうやすやすと手に入れることはできないのだ。


 ……でも。


 魔法がかけてあるからこそ、置きっぱなしにしても安心している、とか?

 でも。

 どうして、こんな窓辺に?


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