5・土の属性①
翌朝、ジンジャーが学校の正門をくぐると、待ち構えていたように、イフティが近づいてきた。
「おはよう、ジンジャー。昨日さ、俺たちが消えた後、倒れたんだって?」
「……おはよう。さすがに、早いわね。情報が」
イフティは、ニヤニヤしている。ブラッド家は、うわさ好きだ。なので、いろんな情報がいち早く彼のもとにも届くのだ。
「あれかな。やっぱり、十六歳で儀式っていうのは、結構きついもんなのかな。俺は八歳だったけどね」
イフティがケラケラと笑う。
「儀式には、個人差があるからね」
いつのまにかやって来ていたコチが、ジンジャーとイフティに加わる。 きっとお得意の、風にでも乗って来たのだろう。
「体は大丈夫?」
背の高いコチが、ジンジャーの顔を覗き込んできた。
「心配掛けてごめんね。昨日は、ありがとう」
ジンジャーは、コチにお礼を言った。
「あれ、俺には礼はなしかよ、ジンジャー」
キャンキャンとイフティが吠える。
「……ありがとう。イフティ」
「ふふ。それでいいんだよ」
ジンジャーの言葉を聞き、イフティは満足げな笑みを浮かべた。 そんな様子に、ジンジャーとコチは苦笑する。
「しっかしさぁ、ラウ家の奴と儀式の場で一緒に立つとは思わなかったなぁ」
イフティが伸びをしながら言う。 ラウ家とは、土の属性のアレックスのことだ。
そういえば、儀式の最中も、彼の登場による気持ちの揺れを参列者から感じたことを、ジンジャーは思い出した。そして、今朝の朝食の場でも――。
「『ラウ家は、危険』だって、言いたいのかい?」
コチが静かに問う。
「なんだよ。そんな風に訊いてくんなよ。だってさ、そうだろ? ラウ家云々の前に、『土の属性』ってだけでも、ちょっとあれなんだし」
もごもごとイフティが言う。
「え、なに? ちょっとあれ、ってどういう意味?」
真っ直ぐに訊いてくるジンジャーに向い、イフティは軽く舌打ちすると「君んとこはさ、ほんと、疎いよね」と言った。