6・ハナつまみ者⑥
数日前と同じように、アレックスは学年主任のラビド先生の前に立っていた。
「あなたの学年戻しについての協議がまとまりました」
意外な早さに、アレックスは内心驚いた。
「あなたには、ジンジャー・ペンの実践魔法の指導役をしてもらいます」
学年主任の先生は、アレックスの顔をじっと見た。
「あなたの助けにより、ジンジャー・ペンが魔法使いの最初の一歩を踏み出したと報告がありました」
アレックスはごくりと唾を飲んだ。 自分は誰にも話していない。ってことは、あのおせっかい娘ジンジャー・ペンが報告を(本人は「報告」なんて意識はないのだろうが)したのだろう。
アレックスの心を読んだかのように、先生は大きく頷いた。
「とても興味深いこととして、私達は受け止めています。ジンジャーのことは、みな心配していましたから。彼女が魔法を使えるようになったのは、恐らく、祝福を授受したことが関係しているだろうと推測するしかありません」
先生はそこで言葉を切ると、笑った。
「全てのことには、意味があるのだと私は思いました」
あなたが、ジンジャーに祝福を授けたこと。
ジンジャーが、あなたに本を返しに行ったこと。
ジンジャーが、あたなによって魔法使いの一歩を踏み出したこと。
そして、あなたが、そのジンジャーにより、学年を戻す機会を得たこと。
先生の言葉にアレックスは耳を傾けながら、先生の後ろにある窓の外の景色を眺めた。
祖母の昔話には、必ずと言っていいほど、この学校での生活が出てきた。 とても楽しい時間だったと。 みんなで一緒に勉強して、時には悪戯をして。 夕日を眺めながら、明日はどんなことをしようかと話したものだと。
今のアレックスには、そんな思い出は一つもない。
「ジンジャー・ペンがどんな状態になったら、ぼくは学年に戻れるのですか?」
アレックスの言葉に、先生は首を振った。
「それは、わかりません。彼女がどうなるのか、どこまでこられるのか、わからないからです」
「ってことは、つまり?」
「ええ。そうですね。あなたが、彼女の指南役としてのどう働くかを見て、学年戻しの判断はします。勿論、ジンジャーの魔法が上達するのにはこしたことはありませんが」
先生はそう言うと「さてあなたはどうしますかアレックス」と、にこりと笑った。




