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魔法使いの心得  作者: 鹿の子
ジンジャー・ペンの物語
12/25

12・本を届けに③

「あんた、面倒くさい奴だな」

「悪かったわね」

 びんびんにアレックスからの冷たい視線を感じながらも、ジンジャーは本を離さなかった。

「それ、所有の魔法がかかっているって、知っているよね」

「知っているわよ。だから、返しに来れたんでしょう」

「だったら、所有者以外の人物が、不正に長時間所持すると罰則があるってことも知っているよね」


 アレックスの言葉に、ジンジャーは胸から本を離した。 途端に、アレックスの口角がいじわるに上がる。


「不正じゃないわ。正当な理由があるもの。本を大事にしない人が所有するほうが不正よ」

「ほんと、わかってないよなぁ。上っ面ばかりで」

「はぁ? なによ、それ」

「その本だけど、ぼくが、置き忘れたんじゃないよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「本が、勝手に? あなたが置き忘れたんじゃなくて?」

「そうだよ」

「あなたは、この本が勝手に、あの出窓に行ったって言いたいの?」

「出窓にいたんだ」

「私、そう言わなかったったかしら」

「あんなところ、としか聞いてなかった」

 ジンジャーは、じっとアレックスを見つめた。

「あなた、熱でもあるんじゃないの」

「言いたいこと、言うじゃない」

 ジンジャーは、再びアレックスを見つめた。

「あなた、本が、勝手にあの出窓に行ったって、本気で言っているの?」

「信じる?」

 ジンジャーは、本を見下ろした。

「それって、この本に()()()()()がかかっているってこと?」

「ってことになるよね」

 つまり、この本は考えを持ち、それを行動として移せる力もあるということになる。

「そんなことしちゃ、ダメよ。物に、そんな魔法をかけちゃ」

 誰に聞こえる筈もないのに、ジンジャーはささやくようにアレックスに訴えた。


 魔法には、いくつかの約束ごとがあった。

 物に意思を持たせることは、建前上はアウトだが見逃されることも多い。けれど、物が意思のままに行動までできる魔法をかけてしまうのは、明らかに違反になる。 もし、そんなことをしたら、人々の日々の生活が混乱に陥るのは明らかだからだ。


「ぼくがかけたわけじゃないし、ダメだってこともわかっているよ。でも、解けないんだからしかたないだろう。こっちだって、困っているんだ。国にも、学校にもこの本については報告済みだよ。そして、残念ながら、今のところ解決方法はなしなわけ」

 アレックスがジンジャーをちらりと見た。

「なんなら、あんたが解いてくれてもいいんだけど」

 


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