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幸せな未来へ

ラストです

 時は前日に戻る。


「はぁ、はぁ……産まれ……私の赤ちゃん……はぁ……」

「クレア様……おめでとうございます」


「はぁ、はぁ……私の赤ちゃん。早く……顔を見させて」

「はい……あの……」


「早くして、私とフェルトの赤ちゃんよ」

「わ……わかりました」



「クレア様、可愛い女児です」

「女の子ね〜きっと私達に似て……え?」



 クレアは周囲を見渡す。誰一人として視線を合わせない。

「……嘘……どうして……どうして黒髪なのよ」


 クレアは震える。不貞の証拠でしかない我が子……どうしたらいい……頭の中は真っ白になったのだった。


 使用人からの視線と小さく聞こえるアルシュベルト殿下と言う名前にクレアは青褪めるのだった。


「パパを……急いで、パパを早く呼びなさい」





 元々、クレアはアルシュベルトとの婚約と結婚を望んでいた。しかし、兄のフェルトとの婚約する事になった。その際に父である宰相は娘可愛さに嘘をついたのだった。


 本当は2人の王子はクレアとの婚約を拒否していた。しかし父である宰相は2人とも娘との婚約を望んでおり、兄フェルトの強い希望でフェルトの婚約者になってしまったと伝えたのだ。

 宰相としては、家の今後を考えると第一王子である兄フェルトとの結婚の方が良いと判断したのだった。その為クレアはフェルト王子と婚約・結婚したのだった。


 結婚して1年が過ぎた頃、クレアに悪魔の囁きをする男が現れたのだった。


 それが2人の王子の父である国王だ。フェルトとの夫婦関係に味気無さを感じていたクレアは国王の落ち着いた大人の対応と禁断の関係、そして求められる喜びを感じるのであった。



 その結果妊娠したのだ。


 可能性がある男は2人、生まれるまではわからない。クレアは自分の色である事を望んだ。国王との秘密の逢瀬も続く、国王は避妊薬を飲んでいると伝えていた為に2人はこの禁断の関係を安心し楽しんだ。



 ――――パパ……パパ、早く来て。フェルトよりも早く来てよ……。どうしたらいいの……私はどうなるのよ。この子はフェルトの子ではない。国王アランの子よ、同じ黒髪だわ。そうなると私は……ん? 待って……私は側妃になれるの? 国王アランはまだ若いわ。この先、10年、20年先まで王子の妃でいるよりも側妃の方が公務をしなくていいわ。国王は……アランは私を側妃にと望んでくれるわよね。あんなに愛しあい、愛を伝えあったのだから。



 コンコンコン。


「クレア様……あの……」

「何よ、パパが来たの? 早く中に……あっ……フェルト……」



 ◇◇◇◇


 クレアの父である宰相から報告を受けた後の国王アランの私室では。


「マズい……何故……黒髪なのだ。せめてクレアと同じ髪色であったなら。どうしたらいい……このままでは王妃に……何と説明したらいいのか」



 宰相の娘クレアと初めて会った時の事を思い出す。

 フェルトとの婚約が決まった時であった。16歳の割に大人びた身体の女性であった。頭の先から爪先まで品定めをするかの様に見たのを覚えている。

 フェルトとの婚約は不服であったのか時折悲しそうな瞳をしていた。2年の婚約期間、その後フェルトとクレアは結婚した。婚約者時代から時折、茶を飲みながら話してはいたが、結婚し同じ屋敷で暮らすようになると自然と距離は近くなる。気がつくと互いの身体を求める関係へとなっていた。王妃も美しい女性だった。しかし、若く意のままに尽くすクレアが可愛らしく愛しく思っていた。


 彼女が懐妊した。自分は安心していた避妊薬をのんでいた為、フェルトとの子だと思っていた。しかし、産まれたのは黒髪の女児だと言う報告。自分の立場が揺らぐのがわかった。

 クレアはどう思っているだろうか自分を助け出してくれると思っているだろう。私は国王だ……国王と家臣らに呼ばせていた。しかし……私は……王妃の夫で立場は王配だ。


 ここにきて国王と呼ばせていたのが仇となる。クレアは自分が王族であると勘違いしているのではないか……それとも男として自分を見ていたのか不安だけが残った。



「はぁ、どうしたらいいのか」


 その日、国王アランは眠れぬ夜を過ごしたのだった。



 ◇◇◇◇


 同日の王妃。


「はぁ、早く戻る事にして良かった。朝には城に戻れそうね」


 夜通し王都へと戻る馬車の中。早馬での報告に目を通す王妃であった。その内容を向かいに座る男に見せる。

 男は手紙を受け取り、王妃の隣へと座り内容に目を通す。




「王妃……兄がすいません」


「いや……わかっていた。国王……アランはクレアと関係を持っていると」

「兄をどうするのですか?」



「困ったな、このままではアルシュベルトに疑いがかかる。まさか、息子の嫁と関係を持っているとは皆思わないだろう」


 公務にて国外へ出ていた王妃エリザベスと国王アランの弟のユーリは馬車で話し合いをする。


「はぁ、国王はお前がいないと何も出来ぬ男だ。いっそのことお前が王配なら問題はなかっただろうな」


「そうですか。王妃の中では私の評価は悪くないようで嬉しく思います」


「お前がクレアの子の父親ではないよな?」

「あはは、王妃。面白い事を言う。私は……私が仕えているのはこの国の王でエリザベス様です。兄上には病と称して退いてもらいましょう。私が支えますから、何も変わらないですよ。そして時期を見て末姫に託しましょう」


「はぁ、王族とは難儀だ……私は疲れた」


「この国の為、その為に貴方は愛する男を手放し、兄と結婚した……まぁ、最初は私に来ていた話しでしたがね。城まではまだ遠いですので少し休んでください」



「あぁ、すまない」


 王妃はユーリの肩にもたれ掛かり眠るのだった。

 スヤスヤと眠る王妃エリザベスの顔を眺め、長い金色の髪に口付けを落とすユーリ。

「エリザ……これから忙しくなりますよ。しっかり休んでください」


 ――エリザベス王妃……いや愛しいエリザ。貴方は秘密を抱え過ぎです。壊れる前に末姫へと国を任せましょうね。彼女なら大丈夫、私達の子ですから。しかし兄もあのような女と浮気するなど。兄は本当に馬鹿だ。執務室に避妊薬など置いておくわけないだろ。ただの胃薬だと気付かないなんて。さぁ、賢い王妃の息子達はどうするのか楽しみだ。



 王都に向け、馬車は急ぎ向かうのであった。





「さて、準備は大丈夫だね」

「兄さん、大丈夫?」


「あぁ、決めたよ。大丈夫だ」


 2人は王城へと向かう。



 城門では護衛隊がフェルトとアルシュベルトの姿を見て大騒ぎとなる。


「兄弟で家出する事だってあるよ。ねぇ、兄さん」

「あぁ、兄弟だからな」



 会議室に集まる国王の側近とフェルト、アルシュベルト、そこに勢いよく入室するのは王妃であった。


「母上」「母さん」

「王妃……」


「嫌な予感がして、切り上げてきた。報告は受けている。私も話を聞く権利がある。そうだろう国王」



 話し合いは静かに始まる。状況の整理から始まる。


 1、フェルトとクレアは婚姻関係を結んでいる。

 2、クレアは懐妊し、先日女児を出産した。

 3、髪色が黒であった。

 4、この中で黒髪はアルシュベルトと国王、そしてフェルトと王妃は金髪であった。



「で、宰相。どう判断したのだ?」


「アルシュベルト殿下の御子であるかと、以前より娘は貴殿を慕っていました。その想いに応えたのではないかと。娘はこのままだと、国民からどんな目で見られるか。このままフェルト殿下の妻として子を認知するか、離縁しアルシュベルト殿下が責任を問うのがいいかと。私もクレアの父です。娘には幸せになってもらいたい」


「そうか……私はクレアと夫婦としてこのまま結婚生活は無理だ。産まれた子も自分の子だと認めない」


「では……アルシュベルト殿下がクレアとはどの様な関係ですかな。うちの娘とは想いあって子を――」


「おい、バカな事を言うな。私には愛する婚約者がいる。クレアとはその様な関係にはなっていない」



 宰相は顔を赤らめ怒る。

「では、娘は一体誰の子を産んだのですか? アルシュベルト殿下と同じ黒髪の子ですぞ」


「だから、私の子でもない。やってないのだから子はできない。忘れていないか? 私の出産時を」


「は? アルシュベルト殿下の出産時?」

「そうだ。私はクレアの産んだ子が自分の子ではない事を証明できる」


「アルシュベルト……お前……」

「父上どうしたのですか? 随分と顔色が悪い」


「おい、例の物を持て」

「はい、フェルト殿下」


 急ぎ護衛隊は謁見の間に準備する。


「フェルト殿下、何をする気ですか?」

「宰相。まぁ、慌てるな」


「しかし、何なんですか! 湯を運び何を?」



「フェルト殿下、出来ました」

「ありがとう。さて、アル……すまないな」


「兄さん大丈夫だよ」


「アル……お前……」

 不安そうな眼差しでアルシュベルトを見つめる王妃であった。


「母さん……大丈夫だ」


 アルシュベルトは上着を脱ぐ、そして湯の中に頭を入れ擦る。桶の湯は黒く染まる。


「アルシュベルト殿下……あ……思い出した……殿下は産まれた時」


 宰相は思い出したのだ。あの日、アルシュベルトが産まれた日の事を。



 ◇◇◇◇


『おめでとうございます。可愛らしい男の子ですね』


『私と同じ黒髪にしろ。私だけ王族ではない様に見えるだろ』

『王配……しかし……』

『宰相……国王と呼べと言っているではないか』

『国王……アルシュベルト殿下を黒髪に……国王、私の見間違いでした。国王と同じ、アルシュベルト殿下は黒髪でした』


『そうだ、私と同じ黒髪だな』



 髪をひたすら隠し、1歳を迎える頃には毎日毛染めをしていた。


 ――アルシュベルト殿下は金色……クレア……一体誰の子を産んだのだ?



「アル、タオルだ」

「ありがとう。兄さん」


「思い出したかな? 私の産まれた時の髪色はこれだよ」


 黒く染まるタオルを取る。そこには兄と母と同じ金の髪が姿を現したのだった。


 顔色の悪い王妃の顔を見て、ニコリと笑うアルシュベルト。

「母さんと兄さんと同じ金色の髪だよ」


「そうだ……私の可愛い息子。私の……子だ」

 王妃は懐かしむ、幼い頃、一緒に悪戯が成功した時の愛しい幼馴染……アイツの顔と同じであったから。


 王妃とて不貞が明らかになる訳にはいかなかった。


 ユリアナ、アルシュベルトありがとう。


 心からそう思う王妃であった。


「さて、黒髪がまだいるが……クレアに確認しないとな。国王よ……何か言いたい事は?」


 王妃は静かに話す。


「違う……クレアから誘ってきたのだ。私は……王配で……私は……王妃を……」


「産後だがクレアをここに……いや私らから向かおうか。国王は……息子の嫁であるクレアと関係を持った様だ……国王、フェルト、アルシュベルト……宰相も共に」



 

 クレアの休む部屋へと到着する。



「さて、クレア。出産大変だったろう。よく頑張った」

「王妃様……私……」


「何も言うな。私からクレアに確認する。正直に答えよ」



 クレアの休む私室に国王夫婦とフェルト、アルシュベルト、宰相が尋ねる。


「この国の王妃として問う。その子の父はアランであるか? 他に通じた男はいるのか?」


「いいえ、国王様だけです」


「1つ間違いを訂正しよう。アランは王配だ」

「え……それじゃあ」


「クレアは側妃にはなれない。その子も王位継承権はない」

「……嘘……嘘……それじゃあ。私は……」


 王妃は冷静に伝える。


「クレアは王族である私の息子フェルトと結婚したが、国王と名乗る王配と不貞の末に子を妊娠し出産した。王族の血は子には流れていない。私がこの国の王族だから」



 ガタガタと震えるクレアは父である宰相を見るも目を逸らされたのだった。

「パパ……パパ……私はどうなるの?」




 ガタガタと震えアランを見つめるクレア。


「クレア……貴方はアランとどうしたい? 子はどうしたい? 側妃にはなれないのは確かだ」



「……側妃になれないなら。子供はいらない。フェルトの妻でいる。フェルト、ごめんなさい。貴方を愛してるの」


 何も答えないフェルト。


「…………そう、子はいらぬと。宰相……お前の娘は子より自分の地位を選んだ。その子を修道院に預けるかお前の養子にしろ。どちらにせよ、娘とは縁を切るが形式上だ。クレアは離宮で一生を過ごしてもらう。肩書きはフェルトの妻のままだ。子とクレアの面会は許さない」


「はい、その子を……その子は私達の子として養子にむかえます」


「え……パパ、私は離宮に? 茶会やドレスも……」

「クレア、お前はバカだ。自分の事しか考えてないのか? 茶会にドレス? お前が産んだ子を自分で捨てたのだぞ。もう……娘ではない」


「さて。アラン……お前はどうしたい? クレアの側にいる事を望むか?」


「……私は……エリザベス」


「アラン、私は今まで他の女と通じようが目を瞑ってきた。流石に息子の嫁はダメだ。そなたはクレアをどうしたかったのだ?」


 王妃エリザベスは悲しそうに夫アランを見つめる。


「私は……私は……」


 答えの出ないアランに呆れた。そして見限った。


「わかった。クレアは出産時に子供と共に命を落としたとする。クレアは王家が用意する場所で平民として暮らしていけ。アランはクレアを愛しているのだろう? 私とフェルトの目を盗んでは逢瀬を重ねていたのだ。どこかのタイミングで事故死してもらう。そこで2人がどう生きようが知らぬ。私は疲れた。少し休む」


「エリザベス……私は君を愛していた」

「愛しているなら他の女を抱くな」


「すまなかった」


「お前は弟に仕事を任せきりにしていた。息子の嫁に手を出す夫は、私は必要ない」



 その後、国民にはクレアが出産の際に子と共に命を落としたと報告され国民は悲しみに包まれる。さらに数ヶ月後にはアランの乗った馬車が野党に襲われ怪我をし、数日後に亡くなったとの知らせに国民は悲しみのどん底にいたのだが、明るい話題で街は盛り上がる。


 それはアルシュベルトとユリアナが結婚するとの報告と共にユリアナの懐妊が知らされたからだ。



「母さん……これで少しは国が明るくなるでしょ」

「アル……すまない。式は子供が産まれたら盛大に行う」


「いいんだ。家族だけで小さな教会でしよう。ユリアの希望だ」


「ユリアナには救われてばかりだ」

「母さん……大丈夫。母さんも幸せになってもいいんだよ」


「ん? 私か?」

「ユリアナなら伝言だよ『灯台下暗し』僕には意味はわからないが母さんなら気付くのかもね。僕は帰るね」


「おい、城に住む気はないのか?」

「僕とユリアナにはあの家が全てだよ。護衛も問題ないよ。いい騎士を見つけたからね」


「そうか。ユリアナに無理はするなと伝えて」

「わかったよ」




「王妃様……寂しいですか?」

「あぁ、アルは結婚し、フェルトもいずれ城を出るだろう。娘のクリスタが戻るのは来年だ」


「クリスタ王女が戻られたら賑やかになりますよ」

「そうだな。クリスタの連れてくる男がクリスタだけを愛してくれるといい」


「その点は大丈夫ですよ。何せ先祖は竜族の様です。番と認めたら死ぬまで愛するのが一族だと言ってました」


「お前は既に会っているのか。そうか……それなら安心だ。お前も結婚しても良いのだぞ。ずっと私の補佐をしている。何か望みはないのか?」


「そうですね。ずっと王妃の側に置いて欲しいです」

「あはは、ずっといるだろ?」


「王妃……鈍いですね」


「は?」

「貴方は国の為に頑張ってきました。ずっと見ていました。愛する男を手放し、どうしようもない兄と結婚した。この先を案じ貴方は後継者として国を治める者として選択し……いや選別しました。どの種を畑に植え育てるのかをね。フェルトとクリスタは私の子でしょ」



「…………髪色は黒だ」

「そうですね。貴方は私が愛します。亡くなった幼馴染の分まで王妃ではなく女性としてね。だから私に甘えて、私に我儘を言って……だから私の手を取って」



「考えておく。今はそれでいいか?」

「勿論です」



 ◇◇◇◇


「兄さん。今日も泊まるの?」

「そうだ。2人の邪魔はしていない」


「そうだけどさ〜」

「お前とユリアナを見ていると幸せな気持ちになれる。正直羨ましい」


「兄さん……これから夫婦の時間なの。少しずつ膨らむユリアナのお腹にクリームを塗ってマッサージするの。邪魔だよ」


「アル……」

「はいはい、フェイ。君には僕がマッサージしてあげるから下に行くよ」


「ラルフ、兄さんを捕まえていてね。この前なんかラルフが不在だからと言って一緒に寝たいと駄々を捏ねたんだ。城に帰ればいいのにさ」


「ほぉ、フェイ。お二人の邪魔はいけませんね」

「だってさ……」


「うふふ、フェルト殿下……貴方達と同じ様な2人を探せばいいのよ。ラルフは目星をつけているのでしょう?」


「……魔女殿には敵わないな……まぁ、少し先の話を私達もするから行くよ」



「ユリア……僕にも教えてね。さあ、お風呂にいくよ。じゃ、兄さん、ラルフおやすみ〜」



 

 とある晴れた日に教会で1組の結婚式が行われた。


 美しい花嫁のお腹は膨らみ、それを気遣い優しい笑みを浮かべる新郎。


 本日、アルシュベルトとユリアナの結婚式だ。王妃、フェルト、ラルフも参加し素敵な結婚式を終えたのだった。


 

 その後、ユリアナは双子の男児を産み、アルシュベルトの妹クリスタは王配となる男を連れて国へと戻る。


 10年後にクリスタは26歳で王妃となる。フェルトはユリアナ達の結婚の翌年に再婚した。

 

 フェルトは自分達と同じ境遇の令嬢を見つけたのだ。辺境伯の娘であり、結果的に国の為の結婚となったが仲睦まじく過ごしている。フェルトは現在34歳となり3人の子供の父親となった。夫婦生活も問題なく時折ラルフとは酒を飲みかわす関係だ。



「ねぇ……ラルフ。考えてくれた?」

 




「約束しているから」

「約束?」

「そうだ……だから一緒に辺境へは行けない。すまないな」


 来月にはフェルトは辺境へと向かう事になった。フェルトの妻で現在辺境伯を治める兄がケガで身体が不自由になった。その為、兄のサポートをするために妻は辺境へ戻るよう要請が来たのだ。フェルトはラルフに辺境へと一緒に行かないかと誘いを掛けていた。

 

「もしかして……ユリアナ?」

「さぁ?」

「そっか、残念だよ」

「フェイ、君は私がいなくても大丈夫だろ」

「遊びに来てよ」

「わかった」



 ユリアナとアルシュベルトは仲睦まじく過ごし、双子の誕生から2年後に女児を産んだ。


 アルシュベルトは女児を産んだ後のユリアナに愛の鎖を解く様に伝える。ユリアナは拒否する。しかしアルシュベルトはユリアナに伝える。


「僕に何かあったら君もいなくなる。子供たちが可哀想だろ。君だけでも子供たちの成長を見守っていってほしい」

「アル?」


「鎖がなくても僕には君だけだし、心配はいらないよ」

「そう? それなら鎖は解かないわ。一緒にこの先も子供たちの成長を見て行くわよ」


「ユリア……」

「それなら、一緒にカードを1枚引きましょう」

「わかった。良くないカードが出たら正直に言ってよ。そして鎖を解く。いいね」

「わかったわ」

 

 ユリアナはカードをテーブルに広げる。

「さぁ、アル1枚引いて。私はこれにするわ」


「僕はこれにするね」



「ユリア? このカードは?」

「アルのはね、幸せ、幸福、誕生」


「ユリア?」

「私のカードはコレ。母性よ。さてアル、どう読み取る?」

「え? まさか……」


 ユリアナはカードを更に1枚引く。

「次は男の子ね」

「ユリア、愛している。ずっと一緒にいようね」


 翌年に元気な男の子を産んだユリアナは家族仲良く幸せに暮らしましたとさ。



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