4『ブラズレ』
「…………」
左端に座る俺に全員の視線が集まり、隣に座るイエローが聞いてきた。
「ハジメはどうなのさ?」
「……イエロー、ちょっと待て。今、お前らチンポジって言ってた気がするんだが……」
「そうだけど、それがどうしたの??」
どうやらこの場において、おかしいのは俺だけのようだ。
まずい……。何か言わなくては……。
チンポジ……チンポジ……チンポジ……。ハッ!
「そうだな、確かにこの男性主人公が止まってしまったのは納得いく。言うなれば、N◯Kのど自慢で鐘一つとなった参加者。まず、初期位置が悪い……鬱蒼とした森の中は定番だが、獣が襲ってくるのはありきたり過ぎるし、助けに来た相手に一目惚れするのも単純脳としか言いようがない。以下は省略するが……。要するに俺はこの男の一秒後が気にならん」
「…………」
まずい……。気まず過ぎる……。
今度は俺が全員を沈黙にさせてしまった。
何なんだこのアウェイ感……ならばッ!
俺はゆっくりと目を閉じ……腕を組んだ。
そして。
「俺も……自分のチンポジの方が気になったな」
これは完全勝利を確信すると同時に完全なる敗北宣言である――。
恐らく……いや、間違いなく。使い方が俺だけ間違っている事は火を見るよりも明らか――ッ。
暗闇の先では女性陣が俺をゴミムシを見るような目をしている事は明白。
むしろそのイメージしか湧かん!
だが……。ここに愛はあった。
「ピンクは! ……思うのです。使者様はあえて汚れ役を買って出て、選定の文言を変えた方が良いって、言いたいんじゃないかって!」
「……ぴえん」
俺はぴえんの言葉にぴえんした。
けれども、そんなひと時さえ……。
「あぁ~盛り上がってるところ悪いんだけど……。『チンニングポジション』……要するに引き上げ位置の略で、手の施しようが無いってことなんだよね……」
――――勘違いであればぶち壊しとなる。
そして、代表してムラサキによる授業が始まった。
三十代に片足を突っ込んだクールビューティームラサキに先生をして貰えるのは、何かのご褒美だろうか……。
ホワイトボードの前に凛々しく立つムラサキ先生……。
俺は平常心を保ちながら、真剣に彼女の胸元を直視する。
ここに来てからというもの……食欲、性欲、睡眠欲の三大欲求が無くなってしまったが俺の身体は素直そのもの。
「チンニングポジションの他には、『ブラズレ』『未回収』があり……サイショさんでしたかしら? チンポジではなくて、ポジだけにしてあげましょうか?」
「自分税所一はムラサキ先生の意のままに」
「ムラサキ様――――ッ、この者」
「ホワイト落ち着け。では、サイショさん『ブラズレ』が何か分かりますよね? それと……間違った時、どうなるのかも」
痴〇ものにも精通している俺には解る。
この後の展開はご褒美ではなく、喪失――。
俺のアイデンティティが失われてしまう……。
だからこそ、一切のボケは出来ない!
「ブラインドのズレ……でしょうか先生?」
「……その意味は?」
「ブラインド……つまり『目で見えない』または『目隠し』するシーンのズレ。簡単にいうと、シーンとシーンの狭間の取り方ですかね。例えば……ストーリーが盛り上がってもいないのに、見せ場を出し惜しみすれば飽きますよね?」
「……よろしい。未回収は読んでそのまま『隠しフラグ』の回収となる……。では、二人目に進もうとしよう」
ムラサキ先生は心なしか……少し気落ちしているように見えた。
そうなのだ……俺は痴〇にすら平気で鼻をへし折る、ドS属性を持ち合わせた男なのだ。
この後、満場一致の『チンポジ』が二百六十五人続き――。
初めて『ブラズレ』と……ムラサキとホワイトの二人が声をあげた。