3『異世界転生転移の管理人』
「どうすんだよ、こんな数……」
アイドル顔負けの可愛い系イケメンが膝から崩れ落ちる。
いちいち絵になる奴だなと思いつつ……。
「まずは自己紹介を始めよう! 俺の名前は税所一、異世界への転生転移をこよなく愛する者だ!」
現状を何一つ飲み込めていない俺は自己紹介と称して調査する事にした。
すると早速……。
「サイショハジメ? 数字にすると……11? やはり、あななななたは『テン』が探しに行った十一人目なのですね?!」
「何を言ってるのよグリーン! この方は神様が送り込んだ使者様よ!」
「私もピンクの意見に賛同します」
「いやいや、ムラサキ。グリーンが慌て出したら50%で当たるぞ? なあ、ホワイトもそう思うだろ?」
「自分ホワイトはムラサキ様の意のままに」
「ハジメ、俺の事は『ブルー』と呼んでくれ」
「相変わらずオレンジは馬鹿だねぇ、そんな確率になんの信憑性があるのさ。アタイはただの行き損ないだと思うね」
「はあ? イエローてめぇ今何つった? おい、レッドもそんな所に座ってないで何とか言えよ」
「やだよーオレンジぃぃぃ、俺こんな数さばき切れないよぉぉぉぉ」
こいつらまとまりねぇ……。
過度な情報量に困惑しつつも疑問に思う。
……何で髪の毛の色で名前呼んでんだ? わざわざ名札にまで自分の色を書いて……。
俺は最も気になったことを聞くことにした。
「ところで、九人目はどうしたんだ??」
「――――――――――――」
騒いでいた八人は急に静かになった。
張りつめた空気は呼吸すらを忘れさせるほどだ。
何か言わないと……。
俺の焦りに気づいたのかイエローが――。
「九人目はいナインだよね~~なんつって」
てへぺろをしながら、俺に言った。そして……。
「まあまあお兄さん、そんなことよりも『異世界転生転移管理事務局』へようこそ!」
イエローが話すのに合わせて八人は集まり……。
「税所一さん、あなたの入局を我々八人――歓迎いたします。これよりは異世界転生転移の管理人として隠しフラグを回収し、主人公たちを正規ルートに導いていきましょう」
イエローが言い終わると、カラー戦隊のように決めポーズをした。
要するに俺は異世界案内人から『異世界転生転移の管理人』にジョブチェンジしたのだ。
そして、唯一俺が異世界への行き損ないだと気づいているイエローが耳打ちして教えてくれた。
誰よりも暇で暇でしょうがない神が異世界を作ったこと――、止まったままの転生転移者の時間を遡り正規ルートに導くこと――、そして……転生転移した彼ら彼女らの異世界生活を終わらせること。
「まあ、要するに神様は面白い異世界生活を観たいってことだよね! じゃあ、みんな。はっじめるよ~~ん! 特大プレートの前に集まって~~」
戦隊シリーズならレッドがリーダーだが、ここではイエローがリーダー的存在なのだろう。
ムラサキがパンパンと手を鳴らすと、イスとテーブルが特大プレートの前に現れた。
「では、これより終了組から選定していきます」
止まったままの転生転移者の画面下には『REC』の文字と録画時間が表示されている。
それを一人ずつ見ていくわけか……。
てか……終了組って言ってなかった?
約三分足らずの一人目を見終わり……。
「チンポジ」
「チンポジね」
「チンポジ~」
「チンポジだな」
「同じく」
「私も~」
「自分も同じく」
「ポジチン」
聞き馴染みのある言葉が行き交うのだった……。