22『明けない夜』
「ほい、お待ちどうさん」
「……ありがとうございます。ふぅー、ふぅー」
何の茶葉かは分からないが、ハチミツを入れなくても甘みを感じるそれは――イエローいわく、食べ過ぎた時の消化吸収を緩やかにする効果があるという。
(ん~、久しぶりにコーヒーが飲みたい)
そんなことを思っていると、アシェリーが「ふぅ~」と――ため息をついて話し始めた。
「……父様、私。才能ないのですかね……毎日練習してるのに、全然自分の思ったようにはいかない。ちょっと上手くいったと思ったら、停滞してそれ以上にはならない……。『劣等生』って私みたいな人の事を言うのかもしれませんね」
そう言ったアシェリーは、窓の外を遠く眺めていた。
「そうだな……。『劣等生』……それの何が悪いんだ??」
「えっ?!」
アシェリーは何か言いたげだが、俺は続ける。
「まあ、ひとまず俺の話を聞け。確かにアシェリーは絵に描いたような才能はないかもしれない……だけどさ。俺はそんなお前の事を愛しく思うし、応援したいとも思う。もちろん、才能があってアシェリーが幸せなら、俺だって幸せだ。だけどさ……たぶんそこには愛がないんだよ。ホント、こんな親でごめんな……俺は心のどこかでアシェリーと自分を比較して羨む――そんな大人だ。だからこそ、劣等生と自覚したアシェリーには本当に幸せになって欲しい……」
我ながら何とも残念なことを言っていることは重々承知だが、俺がかけられる言葉はそのぐらいしかなかった。
「はぁーー。ホント、生まれる家を間違えたのかもしれませんねッ」
そう言って――寝室に戻るアシェリーは、どこか笑っているように見えたのだった。
*
気が付くと、元居た床だけ白く光る空間――チュートリアルステージだった。
「「お疲れ様ーー」」
ホワイトとムラサキが戻って来た俺らを労う。
「どう? どう? あの子どうなった?」
レッドが食い入るように特大プレートを見て言った。
「まあ今のところ、引きこもりにはなってないようですし――。前回とは違うルートを模索しているようなので『成功』じゃないでしょうか」
「「「シャアぁぁぁぁぁ!!」」」
俺を除く、男性陣は歓声をあげた。
俺もその様子を見て、少し安堵のため息を漏らす。
結局のところ、なぜ彼女の異世界生活が進み出したかは不明だが……。
アシェリーの表情には、変にこわばった感じがなく――その時々を楽しもうとしているように見えた。




