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異世界転生転移管理事務局  作者: 川井田ナツナ
第3話 彼女の異世界

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22/22

22『明けない夜』

「ほい、お待ちどうさん」

「……ありがとうございます。ふぅー、ふぅー」


 何の茶葉かは分からないが、ハチミツを入れなくても甘みを感じるそれは――イエローいわく、食べ過ぎた時の消化吸収を緩やかにする効果があるという。


(ん~、久しぶりにコーヒーが飲みたい)


 そんなことを思っていると、アシェリーが「ふぅ~」と――ため息をついて話し始めた。


「……父様、私。才能ないのですかね……毎日練習してるのに、全然自分の思ったようにはいかない。ちょっと上手くいったと思ったら、停滞してそれ以上にはならない……。『劣等生』って私みたいな人の事を言うのかもしれませんね」


 そう言ったアシェリーは、窓の外を遠く眺めていた。


「そうだな……。『劣等生』……それの何が悪いんだ??」

「えっ?!」


 アシェリーは何か言いたげだが、俺は続ける。


「まあ、ひとまず俺の話を聞け。確かにアシェリーは絵に描いたような才能はないかもしれない……だけどさ。俺はそんなお前の事を愛しく思うし、応援したいとも思う。もちろん、才能があってアシェリーが幸せなら、俺だって幸せだ。だけどさ……たぶんそこには愛がないんだよ。ホント、こんな親でごめんな……俺は心のどこかでアシェリーと自分を比較して(うらや)む――そんな大人だ。だからこそ、劣等生と自覚したアシェリーには本当に幸せになって欲しい……」


 我ながら何とも残念なことを言っていることは重々承知だが、俺がかけられる言葉はそのぐらいしかなかった。


「はぁーー。ホント、生まれる家を間違えたのかもしれませんねッ」


 そう言って――寝室に戻るアシェリーは、どこか笑っているように見えたのだった。


 *


 気が付くと、元居た床だけ白く光る空間――チュートリアルステージだった。


「「お疲れ様ーー」」


 ホワイトとムラサキが戻って来た俺らを労う。


「どう? どう? あの子どうなった?」


 レッドが食い入るように特大プレートを見て言った。


「まあ今のところ、引きこもりにはなってないようですし――。前回とは違うルートを模索しているようなので『成功』じゃないでしょうか」


「「「シャアぁぁぁぁぁ!!」」」


 俺を除く、男性陣は歓声をあげた。

 俺もその様子を見て、少し安堵のため息を漏らす。

 

 結局のところ、なぜ彼女の異世界生活が進み出したかは不明だが……。

 アシェリーの表情には、変にこわばった感じがなく――その時々を楽しもうとしているように見えた。


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