表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ヲっさんは転生先を選べない  作者: 大石とんぼ
第3話 彼女の異世界
20/20

20『プレゼント選び』

 いつも通りアシェリーとピンクを見送り、家事を済ませた。

 今日はイエローと二人で、隣町にアシェリーの誕生日プレゼントを買いに行く予定だ。

 もちろん、隣町に行く理由はアシェリーとの接触を避けるため。


「ハジメ~~まだぁ?」

「いま行く」


 それにしても、明日でこの生活が終わってしまうのも感慨深い。

 モブキャラが主人公の物語りはこれまでに何度も観てきたが、俺たちはそのモブキャラですら無くなる……。

 言うなれば、自分の性格をクローンのモブキャラに定着させるようなものだ。

 ここでの生活が終われば、俺たちはチュートリアルステージに戻り、アシェリーはコピーされた俺たちと過ごし……未来へと歩んでいく。


 本当にそれだけで、彼女の止まってしまう未来が変わるのか疑問だが……。


 そんなことをドラゴンに変身したイエローに乗りながら考えた。


「イエロー、明日で終わるんだ。安全運転で頼むぞ」

「はいはい。わかってるさ、そんなこと。……でもねハジメ、ドラゴンに法定速度はないんだよ?」


 背に乗ったことを確認したイエローは、大きく両翼を広げてニヤリとほくそ笑むのだった。


 *


「ハジメはアシェリーちゃんへの誕生日プレゼント考えてきたの?」

「もちろん、いま考えているところだ」


 隣町は露店が並び、武器やアクセサリー、魔導書なんかも売られていた。

 しかし、どの店を見てもパチモン臭い……。

 そもそも、ちゃんとした物を扱っていれば店として成り立つはず。

 だが、そんなことも言ってられない……根本的なところ、アシェリーへのプレゼントが決まらない。どれを渡しても、愛想笑いで引きつった彼女の顔が目に浮かぶ……。


「アタイはこれにしよ~~。おじさん、これちょうだい!」


 イエローは小さなポーチを手にしていた。

 クソッ、無難だが絶妙なところを攻めていやがる。

 何と言っても、魔法の先生が魔法具をプレゼントとして選ばない所が良い!

 ならば――――ッ。


「イエロー、あそこの魔法具店に入ってもいいか?」


 俺は安全策に出ることにした。



 魔法具店は杖や、魔導書、瓶に入った爬虫類など。いかにも魔法具店らしいものが揃っている。

 しかし……どれも高い。子供のアシェリーにプレゼントとして渡すにはどれも高価すぎる。

 そもそも、子供のプレゼントの相場ってどのくらいなんだ? 二千円? 三千円? ググれない異世界は不便だ。

 そんなことを思いながら、陳列されている商品を見ていると、万年筆のようなものが目についた。


「これも、魔法具なのか?」

「どれどれ? あぁこれは魔法筆だね、懐かし~~」


 無駄に体を密着して、教えてくれるイエロー。


「へぇ。魔法の杖とは何か違うのか?」

「へぇって、ちょっとはドキッとしないのさ? こんなにイイ女とデートしてるっていうのに」

「ただの買い物だろ。それで、何が違うんだ?」

「はいはい、どうせアタイはピンクみたいに妻役は務まりませんよ~~」


 めんどくせぇ……。

 どう取り繕っても角が立つもの言いだ。

 俺が思うに、イエローは承認欲求を満たしたいだけ! 惑わされるな俺!


「話を逸らすなイエロー、父親役が務まってないのは俺も一緒。それで何が違うんだ?」

「ハジメは真面目なんだか不真面目なんだか。まぁ、簡単にいうと魔法の杖がポケモンでいう所のリザードンで魔法筆がヒトカゲだね」

「ん~~つまり、弱いってことか?」

「間違ってはないね。要するに魔法の杖は進化の歴史なのさ。地面に魔法陣を描いてた時代、魔法筆で文字として魔法を使ってた時代、魔法の杖で魔法を唱えた時代、詠唱だけで魔法を使った時代、無詠唱で魔法を使う現代みたいなね。もっと言うと、骨董品だね。まぁ魔法の杖と詠唱、無詠唱が主軸となった現代に比べると……魔法を使うときの反動がゼロになるぐらいだから、能力を底上げする魔法具の方をみんな好んで使ってるね」


 そこまでの知識がありながら、なぜポーチを選んだのだと思ったが……


「……なるほど。じゃあ、これでいいっか。お手頃価格だし」

「うわぁ……プレゼントを値段で決めるとか。……ないわぁ」

「はいはい、どうせダメ夫ですよ。俺は」


 誰にも買われないのか、値下げシールが重ねて貼られ、二千五百ガエンになった魔法筆をプレゼントにすることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ