2『ボーイズ&ガールズ』
咄嗟に俺は白く光る床に伏せた。
長年、アニメやウェブ小説をみてきた恩恵とも言えよう……。
熊を見たら死んだふり、エルフを見たら耳を引っ張る、誰かの領域だと分かったら伏せろだ!
しかし……。
伏せる前に一瞬だが見えた男は二十代前半。
白いTシャツ姿で首からは見覚えのある百均で売ってる名札をぶら下げていた……。
ちょっと待てよ……人間?
ふと顔を上げると、俺の周りには人集りが出来ていた。
「おっさん、何やってんの?」
しゃがんで話しかけてきた青年はアイドル顔負けのイケメン……グループ内でのポジションは最年少の可愛い系だろうか。
「……コンタクトを探しててな」
裸眼視力両眼とも2.0だが、見つけた素ぶりで指を目に当てた。
階段から出てきたのは合計八人。
それにしても……明らかに皆、俺よりも若い……。
男女比は四対四。一人だけ三十代に片足を突っ込んだ女性がいるがそれでも……。よくて平均年齢値は二十五、六歳……。
「そんなことよりも、みんなはどうしてここに?」
俺はマウントを取ることにした。
こういう状況下では先手必勝である。相手の陣地や領域内であっても、動揺や新参者感を見せてはならない。
それに……俺の現在服装は『Yシャツにジャケット』……そして、ピッカピカに磨いた革靴!!
同年代が観れば胡散臭いコンサルタントだが、彼らにとっては『ワンステージもツーステージも上の大人ッ!』。
「もしかして……。あなたは……神様が送り込んで来た使者様なのですか??」
ぴえん系の女の子はバッと俺の両手を取り、瞳を潤ませてそんな事を言った。
黒い髪の前髪半分だけをピンクに染色した彼女は明らかにぴえん。A◯以外でお目にかかる日が来るとは……。
生きてて良かったぁ~。
そんな事を死んでいるのに思うのだった。
だからこそ、彼女の期待にはちゃんと応えなければならない……。
「私が来た!!」と。
決まった……。
一度は言ってみたかったセリフに俺は髪を掻き上げ酔いしれる。
そんな『ザ・救世主』感を出している時だった。
「……おい。……みんな。見ろよ……」
何何?? 早速、救世主様にヘルプとは困るぜボーイズ&ガールズ……。
「異世界転生転移者が……前回の100倍もいんじゃねえかよ!!」
「「えええええええええええ??!!」」
ボーイズ&ガールズの悲痛の叫び声に、俺の脳内CPUが高速演算処理を行い……。
出た答えは、俺のせい!
もちろん、俺は最年長者として。
「……な、なんだと!?」
知らないフリをした。