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この物語りのタイトルが決まらない  作者: 大石とんぼ
第3話 彼女の異世界
18/20

18『クソ有能ども、無能に感謝しろっ!』

 *


 キッチンで夕飯の支度をしていると、アシェリーが帰ってきた。


「……ただいま帰りました」

「おかえりアシェリー、学校は楽しかったか?」

「…………」


 朝の事が気に入らなかったのだろう……会話する気は無いようだ。

 気まずい雰囲気を察したのか、イエローが修行に誘う。


「アシェリーちゃんおかえりなさい、今日も魔法の勉強がんばろうね」

「……はい、よろしくお願いします。先生」


 暗い……。彼女に反骨精神というものは無いのか?!

 父親にちょっと言われたぐらいでシカトするのはまだいい! 

 だが、あの生気の無い目はなんだ? 

 本当にスローライフ目指してんのか?!


 あぁ……めんどくせぇ。


「アシェリー、一週間だ。一週間で、お前の成長が無ければ先生には帰ってもらう……」


 アシェリーは振り返り、目を見開き俺を見た……間も無くしてその目は『見返してやる』と言いたげに


「父様のバカっ!!」


 そう言って勢いよく彼女は家を飛び出すのだった。

 はぁ、ガキかよ……。


「イエロー、あとは頼んだぞ……。俺、料理苦手なんだよ」

「はいはい、任されました!」


 もちろん、アシェリーがたかだか一週間で成長するなんて毛頭思っていない。

 彼女は、よくいるチート系主人公では無いし、歩く広辞苑のようなボキャブラリーを持ち合わせているわけでもない。

 彼女は残念なことに、無意識に均衡崩壊フラグを立ててしまうフラッガーなのだ。


 それが判ってしまった以上、俺たちのする事は彼女に『余計な』フラグを立てさせないこと。

 つまり、俺たちがボーリングのガーターレーンになり、少しでも多くのピンを倒させるのだ。

 会社勤めのサラリーマンしかり、世の中にはレール無しでは、まともに働けない大人というものは一定数いる。

 世間ではそいつらの事をゴミだカスだと言うが、そんなことは俺含め、大体のやつは気づいている。

 そもそも、有能かどうかなんて無能な奴が居なければ認識する事は出来ない。

 だからこそ、クソ代表として俺は声を大にして言いたい。


「クソ有能(チート)ども、無能に感謝しろっ!」


「……ただいま、帰りました使者様……。夕食の準備手伝いましょうか?」


 一向に進まない夕食の支度に気づいた時には、ピンクが仕事から帰ってきていた。


「……よく帰ってきてくれたピンク。俺は炭の扱いだけはどうしても上手くならんのだ」


 炭火で丸コゲになった残骸の山は、俺の料理スキルが必要数に達してない現れ。

 しかし、何としてでもアシェリーの大好物である焼き鳥を完成させたい!


「なるほどですね……そもそも、串打ちがなってませんね」


 ピンクが手にしたのは竹串に刺したモモ肉。肉は不揃いな大きさで、垂れ下がった一部の肉が落ちた。


 *


「なん、だと……」


 ピンクが焼き上げたモモ串は、老舗の焼き鳥店のような一串であった。

 口に入れた瞬間から広がる炭とモモ肉の焼けた香り、噛んだ瞬間にじみ出す肉汁と塩の調合。そして、パサつきなく焼き上げた肉は、手元の串に近づくほど塩気から肉の甘みへと変化した……。


「クククッ、実は私。こう見えて、『ジョブマスター』なんです!」


 俺は悟った……いや、正確には道が決まったと言えるかもしれない。


「……師匠っ! 弟子にしてください!!」


 無意識に俺は床に手をつき、ピンクに土下座していた。


「えっ?? 二人とも何してるの?!」


 声のした方を見上げると、そこには修行から帰ってきたイエローとアシェリーがいた。

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