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14『父として』

 四人分の朝食の準備が終わると同時に、メイクを済ませたピンクと寝ぐせボサボサ頭のイエローが食卓についた。


「食事の前に、みんなに話しておきたいことがあるんだ……。俺は今日から主夫になる、では朝食(ちょうしょく)にしよう――。ん~~家族そろっての朝飯はいいなぁ」


 俺の突然の暴挙にピンクとアシェリーは言葉を失ってフリーズし、寝ぼけたままのイエローは何も言わずにむしゃむしゃとパンをかじっている。

 しかし、アシェリーはいち早く現状を理解したのか。


「父様ッ、一体どうしてなのですか?! 親方さん一人になっちゃうじゃないですか? それに家計は――母様が居るから大丈夫として……って違います!」


 そう言ってアシェリーは立ち上がった。


「……アシェリー。お前は誰かを犠牲にしてでも自分が幸せになるのはいけないことだと思っているのか?」

「えっ?? 突然……何を言っているのですか? そんなの倫理的におかしいですし、不条理です」

「そうそう、それ! 不条理。まあまあ、座って」

「……はい」


 俺は食事をしながら気にせず続けることにした。


「不条理って、要するに筋が通ってないってことだよな?」

「はい……もちろんです」

「じゃあ例えばだが、アシェリーは先生もつけて修行を始めたよな?」

「はい、そうですけど。何の関係があるのですか?」

「大ありさ。これは可能性の話だが、もちろん俺も母さんもイエローだって望んでいるわけじゃない」

「一体、何が言いたいのですか?」


 不機嫌になったアシェリーに俺は続ける。


「万に一つ……アシェリーの望んだ結果が出なかった時――――。アシェリーお前はそれも不条理って言うのか?」

「……そんなのわかりません」

「……それだけか? なら文句はないな」


 お通夜のようになった食卓では、アシェリーだけが食事の手を止めるのだった。

 本当の子供にはそんな残酷なことは言わないが、彼女は元OLの立派な大人だ。

 この程度を言い返せないぐらいでは、今後に差し(つか)える……。


 俺が彼女の止まってしまう異世界を初めて見たとき思ったのが、挫折耐性の無さだった。

 俺たちだって、遊びでここに来たわけではない――。時には彼女に嫌味の一つも言って試練だって与えなければならない。


 アシェリーの父親役は損な役回りこの上ないのだ。


 *


「はぁ~~アシェリーに嫌われた……。せっかく、好かれ始めようとしてたのに……」

「ハジメも馬鹿だね~。他にも落とし方はあっただろうに」


 目も合わせなくなったアシェリーとピンクを見送り、部屋の掃除をしながら後悔した。


「だってさぁ~。土木作業大変だし、仕事場との往復大変だし、現場はアシェリーの学校だし……ここだ! って思ったんだよね~~」

「へぇ……アシェリーの学校が現場ね……」


「はぁ……やっぱり、壊したのお前かよ。はぁ……」


 しどろもどろするイエロー……。さらに気が重くなるのだった。

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