表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

12『ごろごろ野菜とうさぎ肉のシチュー』

「……遅い」


 疲れた体に再びムチ打ち準備した夕食――。

 今日はごろごろ野菜とうさぎ肉のシチューを作ってみた。

 作り終わったタイミングで修行から戻ってくるイエローたち――――そんなテンプレ通りの夕時(ゆうどき)を半ば予想していたのだが……。


 時はすでに夜の八時――。

 暇でしょうがない俺は家の掃除とゴミ出し、トイレと風呂の掃除まで済ませてしまった……。

 食卓の上にはシチューを注ぐために置いた食器が静かにその時を待つばかり。

 これでは共働きの夫と塾帰りの子供を待つ……。


 『おかん』ではないか――――ッ。


 そんなことを思った矢先。


「たっだいま~~。いやぁお腹減ったねぇ」 

 

 イエローを先頭に、一団となって帰って来た。

 クソッ、あと十分遅かったら先に食べてたぞ。

 そんなことを思いながらも――。

 

「おかえりー。今、温めるからちょっと待っててくれ」


 キッチンに向かう俺は……やはりおかんそのもの。

 しかしなぜだろう……怒りよりも言いようのない別の、暖かな感情が静かに湧き上がるのだった。


 テレビもない、四人で囲む食卓は各々が今日あったエピソードを話す。

 イエローとアシェリーは修行でどんなことをしただとか……。

 ピンクは売上げ記録を更新して、店長を任せられることになっただとか……。


 俺以外のみんな……充実した一日過ごしてんじゃん。


 え、なに? 俺だけ肉体労働に家事って何かの罰ゲームかな? 

 やっぱり、明日からの仕事辞めても良いんじゃないかとすら思える。


「それで、ハジメはどうだったのさ?」


 イエローが聞いてきた。

 俺の情けない一日を知っているのはアシェリーだけ。

 アシェリーも俺を見て少しソワソワしている。


「別に……ほどほどな一日だったさ」


 そう言って、俺はアシェリーにアイコンタクトを送った。


「へぇ~つまんないの。シチューおかわり、肉多めで」

「へいへい、どうせつまんない一日ですよ~。てか三杯目だぞ」


 イエローから皿を受け取り、鍋のあるキッチンに向かった。

 すでにシチューの鍋は空……。アシェリーが注ぎに行ったので最後だったか……。

 食卓からはピンクがイエローに注意する声が聞こえる。

 

「イエロー、使者様は家族のために働いているのよ。つまんないとか言わないの」

「え~~だってつまんないじゃん。ピンクもあれだねぇ奥さんになるとハジメの肩を持つんだねぇ。オアツイねぇ」

「イエローったら、からかわないの!」


 おいおい、俺が席を外した時にそんな話しないでくれよ~。

 ピンクの恥ずかしがってる顔が見えんじゃないかぁぁぁ。


 しょうがなくそのまま洗い物を始めていると、アシェリーが食器を持ってやってきた。


「おう、悪いな。そこらへんに置いててくれ」

「……父様はやっぱり、家にいる時は別人みたいなのです」

「ふふふ、これが家庭円満の秘訣……。男は女性を立てろだ!」


 アシェリーはクスッと笑い。


「――――何ですかそれっ、初めて聞きました。お皿拭くの手伝いますね」

「アシェリーは良いお嫁さんになると思うぞ~~」


 そうして……一日目の夜は幕を閉じた。

 あと俺は、料理系ダンディではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ