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第9話『収穫祭の始まり②』

 カイルたちは、祭りの喧騒を抜けて、人々の集まる広場へと急いだ。


 爆発音が響いた方向へ向かうと、商人たちが集まっているのが見えた。

 その周囲には、パニックを起こした人々と、慌ただしく動き回る商人たちがいた。


「こっちよ!」


 ラティナが先に駆け寄り、カイルとミリエルも後を追う。


「一体、何があったんだ?」


 カイルが商人たちに声をかけると、ひとりの商人が顔を青くして答えた。


「魔素水が爆発したんです! あの瓶が……! 何が原因かはわからないが、いきなり爆発するなんて!」


 ミリエルが目を丸くして驚いた。

 魔素水が爆発するなんてあり得ないことだ。


「ニセモノだったんじゃないの?」


 ミリエルが疑念を口にすると、商人はすぐに反論した。


「そんなはずはない! この瓶には正規の許可証がついているんだ。貴族から直接買っている品だよ!」


 商人が必死に説明する。真剣な眼差しから、嘘をついているようには思えなかった。

 カイルは他の魔素水にも少し違和感を感じたが、何も言わずにその商人の話を聞いていた。


 その時、ラティナが口を挟んだ。


「許可証があるなら、正規ルートでの取引ってことは間違いないね。貴族のサインもちゃんとあるし、商人が言ってる通り、間違いなく正規のものだと思うよ、ミリエル?」


 ラティナは商人の肩を軽く叩き、少し力を込めて答えた。

 彼女も商売人として、この取引が正規のものである可能性が高いと感じているようだった。


 その瞬間、広場の外から足音が響き、目の前に貴族の部下と思われる人物が現れた。

 彼は高貴な服装をしており、明らかにその場にふさわしくない態度で、商人たちを見下ろしていた。


「どうした、こんなところで騒いで?」


 貴族の部下が冷ややかな目で商人たちを見渡した。

 商人たちはすぐにその人物に気づき、急に姿勢を正して言った。


「ザ、ザンポス様! ちょうど魔素水が爆発してしまって、その原因を調べているところです!」


 ザンポスと呼ばれる貴族の部下はあくまで冷徹な表情を崩さず、目を細めながら言った。


「爆発した? ──それで、何か問題でも?」


 その様相に、カイルは疑念を抱き始めた。

 この男は何かを知っている、いや、知っているどころか、事件に関与している可能性が高い。


「この商人たちが言う通り、この魔素水には正規の取引の証明書がついています」


 ラティナが冷静に口を挟んだ。


「でも、それにしては爆発なんて、ちょっと……」


 ラティナの言葉が終わると、貴族の部下は微笑んだが、その笑みはとても不快なものだった。


「その証明書があるからと言って、全てが正しいとは限らない。商人たちが売っているものが、必ずしも品質を保証するわけではないだろう?」


 貴族の部下は冷笑しながら言った。


「おい、気をつけろよ。何かあったときの責任は、すべてお前たちにあるんだぞ?」


 ザンポスは商人たちに向けて言い放った。

 その冷たい言葉には、威圧感があった。


 商人たちは黙り込んでしまう。

 ふん、と鼻息荒く、ザンポスはその場を去ろうと背を向けた。


「ちょっと待ってくれ!」


 カイルが思わず声を上げた。

 ザンポスは振り返り、少し驚いた様子でカイルを見る。


「なんだ、坊や。何か言いたいことでもあるのか?」


 カイルは一歩前に出て、毅然とした表情で言った。


「魔素水が爆発するなんて、普通じゃない。もし魔素水“自体”に問題があるなら、許可した貴族の“()()()()”に関わるんじゃないか?」


 ザンポスは一瞬だけ目を細めて考えると、すぐに敵を見るような表情に変わった。


「お前、少し口が過ぎるな。だが、これはお前たちの問題じゃない。さっさと引き下がれ」


 そのまま、ザンポスは再び背を向けて歩き去る。


 あの男は、ただの部下ではない。彼こそが、何かを隠しているのではないか?

 カイルは再び疑念の眼差しを向けるのだった──。


《つづく》


お読みいただき、ありがとうございます。

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※最新話は【毎日12時10分】更新予定です。

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