2025/5/24_16:42:14
「すみません、中々時間が取れなくて遅くなりました」
相談に乗ると言ってから、二日も経ってしまった
「いいよー。そのかわり隣に座ってもいい?」
「正面に座ってください。じゃないと話も聞きません。部屋に二人っきりとか異例なんですから」
「前も事務所で夜中に二人っきりだったじゃん」
スルーして本題に入ることにする
「どうしましたか?何か悩んでます?」
「ゆきさんが振り向いてくれなくて悩んでます」
不貞腐れた顔でテーブルに頬杖をついてこちらへ乗り出して来ている
「茶化さないで、ちゃんと話してください」
「茶化してないよ。ねえ、話聞く時くらいは敬語無しにして。友人として聞いてよ。話すから」
随分と甘えている。弱気のナツは珍しい。
「わかりました。ダンスの事?メンバーの事?」
「両方かなぁ。皆ダンス上手くなったしさぁ、僕教えてていいのかなーとか、緩さが出てて聞いて貰えてない気がしたり」
「自信もっていいと思うよ。誰が何て言ったってU:niONの中でダンス一番上手いのはナツだよ?」
「ありがとう。ゆきさんに言われたら嬉しいなぁ。自信つくよ」
「まとまりとか、緩さとか、そんなとこは別の人に任せていいと思うんだけど、ダメ?もっとさ、リュウとかハルに頼ったら?一人で抱え込まなくていいよ」
「うーん……」
机に突っ伏した。自分で、やりたいのかな。元々リーダーもやりたかったと聞いている。全て背負い込みそうで、それくらいは任せろと言うリュウに譲ったそうだ。
「みんな、チームだから。リュウやハルに話しにくいなら、私でもいいから頼って?」
「ゆきさんに甘えるのもなんか負ける気がして。相談するのも迷ったんだけど」
「え、勝ち負けなの?」
「僕ゆきさんが好きだから、弱いとこ見せたくないんだよ、頼れる男がいいの」
「……可愛いなぁ」
思わず呟いてしまった。
「カッコイイがいいんだけどなぁ……」
「仕方ないよ、私のが年上だし、散々皆見てきてるんだもの」
「やっぱ負けてる。やだなぁ」
「ハルがね、めちゃくちゃ心配してたんだよ?自分で抱え込み過ぎて気付いてないでしょ?」
「え?うわー……」
顔をあげて驚いて、そのまま頭を抱え込んで悔しそうにもがいている。
「ハルにも負けてんじゃん」
どうしても勝ち負けになるようだ。
「そうだね。リュウもハルが気にしてるの気付いてたしね」
「そこでリュウの名前いらないから」
今度は顔を上げて怒っている。へそを曲げたかな?でも……
「こういう時は徹底的にわからせないとね?」
もう一度机に突っ伏した。対抗する気も無いようだ。
「面倒な事はリーダーに任せればいいのよ。ナツはハルとパフォーマンスを向上する為に頑張って、ついて来れるようにしろって本人達に任せればいいし、聞けよって事があるならリュウが責任もってまとめろよ、リーダーだろ!で良くない?それ以上ナツが責任負わなくていいよ」
真面目でストイックなナツらしいと言えばそうなんだけど。
「そっか。チームか」
わかってくれたかな。吹っ切れたかな……。
「そうだよ。私もできる限り手伝うから」
「前みたいにまたダンスの手伝いもしてくれる?」
「もちろん。時間があればだけど。できるだけするよ」
「てかさ、ゆきさんダンスやってたよね?」
「ちょっと器用なだけです」
「敬語になった!怪しい!」
さっきまでが嘘だったみたいにはしゃぎ出す
「元気になったみたいですね。良かった」
「うん、心配してくれてありがとう。やっぱゆきさん好きだわー」
「では、今日はもう遅いので、帰って休んでください。車で送ります」
立ち上がってドアへ向かうとあっさり背後から捕まる
「こういう事は……」
「しーっ……ちょっとだけ補給させて。そしたらもう元気だし、ちゃんとできるから」
仕方なくそのままでいる。
「負けてるのは私なんだけどなあ。勝てないよ」
「そうだね。僕の方が強かった」
「ちょっと!」
頬にキスされ、振り向きざまに前から抱きしめられ、身動きが取れなくなってしまった。
「いくらでも押さえつけられるんだよ?知ってた?」
「知ってます。でも、ナツは無理強いしない。誰かを守る時だけ強さを見せてくれる人です」
「かわすの上手いねえ、でも僕も男だよ?」
「信じてますから」
くすっと笑って、額に長いキス
「今日はこれで許してあげる。ゆきさん、僕は本気だからね?」
ナツの腕の力が緩んだ瞬間ふらついて、支えられた
「動揺してくれるんだ、嬉しいなあ」
明らかにからかわれている
「皆、色々誤解してます。冗談でもあなた達に色々仕掛けられて、動揺しないわけが無い」
「駐車場まで一緒に行くよ。まだ隣に居たいから」
「わかりました。でも、離してくださいね?」
「歩ける?」
「歩けます」
からからと笑いながら、支えられる距離を保ちつつ駐車場まで同じ速さで歩いてくれた。




