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U:niON《ユニオン》  作者: 藤華 紫希


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19/19

春夏コレクション

 ついにモデルの撮影が始まった。MV撮影、CM撮影とも連携するので、YUHKIは三日間朝から晩まで撮影する事になった。

 「秋冬コレクションはまた改めて撮影がありますので、ツアー中になりますがよろしくお願いします」

 「こちらこそよろしくお願いします。プレゼンも通して頂いてありがとうございました」

 仮面を脱ぎ捨てる振りをそのままCMに使いたいと申し出て、プレゼンを提出した。

 「あれはもうN社も脱帽モノでしたから。支社長が何よりも気に入ってましたし」

 「仮面なんてとんでもないって始めは思ってましたけど……ここまで印象的なモノになるとは思いもしませんでした」

 「衣装を付けたダンス動画がカッコよくて。これを使わない選択肢は無いって支社長即断でしたから。YUHKIさんのダンス素晴らしかったです」

 MV撮影もブランドや普段関わらないN社が入るのならと、イメージしやすいように衣装を着けたダンス動画をプレゼンに参考資料として添付した。

「YUHKIとしては初めてU:niONの動画に参加するんですが、バックダンサーとしては最近ずっと一緒に踊ってるんですよ、実は」

「ダンスをされるのは知っていましたけど、まさかそこまでとは⋯⋯恐れ入りました」

 そこで、撮影隊の方からセット入りを告げられた。

「では、今日から撮影よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」


 今日は春夏コレクションアイテムの撮影を行う。YUHKI単独の撮影が多いため、U:niONは後から合流する。細かくスケジュール調整して、少しでもツアー練習を捻出するためにも。

 モデルの仕事が終わっても、U:niONは個人の仕事や、各種媒体の取材、番組収録も待っている。その合間合間にツアー練習を組み込んでいた。分刻み、いや、秒刻みのスケジュールだ。

 三日間はYUHKIでいなくてはならず、高橋さんが主にマネジメントに付いてくれている。


 《表と裏、裏と表―女性の魅せる顔はどちらも美しい。》

 そのコンセプトの元、同じ衣装でセットや小物、メイクを変えて撮影が行われた。

 元木君のメイクはさすがで、見事に表と裏を表現していく。

 「ホントに同一人物?YUHKIさん?」

 と、メイクが変わる度にあちこちで声が上がっていた。


 午後になるとU:niONも合流してモニター前にぞろぞろと集まっていた。

 「本気のゆきさんだ。今までと比べ物にならないね」

 「YUHKIさんって呼ぶべきなんかな?」

 「バレない程度なら、ゆきさんでいいんじゃない?いつも引っ張って行ってくれる僕らのゆきさんにかわりはないよ」

 「俺もそう思う。今回は勝ち負けとかじゃなくてさ、ゆきさんも一緒に舞台に立ってるんだよ。U:niONのゆきさんなんだ」

 年下二人の不安を年上二人が一掃する。

 「そっか。今回はセンターがゆきさんになったって事だね」

 「そう言うことだね」

 「よし、揃ったな。挨拶行くぞ……U:niONです!よろしくお願いします!」

 「よろしくお願いします!」

 撮影の間をちゃんと選んで挨拶をしている。こちらにちゃんと目線でリュウが確認を取っていた。お陰で私も挨拶を合わせられた。周りは、驚いていたけれど。U:niONは大喜びでセット前まで来ていつも通りハグ……手前で思いとどまった。

 「ふふふ。よろしくお願いします」

 「よろしくお願いします!」

 他人行儀な挨拶に我慢しきれず大笑いしてしまう。

 「ゆ、YUHKIさん?」

 「ゆきさん、で大丈夫ですよ、皆さん」

 「あ、奥田さん。よろしくお願いします……どういう事ですか?」

 高橋さんが周りを気にして小声で問いかける。

 「高橋さん、U:niON任せっきりですみません。ありがとうございます。ここには私の事を分かっている人しか居ませんから、気兼ねなく。奥田さんが気を利かせて下さったんです。N社の方も、モデルやダンスをしていた事を知っていて、あの頃相談に乗ってくれていた元上司です」

 メイク、スタイリストの二人を始め、ブランド側もN社も、撮影隊までもがYUHKIを知っているU:niON関係者で固めてくれている。YUHKIのために。

 ここまでされて、手を抜けるわけがない。プレゼンを練り、少しでも貢献できるようスケジュールも調整した。

 「いつも通りの皆さんが一番U:niONのこともYUHKIさんのこともわかっていらっしゃると思いましたので、頑張りました。YUHKIさんも、もの凄く協力して下さったんですよ」

 「そうだったんですね。ありがとうござ……」

 「ありがとうございます!」

 「ゆきさんも!」

 高橋さんの言葉をかき消す挨拶と共に、U:niONに群れられてしまった。うん。知ってた、けど……。

 「衣装です!ヘアメイクもして頂いてるんです!やめてください!」

 叫んでみたものの、一通り終わらないと無理だった……。

 「うん、やっぱりそうなるよねー。俺も知ってたから、スタンバってる。終わったら教えて」

 そこには達観した元木君が立っていた。隣には大笑いする酒井さんも。

 「U:niONの挨拶だから、仕方ないわよね」

 「すみません。ありがとうございます」

 当の本人達は、撮影隊に呼ばれて既にセットに移動していた。

 落ち着いたスーツを着た彼らは凄く大人びて見えた。

 「あんな格好が似合うようになってたんですね」

 「見違えた?」

 「そうですね。前よりもっと……いつまでも子供では無いと実感しました」

 もっと、言動には気をつけねば。

 「さあ、衣装はOKよ。次はヘアメイク」

 「あーあ。あいつら思いっきりやってくれちゃってるねぇ」

 「元木君が直すだろうって思ったのか、着替えると思ったのか……」

 「嫌がらせだろ」

 「本気で嫌ってたら触らせ無いと思うから、嫌がらせじゃないわよ、きっと」

 あれだけ文句を言っていたのに、元木君に任せて行く余裕すら感じる。

 「よし、あいつら待ってるぞ。行ってこい」

 「ありがとう、元木君。酒井さんも。行ってきます」

 光の当たる場所から、みんなが呼んでいる。手を振って、手招きして、同じ場所に立っていいよ、と言ってくれている。


 「すっかりあっち側の人ね」

 「隠れられてた方のが奇跡だと思うよ。YUHKIのためにどれだけのスタッフが協力してんだ?」

 今日のスタッフは間違いなくU:niONとYUHKIを守るために集まっている。

 「彼女の積み上げてきたキャリアがいかに凄いかがわかるわね。ブランクがあってもなお」

 「ただものじゃなかったな、やっぱり」

 セットに立つYUHKIはU:niONに負けない光を放っていた。


 U:niONと一緒に今日は三着の衣装で撮影する。衣装替えの間にU:niONのアイテム毎の撮影をしていく。とにかく無駄な時間を作らず、数をこなす。YUHKIの着替えの間にU:niONの撮影を。U:niONの着替えの間にYUHKIの撮影を。裏方も暇なく動いてくれている。

 「YUHKIさん着替えです!U:niONはアイテム毎の撮影をします!それぞれ準備お願いします!」

 モデルもスタッフも、一斉に次の準備に取り掛かる。

 「YUHKI、衣装先に着替えてその後メイクな。俺U:niONのメイク直しに先行くから」

 「了解。U:niONをよろしくお願いします」

 「はいよ。その格好でもU:niONのマネージャーなんだな」

 「ん?何か言った?」

 「なんでもない。早く着替えてこい」

 元木君はこちらを見もせず、そう言ってU:niONの方へ向かって行った。

 「ゆきさん、こっち!」

 酒井さんが少し外れた方で呼んでいる。

 「さっきの大きなスペースはU:niONに使わせて、ゆきさんはこっちに更衣室別に作ったから。更衣室変更させてね」

  「これくらいのスペースの方が落ち着きますね」

 こぢんまりした最低限の個人スペース。

 「そうね。でも、九人だとさっきの控え室も小さかったわよ?」

「そうですね。それでなくても体格も動きも大きいですから」

「なるほど!モデルの子達と違ってよく動いてるわ!ダンスしだすし」

 そう言われて、また元気に騒いでいたのだと想像がつく……。

「私は更衣室無くても慣れてますけどね。裏に行ったらそのまま着せ替えられるのがモデルって言われてきてますから」

 ショーに出たりすると、スペース的にも時間的にもそんな余裕は無く、流れ作業で衣装替え、メイク直しと進んでいく。

「あれもどうかと思うけど。今回は契約上バレるととんでもない罰金払うことになってるからね。変なのが入り込めない快適なプライベートルームになっております」

「ご配慮本当にありがとうございます」

 お茶目に笑って言っているけれど、かなり厳しい内容の契約になっているはずだ。そんな契約を結ばせてまで手伝ってくれていることに申し訳無さしかない。

「当たり前の対応だと思うよ、私はね。と言うか、ここに集まったスタッフみんなね」

 周りのスタッフもにっこり同意してくれる。事件直後のテレビ局の対応が酷かっただけに、これが当たり前だと言われて自分は間違っていなかったと、再認識する。

「皆さん優しすぎて……プレッシャーをかけられてるのかしら……?」

「うん、かもね?」

 その場のみんなで大笑いする。

「……よし!次はメイクね。元木君呼んで来てくれる?」

「はい!」

 若手の助手がすぐに反応して部屋を出て行った。

「酒井さんのところのスタッフも皆さん良く動きますね」

「ウチはかなりしつけてますので?」

「すみません、躾が行き届かないメンバーで……」

「ホントだよ。何とかしてくれ」

酒井さんではなく、入り口から元木君が返事がきた。

「また何か言われた?」

「人使いが荒すぎる。それでなくても人数が多いのに、『プロですよね?全員責任を持って担当してください』とか言ってアシスタントには触らせないし」

 なるほど。

「そりゃ仕方ないわ。仕事は認めてるけど、許してないのね〜」

 酒井さんも察したようだ。

「元木君はまだ信用されてないのよ。あなたのせいでは無かったけれど、監督責任として、まずは誠意を見せてくれないとね?ってことよ。まあでも、それじゃ仕事に支障が出るからひと言言っておきます」

「よろしく。でも責任は感じてるよ。だから精一杯仕事はさせてもらう」

 ちゃんと切り替えてメイクをしながら、完璧に仕上げていく。

「……オッケー!じゃ、頼んだぞ!」

「了解!いってきます!」

「いってらっしゃい!」

 ドレスの後ろを直して、ぽん、と背中を押して酒井さんに送り出された。



「ゆきさんまた別人になったなぁ」

「悔しいけどホント良いメイクするよね」

「プロなんだから当たり前でしょ」

 思った通り。認めてるけど認めたくない言葉が並ぶ。

「みんなの気持ちはよくわかるけど、メイクさん達困らせちゃダメです。百歩譲って自分達のMVの撮影ならまだしも、大事なお仕事なんですよ?わかってますか?」

「……はい……すみませんでした!」

 大合唱……。その場のみんなが驚いてキョトンとして大爆笑……。

 いや、うん、いつものことだけれども。

「高橋さんまで……?」

「あはは。いやぁ、みんないいぞ!とか、内心……ね?注意も忘れて……すみません」

 怒られてるー!と、U:niONどころか、周りのスタッフからもからかわれながら、大袈裟に頭を下げている。そしてU:niONもからかうのをやめて頭を下げる。

「本当に皆さんすみませんでした!改めまして、よろしくお願いします!」

 モデル全員が頭を下げたところで、今度はスタッフが慌て出す。

「いやいやいや……もう、頭上げてください!YUHKIさんまで!困りますってば!」

 奥田さんがその様子を伺いながら、

「さあ、皆さん時間無いですよ!よろしくお願いします!」

 と、笑いながら撮影再開を促してくれた。

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