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U:niON《ユニオン》  作者: 藤華 紫希


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18/19

タイトル未定2026/02/22 00:52

 「みんなどう?新曲の作詞進んでる?」

 夕飯の準備をしながら、高橋さんが声を掛けてくれる。

 「だいぶまとまってきました。CMや、MVのイメージも付いてきたのでとっちらかって来てる気もしないではないです」

 歌詞をまとめた用紙と、CMやMVの絵コンテ、指示書のようなものまでテーブルの上に広げられている。

 「ツアー後半で新曲も入れたいって話にもなって、ステージ構成の話し合いもあったりする」

 リュウが面白がって高橋さんに報告している。前職の経験を活かしてまとめ係にと駆り出され、結局全てに関わることになってしまった。

 歌のイメージをメンバーが色々持ち寄って、それをまとめるだけの作業のはずだったのに……。


 曲名は服飾品=身に纏うものを意識して、『always ……be with you』に決まった。成長した姿を見て欲しい、そしてもっともっと成長するよと思いをこめようと、羽ばたいてゆくという言葉をいれ、煌めきまとう、 貴方を照らす、大人の輝きといった言葉を散りばめてブランドのイメージと照らし合わせながら作っていった。

 そして、せっかく仮面という印象的な小道具を使ったからと言うことで、仮面脱ぎ捨てて、という歌詞を使ってCMもMVも演出に使えるんじゃないか、と話があちこちに飛んでしまっていた。今ようやくまずは歌詞!という話になってまとめだしたところだった。

 「こんな感じでしょうか?皆さん一度曲に合わせて歌ってみてくれますか?」

 「そうだね。合わせにくいところがあれば修正していけばいいね」

  ナツが同意してくれたので、そのまま第一案として、全員が手元で見られるようにプリントアウトすることにした。

 「それでは事務所に行ってきます。振り付けでも考えておいてください」

 「はーい」

 振り付けも今回先生に丸投げするのではなく、歌詞に合わせてこうしたい、と言った意見を出してからお願いしようということになった。全て自分達で創るという案もあったが、スキルはあっても、今回は時間が無さすぎた。歌詞は今日中に仕上げ、すぐにボーカルレッスンに入り、五日後に振り入れ、十日後にはレコーディング、ジャケット撮影、MV撮影と進んでいく。ツアーの練習の合間にそれだけをこなさなければならない。普段ならあり得ないハードスケジュールだ。

 更にCMの打ち合わせ、撮影と、モデルの仕事が続く。

 ツアー自体は余裕を持ったスケジュールにしているが、それでも3ヶ月に及ぶ長丁場だ。自分達で選んだ過酷なスケジュールではあるが、とにかく体調には気をつけていかなくては。高橋さんと先生が居てくれるのが本当に心強い。お任せ出来るところはお願いして、できる限りブランドの打ち合わせに自分で参加していた。


 プリントアウトした歌詞入りの楽譜を持って練習室に戻ると、メンバー達が振りを考えている横で、高橋さんがカメラを準備していた。

 「先に歌ってみてください。まず歌詞とパートを決定しないと」

 「そうだね」

 全員に配った楽譜を歌いながら確認していく。

 最後に作詞に関わらなかった高橋さんに客観的に聞いて貰った。

 「高橋さんどうですか?」

 「うわぁ!キラッキラの歌になりましたね!」

 サムズアップしながら、高橋さんがいい歌だと、喜んでくれている。

 「やったー!高橋さんのOK出たー」

 「良かった。それでは皆さん、振りを歌に合わせて録画しましょう」

 座っているのがそろそろ嫌になって来ていたメンバー達が喜んで動き出す。

 「ここ、これ入れていい?」

 「じゃ、こっちこれで」

 「それやったらこの方がええんちゃう?」

 「いいねー」

 自分のパート、創った歌詞に合わせて入れてみたい振りをお互い擦り合わせていく。

 「一旦入れたい振りをしてみましょうか?」

 「並びどうする?」

 「一列に並んでボーカルパートが来たら1歩前に出る。各自今大体決めた振り、もしくは自分のパートでやってみたい振りをするというのでどうですか?後は仲野先生に任せましょう」

 「そうだね。時間も無いからね」

 パフォーマンスリーダーのナツがゴーサインを出すと、リュウがみんなに号令をかける。

 「よし、やろうか。並んで!」

 「はい!」

 まずはボーカルパートの確認の為に、振り無しで録画する。次にそれを音源にして、振りを録画する。

 「振りチェックしますか?」

 「チェックしたいでーす!」

 カイが一番に返事をする。それを合図にタブレットにみんなが集まってくる。

 「どうですか?」

 「後はお任せした方がええんちゃうかなぁ」

 「僕もそれで良いと思うよ」

 みんなそれぞれOKのようだ。

 「それでは今から先生の所に持って行きますね」

 今日の予定は予め先生に伝えている。

 「よろしくお願いします!」

 「ではみんなは食事!そのあと歌を少し練習して帰宅だね」

 「高橋さん、後よろしくお願いします」

 「はい、ゆきさんもよろしくお願いします」

 「よろしくお願いします!いってらっしゃい! 」

 元気にユニオンに送り出された。





 「よく出来てるじゃない。さすがユニオンだね」

 「ありがとうございます。五日後のツアー練習の時に間に合いそうですか?」

 「ゆきがこの後手伝ってくれればね」

 やっぱりそう来るか……。

 「はい、そのつもりです。ただ、今回流石に振り付け動画の参加は厳しいです。すみません」

 「しょうがないよ。ツアーのバックダンサー組でなんとかする。これ、CMに使うなら、ゆきのパートも作っていい?」

 そうか……それもありか。

 「いいですね。それなら……」




 予定通りに、ツアーのダンス構成と新曲の振り付け動画を持って、仲野先生率いるバックダンサー組がやって来た。女子校生二人がハイテンションだ。

 「お世話になります!よろしくお願いしまーす!」

 「新曲めちゃくちゃ良かったですー!先に踊らせて頂きましたー!」

 「こらこら、奈留」

 「ごめんなさぁい……」

 一気にテンションが下がった奈留を見てユニオンが爆笑する。

 「奈留ちゃんおもろ!」

 「奈留おバカなだけです」

 「久美もでしょぉー!」

 先生が呆れ果てて黙らせる。

 「二人共落ち着きなさい。今日は仕事で来てるのよ?少し自覚を持ちなさい」

 さすがの二人も空気を読んで小さくなる。

 「では改めて、バックダンサーを務めてくださる皆さんです。今日は新曲の振り入れも手伝ってくださいます」

 「よろしくお願いします!」

 「よろしくお願いします!」

 お互いにしっかり挨拶したところで、リュウが改めて挨拶する。

 「ツアーの間、よろしくお願いします」

 「まずはツアーの構成の説明からします」

 先生から、基本のセトリをツーバージョン、アンコール曲3曲のダンス構成を全員に向けて説明があった。

 「メンバーからの要望を元に組んでいますが、動いてみてその都度修正していきます。会場によっても変わると思います。ここからは実際動きながら行くよ……まず前半のダンスナンバーから……」

 メドレーで繋ぐポイントや、ツアーバージョンで動くポイントの説明が続く。バックダンサーの位置取りも微調整しながら進めていった。

 「一度バックダンサーの入るところ踊って流れ確認します」

 中盤のダンサーとの動きを確認する。

 「大丈夫そうですね」

 「そうだね。あとは各々精度を上げて次はしっかり合わせられるように」

 「はい!」

 「ダンサー早く帰らせないといけないので、ユニオンだけのところは後にして、新曲の振り入れします」

 流石に毎回夜中まで練習するユニオンに付き合わせられないので、ダンサーがいる間に振り入れに取り掛かる。

 「やったー!早よ見たかってん」

 「ゆき入れる?」

 「多分大丈夫です」

 二人のやり取りにユニオンが驚く。

 「なになに?ゆきさん込みの振り?」

 「CMで使うなら初めからMVもゆき込みでもいいんじゃないかって事になってね」

 「私が居ても居なくてもかっこいいダンス構成にしてみました」

 「ゆきさんも構成考えてくれたん?」

 「手伝わないと間に合いそうに無かったので……とにかく動画より見やすいと思うので、一度踊るので見てください」

 そう言うとカメラを準備していた高橋さんが盛大に拍手して喜びだした。

 「YUHKIさんのダンスが見られるなんて!」

 「いつも見てるやん」

 ジュンが何を今更と言うと、

 「YUHKIクレジットでダンスは一度も出してないんです!モデルのYUHKIとしてのダンスなんですよ?!」

 と言って興奮している。

 「いや、まあ、そうなんですけど……いつも踊ってますから……」

 思わずたじろいでしまう……。

 「高橋さん、わかりましたから。準備お願いします」

 仲野先生に言われてやっと落ち着きを取り戻して音楽とカメラの準備を再開した。

 「ゆき先生凄いね……熱狂的ファンだね」

 「あまりモデルのゆき先生知らなかったけど、凄いのは高橋さん見てなんかわかったかも」

 奈留と久美まで驚きのあまり引いている。男子ダンサーズに至っては笑いをこらえるのに必死だ。

 「はいはい、ダンサーズも準備して!スタンバイ!」

 仲野先生が手を叩きながら集中を促す。

 全員の目つきが変わる。

 「音楽スタートします!」

 高橋さんの掛け声の後、音楽が流れる。ユニオンが考えた歌詞、振りを仲野先生と二人で磨き抜いて仕上げた。YUHKIを中心に踊り始め、次第にユニオンが前に出て目立って行く構成で、ユニオンの成長して行くイメージや、大きく羽ばたいてゆく姿をイメージした。ゆきは一歩後ろのセンターで、ずっと見え隠れしながらダンスをする。目立ちすぎず、でも存在感のあるダンスに仕上げた。

 「うん、移動も完璧。さすがダンサーズ」

 「ゆきさんかっこいい!」

 「歌番組もゆきさんアリにしようよ!」

 「居なくてもかっこいいダンスって言いましたよね?」

 実のところ、自分が目立ってしまうことにかなり恐怖がある。また彼らが攻撃対象になってしまわないかと。

 「まあ、そこは追々考えよう。今は振り入れ集中」

 「僕もリュウに賛成。フォーメーションかなり複雑だったよ?みんな大丈夫?」

 年長二人からゲキが飛ぶ。続けて先生からも。

 「あくまでも目立つのはユニオンでないといけないから。みんなしっかり魅せるダンスを心掛けて」

 「はい!」

 「それじゃ、羽ばたいてゆくのところまでダンサーズの見本を見ながら覚えて」

 いつも以上のスピードでダンスを叩き込んでいく。マンツーマンで教えて貰いながら次々進めていった。

 2時間で完璧に仕上げ、その後バックダンサーを付けての構成も仕上げていった。

 「みんなのお陰で巻きで終われそう。ありがとう」

 後輩ダンサー達に改めて礼をする。

 「俺らもシゴト貰えて助かってるっす」

 男子メンバーは普段から色んなところでバックダンサーをしている四人なので、対応力もさすがだった。

 「ゆき先生の本気ダンス見れるのも中々無いんで、勉強になります」

 「あなた達現場一緒にしたのもう何年前?いつも教室で会ってるとわかんないわ」

 と先生が言う。

 「私らは前のMVですっごいのみたよー!」

 「凄かったよねー」

 ダンスのテンションそのままで話しが盛り上がっている。

 「そんな本気ダンスって……フォーメーションにもほとんど絡んでないのに」

 今回そんなに大したことはしていない。

 「構成の時……って言うか、振り付けして以来のダンスですよね?それでこれだけやられたらもう、なあ?」

 ダンサーズが大袈裟に頷いている。

 「ええっ?ゆきさんみんなと一切合わせないであれやったって事?」

 「もうホンマ異次元やわー」

 ユニオンまで会話に加わりだした。

 「普通に考えてみろ、ゆきさんずっと俺らに付いて来てたのに合わせる暇なんて無かっただろ」

 トウヤが冷静にジュンとリツに言う。

 「確かに確かに。ゆきさん毎日朝から晩までメンバー車で移動一緒にしてたわ」

 「たまに抜けてる時はモデルの打ち合わせに行ってくれてましたしね」

 高橋さんまでも興奮冷めやらぬ、だ。

 「簡単に自主練はしてましたから」

 指導を任されているからにはやらない訳にも行かず。時間を見つけては踊っていた。

 「ゆきさんにはやっぱり頭上がんないわ。マネージャー大変なのに、本当にありがとう。カッコよすぎ」

 どさくさに紛れてリュウがハグをしてくると、みんな負けじと次々とやってきてまたもみくちゃにされてしまう。奈留久美の二人がキャーキャー叫んで喜んでいる。

 「私達もー!」

 最後についでとばかりに二人でハグしに来た。

 「わかったから!」

 テンションが上がりすぎて剥がれ無い。

 「なんか、ゆきさん盗られた気分やなあ」

 「ゆきさんはボクらのマネージャーだからね!」

 年下二人に可愛く言われて奈留久美がメロメロになってやっと離れる。

 「可愛い……」

 「ゆき先生、私達のマネージャーもしてくださーい!そしたらこんな可愛い嫉妬毎回見れる……」

 「なんか……いや、相当間違った考えだと思うよ?それにゆきさんそんな暇無いからね?」

 高橋さんが大真面目に答えて大笑いされていた。


 ダンサーズを送り出すと、ユニオンだけのツアー練習が始まる。

 「ゆき、ここどうする?」

 今日はありがたいことに、先生も指導に残ってくれている。

 「そうですね。少し変えますか?ナツとハルに確認させましょう」

 そう言ってすぐに二人を呼ぶ。

 「せっかく大きなステージだし、少し演出を加えてもいいかと思うんだけど。二人はどうかな?」

 「ゆきさんは?」

 「ここはユニオンの見せ場なので、九人でできる精一杯が見たいです。大きく見せる工夫が良いかと」

 今の振りのままだと、大きなステージは活かされていない。でも、まとまりを魅せると言うなら、この曲はこれでもいい。どうするか、どうして行くかはこの後の魅せ方にもよる。

 「せっかくのステージだからやっぱり大きく見せたいなぁ。ダンス自体も少し工夫しないとこぢんまりしてるよね」

 「段差を付けてみたり、ステージに工夫はまだできるよね?」

 「まだ大丈夫です。立体感出すのはいい考えだと思います」

 原案に併せて動きを紙面で確認する。

 「なら、段差で立体感を出してその後三方向へ移動。サビで前のサブステージに集まって曲ラストまで?」

 「そうね。それで行こう。皆に説明して来て」

 ナツとハルが他のメンバーに説明している間に後のメドレーナンバーの動きも確認する。

 「せっかく段差作ったなら、最後また数名登らせて終わっても良いかもしれませんね」

 「この曲なら出来るね。そうしよう」

 更に変更箇所を伝えると、メンバーからも同じような意見があったようだ。

 「とりあえず一回やってみましょうか。今日は段差準備できませんけど」

 「今日は構成の確認と微調整の日だからね。あなた達もなにかあれば今のうちだよ」

 「セットは今週末に決定でお願いしますよ」

 先生が変更をメンバーに促したので、高橋さんが慌ててそう言った。

 「そんな無茶しないよ。それなりにわかってきてるからさ。高橋さん安心して?」

 「お願いしますよ。予算だってあるんですからね」

 高橋さんが念を押している。

 「今回後半からは大きなスポンサーが付きますので、その時に追加できたらするって事で意見貰えると良いかも?」

 「ゆきさん、今サラッと凄いこと言わなかった?」

 「always……be with youをセトリに入れるのが条件ですけどね」

 打ち合わせに行って勝ち取って来た情報を解禁した。

 「やったー!」

 九人が大騒ぎする。

 「限度はありますからね!限度は!」

 高橋さんが抑えにかかるが、この九人に勝てるわけが無かった。








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