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タイトル未定2025/06/25 16:55

 奥田さんから連絡が来たのは、ちょうど一週間後だった。U:niONありきの契約内容に、多少反発が出たらしい。YUHKIの正体を伏せての説得に時間がかかったそうだ。プレゼン内容自体についてはかなり評価が高かったと言って頂いた。マーケティング部長の後押しがかなり効いたそうだ。

「モデルの件ですが、YUHKIの年間契約と、U:niONのアイテムごとの年間採用が決定しました!撮影等もU:niONと同時に進行して下さるそうです」

 高橋さんの説明に続ける。

「まずは三日後にブランドに顔合わせと初打ち合わせに伺います。撮影も入るそうで、衣装が届きました。スタイリストも酒井さんが担当して下さるそうで、サイズも調整済みだそうです」

 そう説明したところで、ちょうど酒井さん達スタイリストが衣装を持って到着した。

「おはようございます。今回もよろしくお願いします。こちらの衣装試着して見てください!」

 それぞれにフォーマルとカジュアルスタイルの二着用意されていた。

「ユニフォームとして支給だそうで、歌番組でも着用して良さをアピールして欲しいとの事です」

「うわっカッコイイ。少しずつデザイン違うんや」

「あ、ホンマや。俺のどれ?」

「うぉー、すげー!」

 年下三人が真っ先に衣装に寄って行ってはしゃいでいる。年上メンバー達は自分達よりもYUHKIの衣装に興味があるようだ。まさかの六着準備されている。

「靴や鞄もトータルコーディネートされて持ってきてるので、黒のスーツの方で現場入りして欲しいそうです。YUHKIは本人に服を選んで欲しいと言ってました」

 靴や鞄は全員違うものがコーディネートされている。黒でもこれだけのシリーズがあるようだ。YUHKIに至っては迷ったのか、靴と鞄がそれぞれの衣装に二組ずつ用意されていた。

「表と裏みたいな設定で、ひとつの衣装でツーパターン撮るんですって。YUHKIならではのイメージの異なるモノを表現するんだそうで、是非U:niONに合わせるならこっち、というのをYUHKIに選んで欲しいと」

「また丸投げな……ん?なんですか?これ」

 ブランドには似つかないモノがある……。

「いっそ誰か分からないように仮面を着けるのはどうかと言う事で小道具的に用意させて頂きました」

 悪戯っぽく笑いながら酒井さんが数種類の仮面を広げる。

「まさかドレスに仮面で打ち合わせに行くんですか?イヤですよ!なんなら身代わり立てて連れて行って着替えようと思ってたのに」

  ちょうど事務所に背格好の似た子が居るので、帽子にマスクで隠して現場に連れて行こうと画策していた。

「どれかの衣装でと言われてるのよね……」

 仮面はどちらかというとU:niONが気に入ってこれみんな着けて現場入りしようよ!と大ウケしている。

「そんなおかしな集団社屋に入れて貰えないです……あれ?そういえばまだ打ち合わせの場所をお聞きしていなくて……連絡無いですよね?高橋さん」

「言われてみればそうですね。衣装で、撮影も入る、となると社屋ではない?この人数あの応接室では入らないですね」

 以前の打ち合わせをした部屋を思い出して、うーん、と唸っている。

「あら、聞いてない?Sホテルのホールって私は聞いてるんだけど……」

 しれっと酒井さんがそう言い出した。

「顔合わせがホテルのホール?!」

「そのままお披露目ってこと?」

 サプライズのつもりなのか、まさか忘れているのか……。

「こちらから問い合わせた方が良さそうですね」

「ホテルならさ、変な集団で行くのアリじゃない?撮影してるんだし、皆顔隠して真ん中のゆきさんを守って会場入りするとかさ」

 みんなすっかり乗り気だ。

「ちょっとした物語仕立てでなんならKnightのプロモーションみたいな感じになるよね」

「なるほど、それならメリットがありますね。ゆきさんどうですか?」

 高橋さんまで……みんな何故かどうしても私にそれを着けて歩かせたいらしいようだ……。

「わかりました。打ち合わせの最終確認の際に一応提案してみます……」


 


 複数の取材陣が取り囲む中、九人の黒スーツに仮面の男性達と、藤色のドレスに仮面の女性が車から降り立ち、ホテルのエントランスに向かう。背の高い男性達に守られて、女性の姿はチラチラとしか見えない。そしてそのまま階段を登ってホールへ入って行く。

 奥田さんに仮面の件を提案したところ、話題になって良いですね!と大喜びで受け入れられてしまった。ポスター掲示、CM放送までは顔を隠し通して焦らしましょうと言う段取りになった。

 ホールに着くと一旦取材陣は外に待機させて、ブランド側とモデル・YUHKI、U:niONの顔合わせを行った。ホールでは、以前のメンツに加え、N社担当、メイク元木、スタイリスト酒井が揃っていた。

「こちらが今回モデルに決定しましたYUHKIさんと、U:niONの皆さんです。徹底した情報管理の元、ギリギリまで名前の発表は行いません。YUHKIさんは復帰されてから名前を出さずにU:niONの皆さんの楽曲『Knight』MVやブックレットに出演されている為、そちらとの相乗効果を狙って盛上げて参りたいと思っております。

「U:niONです!よろしくお願いします」

「YUHKIです。よろしくお願いします」

「フラット社チーフマネージャーの高橋です。こちら二組のマネジメントを担当致します」

「U:niONの皆さんは、アイテムごとに三名ずつ別れて頂いてこちらのモデルに決定した三名です、とそれぞれ紹介させて頂きます。そしてYUHKIさんを、ブランドイメージとして決定しましたモデルの方です、という風に名前は伏せて発表させて頂き、CM放送開始まで楽しみにお待ちください!といった流れで進めて参ります」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「今後の撮影スケジュールにつきましてはお手元の資料をご覧ください。その期間でお互いのスケジュールを合わせて行いたいと思います」

 大体電話やオンラインでのやり取り等で確認していた内容になっていたのを確認して高橋さんが調整に動く。

「わかりました。では各媒体への発表、撮影の間に日程を決めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「ありがとうございます。ではこちらの進行は広報部田邊、支社長四方田が進めて参ります。スケジュールの打ち合わせはわたくし、奥田が担当ですので、高橋さんとN社、メイク、スタイリスト各担当と裏の方で調整させて頂きます。モデルの皆さんはメディアのプレお披露目ということで、田邊の方から説明をさせて頂きます。それではスケジュール調整を行いますのでこちらへどうぞ」

 裏方部隊が離れ、表方がモデルに説明をしてくれる。

「改めまして、広報部の田邊と申します。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「まずは舞台の方をご案内させて頂きます。アイテムごとにセットが組まれております。会場入りの時と同じようにYUHKIさんを囲んでエスコートして頂き、そのままそれぞれ決めさせて頂いておりますアイテムの前にお進みください。YUHKIさんはセンターへお願いします。それぞれ椅子が用意しておりますので、そのまま着席してください。紹介を順番にいたしますので、その時に立って一礼して頂いてすぐに着席をお願いします。少し撮影時間を取らせて頂いて、またU:niONのエスコートで袖へ帰って頂くという流れになります」

 舞台上にはアイテムが飾られたセットが組まれていた。豪華な椅子がそれぞれ用意されており、座るだけで絵になる作りになっていた。

「素敵なセットですね。センターに座るのがおこがましいです」

「何を仰いますか。YUHKIさんのモデル起用は満場一致での決定だったんですよ?」

「そうだよ。入りの時マスコミ俺らよりYUHKIさん狙いだったじゃん」

「それは隠すから見たいだけで……」

「仮面しても俺らバレバレだもんなぁ。ゆきさんは全くわかんないわ」

「ホンマに毎回感心するわ」

 MVの時と同じ藤色のドレスで匂わせてはいるものの、仮面とできるだけ厚ぼったく派手に塗った口元で、顔は全くわからない。腕もドレスと同素材のレースのロンググローブで覆われて傷も見えないように配慮されていた。デザイナーが腕を隠す新しいデザインが浮かんだ、これぞ怪我の巧妙だと楽しんでいたそうだ。

「それでは皆さん、袖に戻ってスタンバイお願いします。取材陣が何か質問してきても一切答えないでいいですからね。椅子に座ってカッコつけるだけでいいので。よろしくお願いします」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

「よろしくお願いします!」

 まさかマイクすら付けずに発表するとは思いもしなかった。もったいぶって、『Knight』のMVやCDに話題が行くようにする。そして今日のBGMになる曲がCM放送開始と共に発表される新曲の音源初披露となる。U:niONに合わせてブランド側から発注して創られた、U:niONも初めて聞くどころか、これから皆で作詞をして欲しいと言われているまだ未完の曲だ。新しい試みばかりで、U:niONも私も楽しみで仕方ない。


 ライトに照らされた司会者が進行して行く。

「来年度、私共のブランドは日本支社50周年の節目となります。節目の年を彩るヒト、モノを四月より順次発表してゆきます。まず予告として、本日は一年を彩るモデルの皆さんが決まった事をお知らせしたいと思います」

 ここで合図があり、BGMが流れ出す。U:niONは新曲に聴き入っている。そして、ステージに呼ばれ歩き出す。隠されたままステージ中央まで行って椅子に座ると、高い肘掛けに肘を付いてできるだけゆったりと深く腰掛けた。U:niONは三人ずつに別れてそれぞれアイテム前の椅子に座る。後方を見るわけにもゆかず、こちらから様子がうかがえないのがかえって気になってしょうがない。

「メンズアパレルはこちらの三名です」

 リュウ、カイ、アキの三人が立ち上がって一礼。モデル経験や、高身長で衣装映えする三人。

「メンズファッションアイテムはこちらの三名です」

 ナツ、リツ、ソウタの三人が立ち上がって一礼。バッグやアクセサリーが好きで詳しい三人。

「メンズコスメはこちらの三名です」

 ハル、トウヤ、ジュンの三人が立ち上がって一礼。コスメ好きで、違うタイプの三人。それぞれ得意な分野で発揮できるように構成した。

「そしてレディースアイテムと五十周年の顔としてこちらの方が務めてくださいます」

 来た。カメラが一斉に射抜いてくる。椅子でリラックスした格好から静かに立ち上がり、不敵に笑ってカメラを射抜き返す。演劇のカーテンコールのように、スカートを摘み、お辞儀をして椅子に戻った。

 それでは少しの間撮影時間を設けます。なお、ご質問等に関しましては一切受け付けませんのでご了承ください。

 座ったまま、時々ポーズを変えながら撮影が開始した。数分もすると数名の記者が女性モデルは誰ですか?男性モデルはU:niONですよね?等質問してきたが、こちら側から応えることは一切なく、質問が飛び出したところで、モデルに立ち上がって退場するように指示が出た。すぐさまU:niONがYUHKIの周りに壁を作り退場した。


「皆さん素晴らしかったです!モデルが入って初めて完成するセットって思っていたんですが、想像以上でした!YUHKIさん素敵でした!」

 舞台裏で奥田さんが興奮しながら言う。打ち合わせを早々に終了して、取材陣の後ろからステージを裏方部隊皆で見ていたそうだ。

「ゆきさん後ろから見ても凄い存在感あったよ。前からの映像見たすぎる」

「前からの映像は私も見たいです。後ろのU:niONの挨拶が見られなかったので気になって」

「PR用に動画も写真も撮ってありますので、取材陣がはけたらチェックして頂きますね。写真は発表までの宣材としてポスターにもしようと思っています」

 色々始まっている実感が湧いてくる。

「こんな大きな仕事は初めてなので今更緊張してきました。U:niONがいなかったら絶対出来ない経験ですね」

「僕たちこそゆきさんがいなかったら絶対出来なかったよ。ありがとう」

「緊張なんてしてる暇ないくらいに目まぐるしくなりますよ。覚悟しておいてくださいね皆さん」

「うおー、楽しみやー」

「俺らいるから大丈夫やで、ゆきさん」

「俺らにはゆきさんがいるしね」

「ありがとうございます」

 お互いに支え合い、感謝し合う。

「本当にYUHKIさんはU:niONの一員なんですね。良かったです、U:niONとYUHKIさんの両方にモデルをお願いできて」

 田邊さんが感心してそう言ってくださった。

「ありがとうございます!これからよろしくお願いします!」

 お礼が見事に大合唱になる。

「みんなタイミング良すぎ」

 思わずそう言って笑うと。

「もうさ、みんなゆきさんが挨拶するタイミングわかっちゃってるんだよね」

 カイがそう言うのでみんなでひとしきり笑った。

「マスコミ全てはけました。こちらへどうぞ」

 葛城さんが撮影隊の方へ案内してくれる。

「どうぞこちらで画像のチェックをしてください。まだ時間はありますので、ポスター用に今から撮り直しても良いかと」

「そうですね……少し暗めですがどうしますか?モデルをわからないようにこのまま行くか、アイテムをしっかり見せる為に撮り直すか……」

「アイテム自体新作では無いのですが……少しお待ちください」

 奥田さんが四方田支社長にお伺いに行くと、直接本人がこちらまで来てくださった。

「見比べたいのでもう一度撮らせて頂いてもよろしいかな?」

「もちろんです。せっかくなので数パターンのポージングをしますか?座るだけでなく囲んで私を隠したり……後ろ向きなんかも面白そう」

「なるほど。YUHKIさんさすがですね。では、数パターンお願い致します」

「はい。承知しました。ステージの方へ戻ってスタンバイします」

 U:niONにも目配せしてまたステージへ向かう。

「写真悪くはなかったけど、ポスターになるならもう少しポージングした方がいいよね」

「まさかポスターになるとか思ってへんかったからなあ。ゆきさんナイスやわ」

 彼らもプロなので、こだわりがある。

「とりあえず座ってもう少しポージングして、立って横並びばかりだったから縦に並ぶ?重ならないように。後は三人で両横と後ろに立って手で私を隠そうとするとかはどうですか?」

「三人誰が行く?」

「それぞれのチームから一人ずつ、バランスを見て……」

「それだと年上三人だね」

 ナツが身長で弾かれないようにすぐさま言う。

「ナツくんに言われたらしゃーないな」

「じゃあ、一番身長差あるから俺後ろに立ってこうかな?」

 ハグ手前、腕を回して包み込む。

「身長差言われると何も言えない……」

「手は開いて、少しずらして顔に掛かるくらいと……そう、喉元くらいかな。二人は身体掛かるくらい近くで手のひらはこっち向きでハルが横に、ナツは斜め下?」

 見栄えが良いようにポーズを考えていく。

「こうかな?ねえ、アキバランスみてよ」

 ナツが大きな声でアキに確認する。

「カッコよ。めっちゃユキさん守られてる感」

「ええなぁ。やっぱさー、ちょっと変わってよ」

「そうだよ。変わろ?」

 年上を押しのけてくるリツとカイから三人がその場を死守するが、案の定もみくちゃにされる。

「こらこら、衣装!いつもの楽屋じゃないのよ!」

 着いて来ていた酒井さんと元木くん、奥田さんが笑っている。

「いつも通りで安心したわ」

「相変わらずまぁ……」

「いつもこんななんですか?」

 奥田さんが唖然としている。

「わかったから!順番にしましょう!見て決めて貰えばいいから!」

 そう言わないと、このままでは収まらないのは目に見えている。

「やったー!」

 年下六人は大喜びしている。

「奥田さんすみません……酒井さんと元木さんみんなの衣装とメイクお願いします」

「お願いします!」

「YUHKIも、な」

「YUHKI“さん”ね?元木“さん”」

 兄ズが迫力満点でハモる。

「カメラマンとか監督呼び捨てでも何も言わなかっただろ、お前ら!」

「お前らってやめてくださいね?元木“さん”U:niONです。U:niONのリュウとナツね?」

 ついついお前らにカチンときて冷たく言い放つと、小さくなってすみませんでした、と返ってきた。

「ゆきさんに怒られてやんのー」

「ジュン、子供みたいに囃さない」

 トウヤにたしなめられているジュンにみんなでまた笑って、ステージに上がった。


 ポスターは結局ブランド側が決めきれなかったそうで、数種類あちこちに掲示される事になり、事務所にも届けられていた。どうせU:niONはバレバレだからと、ずらっと貼られていた。

 中でも三人ずつでYUHKIを隠したバージョンは3つでひとつのポスターにされ(これも選べなかったので苦肉の策らしい)かなり密着して見える為にまた随分話題になっているようだ。


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