決勝戦、開始!
――君の速さを、読み切った。
次は、未来を先読みする。
【Aパート:開幕の号砲】
満員の観客。轟音のような歓声。
その中心で向かい合うのは、互いを知り尽くしたふたり。
雷光の如く立つ少女、ナナセ・ユイ。
魔導書を展開する戦術魔導士、黒崎レイ。
「よーし……ここが、最終章ってわけだね!」
「――君の雷がどこまで届くか、見せてもらおうか」
審判のカウントが入る。
「ファイター、スタンバイ……バトル、スタートッ!」
【Bパート:速度と戦術の読み合い】
開始と同時、ユイが動いた。
「《雷鳴の舞姫・展開式》ッ!」
彼女の身体が雷撃とともに、視界から消える。
次の瞬間にはレイの背後。そこに雷撃が落ちる!
「(読んでる……!)《魔導盾・局所展開》!」
レイが咄嗟に防御を張る。が、ユイは既に次の位置へ。
3歩先を読むように、雷が舞う。
「さぁて、こっから先は――踊ってもらうよ!」
雷の軌道は乱れず、だが予測不能。
その一撃一撃が、身体能力と異能による空間跳躍の複合動作で成立していた。
(動きの傾向が見えない……いや、これは前回と違う)
【Cパート:《簡略開頁》発動】
レイは後方へ跳び、詠唱のタイミングを稼ぐ。
「《簡略開頁──発動》……!」
魔導書が自動で次のページを捲り、複数の術式が同時展開。
そのとき、観客席でもどよめきが起きる。
「詠唱してない!?」
「複数魔法の同時展開!?」
「あの術式、何だ……?」
ユイが前方から斬り込む。
だが、そこには未来予測に基づいた魔法陣がすでに浮かんでいた。
「《強制迎撃:未来行動予測式》」
バリアではない。攻撃でもない。
――ユイが、ここに来るであろう未来に魔法を発動させる。
「(っ!? なんで、そこに魔法が出てくるのっ!?)」
「《簡略開頁》……これは、詠唱をスキップする技じゃない。
次に必要になる術式を、先に読み込ませる機構だ」
つまり、レイは未来の戦況を想定し、術式を前借りしているのだ。
「次の一手が分かっているなら、詠唱なんて不要だろう?」
【Dパート:応酬の極致】
ユイが食い下がる。
「ふっ、そんなの関係ないよ! こっちだって、雷の未来見せてやる!」
「《雷鎖跳躍・第弐式──サンダー・バインド》!」
空間を跳ねながら雷の軌道を描き、レイの足元を縛る電撃!
だがレイも負けじと展開。
「《簡略開頁:術式書換》――雷の属性耐性を即時付与」
「!? 属性変換まで即応……!?」
速度と反応が、互いに人間離れした速さで応酬される。
誰にも止められない、誰にも読めない。
だが、当人たちは確かに、言葉を交わしているようだった。
剣も、雷も、魔法も――お互いを理解する手段としての戦い。
【エンディング寸前:技の極みへ】
ついに、決着の気配が漂い始める。
レイの術式数が限界に近づき、ユイの異能も消耗の兆し。
(あと一手……!)
二人が同時に動き出す。
「《最終跳躍:雷閃飛翔・エンドライン》!」
「《簡略開頁:最終頁式──転写干渉》!」
光と雷がぶつかる――!