エピローグ『そして、書は続く』
世界は静かに巡り、季節が変わる。
だが彼らの戦いは、確かにこの場所に痕跡を残した。
【1.静かな日常】
それは、戦いから数日後のことだった。
黒崎レイは、街の小さな書店の奥、ひとり静かに椅子に座っていた。
本を読むためではない。ただ、何もない時間を味わっていた。
目の前のテーブルには、閉じた魔導書――《深淵の書架》
異能の主であるはずのそれも、今はただの装飾のように静かだ。
(静かな時間。……こんなにも落ち着かないものだったか)
あれだけ欲しかった終わりは、手にしてみれば意外に小さく、
けれど、確かな意味を持っていた。
【2.届いた手紙】
カラン、と扉のベルが鳴る。
書店の主人が封筒を渡してくれた。
「君宛だよ。差出人は、雷の速達便ってあった」
レイは受け取り、封を切った。
中には、ユイからの手紙があった。
――雑な字で、けれどまっすぐな言葉が並んでいる。
『今、海沿いの街にいるよ! 風がめっちゃ速い!
でも、あんたの術式のほうがやっぱ手強かったなー!』
『次に戦う時は、絶対に負けないから。それまでに、また何ページか進めとけよ、黒崎レイ』
レイは、思わず笑みを漏らす。
「まったく……どこまでも全力なやつだ」
魔導書が、かすかに震えた。まるで応答するかのように。
【3.未来への扉】
夜。星が瞬く時間。
レイはバルコニーに立ち、空を見上げていた。
指先で魔導書の表紙をなぞる。
「俺はもう迷わない。これは戦うための力じゃない」
「未来を記すための、俺の言葉だ」
そして、確かに音がした。
パタン、と――魔導書が、自らページを捲ったのだ。
そこに浮かぶ、ひとつの未解読術式。
見たこともない構文。解析不可能な構造。
(……次の章が、始まる)
レイはその文字列に手を伸ばす。
「――ページを開け、《アビス・ライブラリ》」
【4.光と影の果て】
遠い空の下。
誰も知らぬ大地にて、
ひとりの人物が、静かにレイの方向を見ていた。
フードに隠された顔。
その腕には、歪んだ異能の刻印。
「ようやく動いたか、《書の継承者》。次に交わる時が――楽しみだ」
風が吹き抜け、シーンは暗転。




