雷と書の最終楽章
勝者と敗者の境界に、涙はない。
ただ、すべてを出し切った者たちの、静かな余韻がある。
【Aパート:終了のブザー】
イグニスアリーナ、決勝戦終了後。
鳴り止まぬ歓声を背に、黒崎レイとナナセ・ユイは静かに立ち尽くしていた。
疲労困憊の身体に、拍手が降り注ぐ。
(……終わったんだ)
レイの掌には、魔導書《深淵の書架》が静かに閉じられていた。
最後のページを捲り終えたように。
一方のユイも、汗と砂にまみれながら、それでも晴れやかな笑みを浮かべていた。
「ふふっ、最後の最後で、本気出しすぎじゃん、レイ」
「ああ。君が相手だったから、ページを使い切れたんだ」
それは感謝。敬意。そして、確かな友情だった。
【Bパート:舞台裏・仲間たちの声】
戦いの後、控室でレイを出迎えたのは、ユン・カンとセレナ・グレイスだった。
「おう、見事だったぜ、チャンピオン! けどまぁ、あと三発くらいは撃てたんだろ?」
「無茶を言うな。もう一ページも残ってない」
セレナは静かに笑みを浮かべる。
「――でも、満たされた目をしてる。今のあなたなら、どんな戦場にも立てるわ」
レイは頷きながら、魔導書を胸に抱いた。
「戦いの中で、ようやく、自分の魔法が何のためにあるか、見えた気がする」
一方、ユイも仲間たちに囲まれていた。
兄・ナナセ・タクトが彼女の頭をぽんと撫でる。
「ようやった。負けはしたけど、お前、ちゃんと勝ったよ」
ユイはきょとんとした顔で尋ねる。
「え、なにそれ……カッコつけ?」
「違う。雷はな、通った道を照らすためにあるんだよ」
そう言って笑う彼に、ユイも思わず吹き出した。
「なにそれ……うん。なんか、いいかも」
【Cパート:決勝後の夕暮れ】
その日の夕方、レイとユイは再びアリーナ跡地を訪れていた。
客席も照明もなく、静寂だけが残る。
「さて、次はどうすんの? チャンピオン様」
「まだ決めてないけど……少なくとも、ここで終わりではないと思ってる」
「だよね。あたしもまだ負けっぱなしっての、性に合わないし」
互いに並んで、空を見上げる。
夕焼けに染まる空。その向こうには、まだ見ぬページがある。
「次、また当たる時は――全速全開でいくからね」
「ああ。その時までに、もっと読み進めておくよ」
【Dパート:物語の閉幕と予感】
こうして、第〇回イグニスアリーナ――優勝は黒崎レイに決定。
けれど、真の勝利者は誰かなんて、戦った者たち自身が決めることだった。
雷と書が交錯したこの物語は、
それぞれに、何かを刻み、新たな始まりへと繋がっていく。




