7・一次元萌えと温暖化の因果関係
何とか速攻で仕上げました。というか夜に書いたほうが、スラスラかけるのは何故?
蝋燭や、鉄の処女を使い拷問を重ねた末、奏は僕達をつけていた事を白状しました。
まず、朝に「次元店に行こう!そうしよう!」と考えた奏は、駅に向かいます。途中で何人かの線をナンパしたのにフられ、失意に浸っていると、駅で僕達を見かけたそうです。
自分はフられたのに何事か!と考えた彼は、尾行を始めたとの事。早い話が嫉妬です。嫉妬乙。
そんなことして背徳感はなかったのですか?と僕がきくと、レッツ背徳と返されました。意味分からん。
僕はそんな奏に哀れみを覚え、ここから立ち去らさせるだけで、特に咎めない事にしました。流石、優しい僕。
「帰る代わりにその紙クレー!」
そう言って僕の手中にある、先程の奏を仕留めた紙を指差します。僕はそれを笑顔で、奏に差し出しました。
ビリビリ
「うわあああ、破るなあぁぁぁ!」
自分で書いた紙をどうしようが僕の勝手です。
その後、僕は拗ねて帰らない、と駄々をこね始めた奏に蹴りを入れ、段ボールに詰め、近くの川に流しました。誰かいい人が拾ってくれるといいです。商店街なのに川がある。ここは良いところですよ。
そして、僕達は本格的に商店街で買い物を始める事になりました。ちなみに奏を処刑する間、彼女はじっと僕を見ていましたが、終わると、”行く?”と聞いてきただけでした。うん、マイペース。
しかし、色んな物がありますね。右も左も商店ばかり。”新商品入荷”や”今話題のクラの新アルバム”、”遊○王カード90パーセントOFF”など人目を引く広告が多いです。さて、何処に入りましょう?
「何処か行きたいところはありませんか?」
「まかせる」
オゥシット、これは僕を試しているという事でOKですか?”どれだけ、私を楽しませられるのかお手並み拝見しましょうか”と心の中で思っているのでしょうか?…いや、有り得ないか、彼女に限って…このギャグ何回目?
ところが、この僕ときたら、女性と一緒に買い物に来たことがないのですよ!デートなど初体験!そんな僕は何処に行けばいいか皆目見当がつきません!ナンテコッタイ!
服屋はどうでしょう?……女性用の服が売っているところに行くのは……抵抗があります。では、喫茶店!……まだ九時です。
しゃ、洒落た店が思いつきません。―――ここは無難に行きましょうか…。
「なら、あそこの本屋に行きましょう」
「分かった」
僕の趣味は読書であるからして、よく本屋にはお世話になっているのです。一応、彼女も読書を時々嗜んでいるようなので少なくとも外れではないと思います。
店内に入り、漫画コーナーに行きそうになって慌てて方向転換し、ラノベコーナーに行こうとした足を手で止めたりするという痴態をおかす僕。彼女も奇異な目で僕を見つめてきます。ヤメテー。
この店、そこら辺の本屋とは比べ物にならない程大きく、かなりの品数があります。ただエロ本コーナーがな、ゲフンゲフン。
普通の文庫本コーナーに立ち寄り、陳列されている本で欲しいものがないかを物色します。
「晃」
「何ですか?葵」
オゥ、何時の間にかドもらずに名前が言えるようになってます。僕ってこんなに女たらしだったでしょうか。
「晃は、どういう本を読むの?」
「うーん、そうですねー、この中だったら”一次元萌えと温暖化の因果関係”というのが興味をそそります」
「そう…」
いや、本当に興味を引き付けられるタイトルです。作家名はきいた事ありませんが。誰でしょうね?榊奏って。
葵は何を思ったのか、じっとその本を見つめます。
「どうしました?」
「覚えておこうと思って」
「何をですか?」
「晃が、どんな本を読むのか…」
そんな事を覚えてどうしようというのでしょう?僕の個人情報を知りつくして、僕を呪い殺す材料にしようとしているのでしょうか?
「それなら、今度僕の持っている本をいくつか貸しましょうか?」
「いいの?」
「ええ、どれくらい貸しましょうか?」
「全部」
それは流石に無理です。家には官能小説もありますからね~。
結局、僕達は何も買わずに本屋を後にしました。何も買わないなんて、冷やかしか!、と言われるかもしれませんがね。でも、例の本をレジに持っていったら悲しい事を言われたのですよ。
「これはお客さんには売れませんね」
「何故ですか?」
「あんた、まだこれを読める年齢じゃないし」
年齢制限だというのか!?R18だというのか!?
「R10だからあんたにゃまだ早い」
R10って何ですか!?というか僕は中学三年生ですよ!14歳ですよ!学校の制服着ているでしょ!ホラ!
「それにしても最近の小学生は背が高いねー」
だから中学生ですって!確かに多少童顔ですけど、少なくとも小学生に間違えられた事はありませんから!
と言うような事があり、結局買えませんでした。オゥオー、ナンテコッタイ!
ところで、今の時刻は十時半です。先程、店内で物凄く論戦になりまして時間をくってしまいました。
その間葵はほとんど蚊帳の外でしたが、なにやらずっとクスクス笑っていたのを覚えています(特に僕が小学生と間違えられた瞬間)。論争が終わった後、僕が待たせた事を謝ると、寛大な心で許してくれました。
「次は何処に行きましょう?何処か行きたいところはありますか?それとも、またお任せですか?」
「後者」
校舎はこの近くにはありませんよ。……つまらないダジャレ言って、サーセン。
さて、何処に行くかPART2。しかし、今回は悩みませんでしたよ。何故なら、そこに映画館があるからさ!
「じゃあ、映画でも見ますか」
「うん。何を見る?」
「何か見たいものはありますか?」
「任せる」
オゥ、またかよ! そうですねー、普通、こういうのはラブストーリーを選ぶのでしょうが、そう言うのは僕の性には合いませんから。
”シーモネーター”も、ウーン、女性と一緒にこれを見るバカたれはいないでしょうし。何といっても、劇中の台詞の半分は”ピーッ”とかだし。
ここは、ホラーに挑戦してみましょうか?”着信無し”とか。でもなー。ホラー苦手ですしね。昔、子供の時に悪戯をしたお仕置きとして深夜に柱に括りつけられてホラー映画を延々と見せられてからは、ウマシカ、もといトラウマなのですよ。
ならやはりここは”ネコと子供の愛の物語”辺り行きましょうか。このペット愛ものなら女の子受けもしますし、妙に気取った奴より見やすいでしょうし。なによりネコミミ萌、ゲフンゲフン!
彼女も承諾し、これを見る事に決めたのですが、放映時間から考えて、先にお昼ご飯を食べたほうがよさそうです。
と言う訳なので、洒落た喫茶店に向かったのですが……
ガチャ!
「カップル」
ガチャ!
「だと!」
ガチャ!
僕達が入って来た瞬間、店の客、及び店員が全員立ち上がり、何故か僕達の方を見てきます。
え?何?僕、この店”には”何もしてない筈なのですが?流石の彼女も、驚いたようで、僕達は玄関口で立ち尽くすしかありません。
店内が静寂からざわつきに変わると、一人の髭を生やしたムッシュが歩み寄ってきました。オゥ、そのジャムおじさんを彷彿とさせる帽子から察するにコック長の様ですね。
「ヘイ!」
いや、あんたどう見ても日本人なのに、ヘイって。しかも声爽やか。
「カップルでここに来たという事は、このイベントに挑戦するという事で、よろしOK?」
そう言って、彼は、一つの紙を僕の顔に押しつけました!息がー!
「オゥソリー」
ソーリーね。ソリーって誰ですか。そう思いつつ、僕はその紙を手に取り眺め、そして、愕然としました。
僕が固まったのを見て、葵は僕の手元を見てその驚くべき内容を呟きました。
「カップル特別イベント」
何故こんなバカップルみたいな事をしなければならないのですか!?
ふぅ、ようやくデートらしくなってきました。