6・モ、モロはねぇよ
遅くなったうえに、短いです。スイマセン。
なんやかんやで、彼女と名前で呼び合うというアンビリーバボーな事になってしまいました。もしこれが誰かに知られれば……僕と彼女は恋人同士だと疑われ、クラスの男子生徒に断罪処分を受けます。アーッ、まだ死にたくありません!僕には家に嫁と、妻と奥さんが(二次元)!
とは言っても、実は僕、色恋沙汰にそこまで興味がなかったりします。そりゃ、彼女は綺麗だと思いますが、恋愛感情かと聞かれれば、ノーと断言できますね!……多分。
ところで、駅から出てから僕は笑いが止まらないのです。勿論、笑いダケを食べたからだとか、脇をくすぐられているからだとか、発狂したからだという訳ではありません。僕の横を歩いている彼女を見た瞬間に、鼻血を出して倒れていく男どもが愉快で仕方ないのです。ククク。
しかも、今日は天下の土曜日であるからして、買い物に来ている客で駅前は賑わっていますから、戦死者続出。しかし、皆”悔いはない!”と言いながら倒れていますからよしとしましょうか。でも、道端で横にはならないでください。
「見てください!人がゴミの様です!」
「………晃」
何でしょう?あ、あ、あお、葵、…さん。……未だに慣れませんね。というか、心で呼ぶだけでも、どもるって僕はどんだけシャイボーイなのでしょう?そもそも結局さん付ですし。
「いくらなんでも、やり過ぎだと思う」
僕は自分がヘタレである事を再確認した後、横にいる秋月さんを見ました。やっぱりさっきのギャグは際どすぎましたか?でも、目が~、目が~と同等の頻度で使われている有名な言葉ですし。なんなら、”これがラピュ○の雷だ!”にしましょうか?でもこちらの方が危なくありませんか?著作権的に。
「西田君の事」
今更!?あの一件から少なくとも十分は経っていますよ!マイペースもここまで行くと、行くと……可愛いじゃないですか!
ただ、彼女の眼は本気だったので、僕も真摯に答えます。さて、種明かしをしましょうか。
「良く考えてみてください、本当にニッシーが痴漢に間違えられたとすれば、被害者であるあなたも連れて行かれる筈でしょう?」
「あっ」
「そうです。どんな事件も被害者がいなければ、立証できないのです。痴漢ならなおの事」
もし立証できるのであれば、冤罪事件が瞬く間に増えてしまいますよ。冤罪は駄目、ゼッタイ。
でも、痴漢って、実は理不尽な所もあったりしますからね。なんでも、男性が電車で携帯電話を使っている女性を注意したら、痴漢扱いされて有罪になった事件があるらしいですし。…恐ろしッ!
おっと、脱線しました。まあ、早い話が、先程ニッシーを連れ去った人達は、痴漢だと勘違いして彼を駅員のところに連れて行った訳ではないという事です。
「でも、だったら何で…?」
彼女は小首を傾げています。どうやら、彼女の癖の様ですね。可愛すぎて、一般の健全男子には核兵器並みの威力を誇る癖ですよ。
僕は少しクラリときながらも、周りで倒れている人達と同等の存在になりたくない一心で足を踏ん張り、転倒を回避します。そして説明を始めました。
「先程、ニッシーを連れ去った人達はお爺様の手先です」
「警視総監の?」
驚いた方もいるかもしれません。そう、この僕のお爺様は若い頃たくさんの難事件を解決した名刑事であり、今は警視総監の座についているという超お偉いさんなのです。名を河合翔と言います。そして、僕はその人の血を受け継いでいるのです!凄いでしょ!さあ崇めなさい!……調子に乗ってスイマセン。
さて、その警視総監の僕のお爺様ですが、実は肩書とは裏腹に、物凄く子供っぽい性格をしており、僕の運動会の日は保護者リレーに参加し、ぎっくり腰で入院したり、僕に彼女が出来たと噂が流れれば、探偵を何人か雇い、僕の周辺を調べさせるなどの事をしたり。
でも、その行動は全く、無意味でしたがね!何故なら、僕は、彼女が出来た事など、一度も、ありませんからね!彼女いない歴=年齢ですよ!悪いですか!悪くありませんよね!僕は作ろうとしてないだけですから!その気になれば作れますよ!……きっと、恐らく、多分…、お願い、誰か認めて………。
まあ、つまりは、多分先程両親のどちらかがお爺様に、僕達が遊びに行く事を連絡したのでしょうね。そして気になったお爺様は、人を雇い、僕達をつけさせたという訳ですよ。朝から、あの男達ついてきていましたからね。というか、警視総監なのに、そんな事をしていいのでしょうか?
僕は、そいつらを追い払うのと、ニッシーに復讐するために、ニッシーをおとりにして、まんまと逃げおおせたという訳ですよ、ベイベー。
それにしても、いきなりの僕の”キャー、痴漢”は驚いたでしょうね。警視総監の孫が、人を陥れようとしているのですから。警視総監の体裁を守るためにも、ニッシーを保護せざるを得なかったようですね。計画通り!
しかし、あの時のニッシーの顔と言ったら愉快で仕方ありませんでしたね。あの恐怖にひきつる笑顔は!クックック。…僕はSではありません。
説明を終え、一度息をついて、彼女を見ると未だに納得がいかないような顔をしております。スイマセンね、説明下手で。
「でも、なんでそこまでしたの?」
「え?貴女が言ったからじゃありませんか」
「私が?」
そうです、貴女言ったじゃありませんか?もう忘れたのですか?まさか、若年性アルツハイマー病?幾らなんでも早すぎじゃありませんか?
「言ったじゃありませんか、二人きりでって」
「――あっ」
そう言うと、彼女は赤くなり俯く。どうやら、忘れてしまっていた事が恥ずかしいようですね。気にする事はありませんよ。僕は、”やーいやーい、お前の母ちゃん、出べそ”とか言うようなガキではありませんし。いや、本当に。
……
「あ、葵。まだ一人ついてきているようです」
「えっ?」
なかなかのテダレの様ですよ。今まで、全く気配を感じませんでした。でも、きっと朝からつけてきていますね。こんな事が出来るのは、奴ぐらいです。
しかし、僕は、奴をノックアウトできるアイテムを常備しているのですよ。僕はポケットに手を突っ込み、一つの紙を取り出しました。それを開き、相手に見せます。
「ブッ!」
奴は鼻血を出し、周りの人達と同様倒れます。彼女はそれを見て目を丸くしました。まあ当然です。
僕は電柱の陰に隠れている、奴の近くに歩み寄ります。それにしても、何でこんなもので鼻血を吹くのでしょうか?
「奏、何でいるのですか?」
「モ、モロはねーよ!」
電柱の陰に隠れているのは奏でした。鼻を押さえながら、地面をのたうちまわっています。
しかし、こんな線の何処が良いのでしょう?僕の先程見せた紙には一本の線だけが書かれています。昔奏対策をしようと、思考に思考を重ね、線を書けばいいのではという結論に至り、一度他の線を見せたところ”ツ、ツンデレはねーよ!”と言って鼻血を吹き出しておりました。
これは使える、と思ったのですが、一度見せると免疫ができるようで、鼻血を出さなくなり、毎回違う線を書きポケットに入れております。しかし、三十メートルも離れているのに良く分かりましたね。今回のコメントは、モロ、ですか。全く理解できません!
「さて、何で、こんなところに居るのですか?」
「も、もっと、自分の身体を大切に―――、だがそれが良い!」
「何かいい残す事は?」
「ま、待ってくれ!俺の家には法線と言う名の嫁と、奥さんの斜め23.4度の斜線と、妻の車線が!」
嫁、奥さん、妻って同じじゃないですか!自分を棚に上げるのはいけない事です、うん。というか家に車線って、どんだけですか?
さあ、どうしてくれようか、と僕が思っていると、彼女が後ろからやってきました。うん、前にも言いましたが、小走りをしている姿も素晴らしい。
「何で、榊君が?」
何故に、僕に聞くのですか?葵。
次は早く更新したいです(あくまで希望)