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4・娘は大切にしてください

短いorz

今回はコメディーなしだな、スイマセン

 「ここですか………」


 お父様の足の怪我を、お母様が手当てしているのを見ているのに耐えられなくなった僕は、財布だけ持ってそそくさとウィンターヒルズに向かいました。

 いや、だってね?甘甘なんですよ?やる事やる事が。確かに唾液は傷口につけると治りが早くなりますが、幾らなんでも足を舐めるのはどうかと思いますよ?お母様。

 あんな姿を僕は毎日見せられているのです。故に僕はバカップルと言うものがいかに愚かな物かを身をもって知っています。

 何が言いたいかと言いますと、僕は何がどうあってもバカップルにはなりませ―――ど、読者のみなさん?何ですか、その疑わしそうな目は!

 僕は外に出た後、ウィンターヒルズのある方向にゆっくりと歩いて行きました。それにしても、今日はいい天気で、絶好のお出かけ日和です。春のおかげか暑くも寒くも蒸しっている訳でもなく非常に心地いい環境です。

 気分が良くなったので口笛を拭こうとしましたが失敗し、小学生くらいの子供に笑われた事が物凄く腹立たしいです。まあ、幾ら僕でも子供に手出しはできませんから、通りすがりの高校生くらいの方にラリアットをかましました。


 「って、ニッシーだったのですか?」

 「ゲッホ!お前な、いきなりラリアットはねーだろ!それから、昨日はよくも生き埋めにしてくれたな!」

 「ネチネチうるさい人間は嫌われますよ?」

 「埋められて、文句を言わない奴が何処に居る!」


 きっといますよ。なんたって世界は広いんです。あ、そうだ!恐らくドMの方なら、泣いて喜ぶのではないのでしょうか。


 「そんな奴いるか!」

 「何で心を読めるのですか!」

 「そんな奴いるか!」

 「じゃあ、何で読めたんですか!」

 「そんな奴いるか!」


 駄目です!会話が成り立っていません!ネジが一本どころか三本は抜けていますよ、この人。


 「そんなや―――ゲフベフドフ」


 もう良いです。同じ言葉ばかり言わないでください。語彙力以前の問題です。ラリアットで気絶余裕の様です。

 無駄な体力を使いながらも、ウィンターヒルズに辿りつき、取り合えずA号棟から探そうとエントランスに入り込みました。

 そして、郵便受けの方を見て探そうかと振り向く前に目の前のプレートに気づき、冒頭に戻ります。


 101 秋月


 まさか、A号棟の一階に居るとは思っていませんでした。まあ、探す手間が省けましたがね。


 「逆襲じゃ~!」


 って、ニッシー!何でこんなところに?エントランスから入って来た彼のパンチを、僕は素早く横に避けます。そして、殴る物を失った、ニッシーの右手は勢いを止めきれませんでした。


 ピンポーン


 そのまま、秋月さんの家のインターホンを押しました………。ど、ど、どうしましょう!

 っておい、ニッシー!逃げてんじゃないですよ!これどうしてくれるんですか!今度会ったら殴るだけじゃすませません!家畜の餌にしてやる!

 今の時刻は午前七時半。人様の家を訪ねるにしては、あまりにも時間が早すぎて迷惑に思われてしまいます。

 簡単にいえば、このままいけば僕は彼女に常識知らずのバータレだと思われてしまうという事です!悲劇!

 そうだ、このままバックレれてしまいましょう。ピンポンダッシュになりますが、僕の仕業だとはばれたくないのです!よし、今のうちに



 ”はい、どなたでしょうか?”


 イーヤー!一足遅かったようです!インターホンから、秋月さんとは違う女の人の声が聞こえてきました。しかも、このインターホン、よく見ればカメラ付き。つまりは、相手には自分の姿がしかとみられているのです!

 これで、もう秋月さん視点の僕の評価は最低です!ニッシー!責任とれ~!

 ところで、このインターホンの声の女性は誰でしょう………彼女のお母様に決まってます!お母様からの評価も最悪とかオワタ!

 どうしよう、何を言おうか?うわー、良い言葉が思いつかない!


 ”あら、その制服。もしかして葵の友達?”

 「は、はい。そうです」

 ”あらあら、御免なさいね。まだあの子寝てるのよ”


 いえ、休日の七時半ならまだ寝てる人の方が多いでしょう。それにしても、制服着ていて助かりました。何とか会話に持ち込めました。


 ”でも、もう少しで起きてくると思うから、良かったら上がっていって”


 え?今何と?上がっていけと?幾ら自分の娘と同じ学校の制服を着ている人間だからと言って、知らない人を何の躊躇いもなく家の中に招き入れる精神が分かりません。僕なら、即座にインターホンを切りますよ。

 ってまだ、僕と彼女は出会って数十日ですよ?家の敷居に上がるには早すぎませんか?やばい、なんか心臓の鼓動が速くなってきました。

 こ、ここは断らないと!


 「べ、別にいいです。また来ま―――」

 「―――さあ上がって」


 何時の間にかドアが開き、一人の若い女性がこちらに向かって手招きをしております。早い、まるでジャパニーズ忍者。

 それにしても、綺麗な女の人です。黒のショートの髪型にボンキュッボンのナイススタイル。顔立ちは何となく秋月さんに似ていますね。

 ちょっと待ってください。と言う事は、この人秋月さんの母親ですか?嘘~!どこからどう見ても二十代です!

 僕は、その女性をみて少し呆けた顔になっていたと思います。秋月さんの母親との初対面が呆け顔って………。


 「どうしたの?入っていきなさいよ」


 お母様は僕を手招きします。おっと、そうだった!断らないと!


 「いえ、大変恐縮ですが、また後で来ますから―――」

 「何だ、客か?」


 また遮られましたよ。僕の台詞に何度かぶせれば気が済むのですか?

 その声の主は、秋月さんのお母様の後ろから現れました。

 髪型は茶髪のベリーショート、肉つきも良く健康的な身体に、多少いかついながらも、まず間違いなくイケメンの部類に入る顔立ちをしております。

 この男性が彼女の家から出てきたところを見ると、彼が彼女のお父様と考えて差し支えなさそうですね。

 その男は、煙草を加えており、僕を一目見ると歩み寄ってきました。な、何ですか?

 その前に朝から煙草を吸うのはどうかと思いますよ?というか、煙草自体身体に悪いのですから。

 って、そんなに近づかないでください。僕煙草の匂い嫌いなんです!あれ?何も臭わない?何故に?

 そんな疑問を抱いていると、彼は僕の全身を舐めるように見ます。やめて!男に見られても嬉しくないのです!


 「な、何ですか?―――って、その煙草火がついていませんけど?」

 「ああ、こりゃチョコだ」

 「チョコ!?」


 ああ、確かCMかなんかでやってましたね。煙草型のチョコ。実際に咥えている人は初めてみましたが。


 「その制服からすると、葵と同じ中学のようだが、何しに来やがった?」

 「いや、あの」


 そんないかつい顔で僕を見ないで!凄くドスの利いた声ですよ。しかも言葉遣いが汚いです。こんな人から、あんな穏やかな娘が生まれるものなんですね。

 ああ、そうか。きっとこの人の影響で彼女は”連れていく”と”拉致”という言葉をごっちゃにしているのか。


 「おい、答えやがれ!」


 ヒィ!少し物思いにふけっていたら、何も答えない僕に痺れを切らしてか、今にも掴みかかってくる勢いのお父様。

 やっぱり、この人のせいで、彼女が変な事を言う様になったんだな、ウン。

 でも、しょうがないことなのでしょうね。自分の娘のところに男が来たら普通警戒します。僕なら、その男を再起不能にしますね。

 つまり、僕も再起不能に?ヤメテー。


 「え、っと、今日は秋月さんと、遊びに行く約束をしていまして………」

 「…………」


 僕が絞り出した声を聞くと、お父様は懐を探り財布を取り出しました。そして、幾らかの万札を僕に向けてきました。

 え?これを僕に?何故に?僕は理由を考え、そして、一つ思い当たる節がありました。

 手切れ金です!つまり”金払うから、もううちの娘に近づくんじゃねーコンニャロ”と言う事です。

 それなら、受け取る訳には―――

 

 

 

 

 

 「持ってけ、ホテル代だ!」

 「行きません!」


 何を言い出すんですか、この父親!遊びに行くってだけで、ホテル代を出す父親が何処に居るのですか!


 「何を言う!ホテル代だぞ!ホテルはホテルでも、ラブホテルだぞ!その代金がいらないとはどういう了見だコンニャロ!」

 「あなたこそ、どういう了見ですか!お母様の方からも、何か言ってやってください」

 「今日は赤飯にしないとね。それから他にいるものは―――」


 貴方達!もう少し娘を大事にしてください!大体知らない男に、ホテル代持たせて自分の娘と遊びに行かせるなんてどういう考えですか!?と僕がまくしたてると


 「娘の友達が悪い奴な訳がねーだろ!」

 「そうですよ」


 頭が痛くなってきました。この人達、もしかしたらうちの両親並みに馬鹿かもしれません。


 「それに昨日、葵の奴。すげー嬉しそうな顔してたしな」

 「そうそう、あの子の鼻歌、久しぶりに聞いたわ。きっと今日遊びに行くのが凄く楽しみだったのね」


 え、まじですか?そ、それはすごく光栄ですが、リ、リアクションに困りますね。


 「何時も朝は六時に起きるのに、こんなに遅いのもなかなか寝付けなかったからに違いないわね」


 子供ですか!楽しみすぎて、夜中眠れないって大人びている彼女からは考えられないですよ。きっと、他の理由です。


 「お母さん、お父さん、何かあった?―――あっ」

 「あっ」


 少し騒がしくしていたからか、彼女が玄関口にやってきて僕と目が合います。それと同時に彼女は母親の背中に隠れました。

 もう既に起きていたようでパジャマではなく、黒を吉兆とした大人びた衣服でしたが、まだ多少寝癖が残っております。

 というか、何で隠れるんですか?


 「朝っぱらからお前の顔見て気分が悪い」


 なんて言われたら僕は投身自殺をしますよ。勿論彼女は言わないでしょうが。


 「な、何で?」


 何でいるの?と言う意味でしょう。まあそうです。約束は午後一時からですからね~。


 「そうそう、待ち合わせ場所を決めるのを忘れていたいましたよね?」

 「―――あ」


 彼女自身は今の今まで忘れていたようです。そうして、僕がここに来るに至った理由をかいつまんで話しました。

 その後、どうせなら今から行こうという話になり、彼女が支度している間、僕は両親二人から質問攻めに遭いました。


 「さあ、何回やったか言え!」

 「何をですか!」

 「×××に決まってんだろコンニャロ!」

 「伏字!そこ伏字!ってかそんな事やってませんよ!」

 「じゃあ、キスはしたの?」

 「してません!」

 「何もしてないだと!まさかてめえ!うちの娘を弄んでるんじゃねーだろーな!?」

 「何でそうなるのですか!?普通、そういう事をすることを弄ぶって言うのでしょ!?」

 「じゃあ、私とキスしましょ」

 「接続詞がおかしい!?なにが、じゃあ、ですか!しませんよ!」

 「貴様!俺の女に手を出したら許さねー!」

 「や、やめ!」


 コキン(男のシンボルを蹴られた音)


 「~~~!」


 こと~ばに出来ない ラーラーラ、ララーラ

 お返しじゃー!僕もミドルキックを繰り出します。


 「~~~!」


 玄関前で悶絶する男二人。朝早くであったから、人がいない事が救い。いたら、僕の評判が最低ランクになってしまう。


 「勿論冗談ですよ。私はあなた一筋ですから」


 そう言う冗談は言わないでください! 

次回ようやくデート。しかしかける気がしない

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