3・犯罪者にはなりたくない
なんか少し短いかな。主人公が真面目だという設定がなくなっている今日この頃。
ピ、ガチャ
朝日が差し込むベッドの上で、一人の美少年が目覚まし時計を止めて、上半身をおこし軽く伸びをしました。美少年=僕です、文句ありますか?
しかし、おしいですねー、毎回どうしてもピっと鳴ってしまう。何とか、一回もなる前に止めることはできないものでしょうか?しかし、もし出来たところで朝の目標を失い、以前のように日が沈むまで寝る事になるでしょうが。まさにニート。
僕は寝ぼけ眼で、まず片手を動かし目覚ましの横に置いてある眼鏡をかけます。そして、視界がくっきりしたところで、時計で時刻を確認。
「午前六時ですか」
ところで、今日は土曜日で、学校はありません。なのに僕は何故こんなにも早起きをしているのでしょうか?簡単な話です、僕は毎朝早く起きないと気が済まないからです。
勿論嘘。大抵休日は目覚ましをかけずに寝て、八時に目が覚めます、午後の。では何故か?
簡潔に言いましょう。今日は秋月さんと出かける約束をしたからです。
「すみません、よく聞き取れなかったので、もう一度言ってくれませんか?」
夕焼けをバックに、逆光で表情がよくわからない(とはいえ恐らく何時ものクールフェイス)彼女に僕は頼みます。いや、だってですよ?いきなり、拉致してほしいなんて、聞き間違い以外に何が―――
「明日、私を拉致してほしい」
ウワーイ!間違ってなかったよ!でも全然嬉しくないのは何故?
「あの、自分が何を言っているのかわかりますか?」
拉致してほしい、なんて思考が良く分かりません。僕は北○鮮じゃないんです!拉致して、警察に捕まりたくないのです!犯罪者になりたくないのです!履歴書を泥まみれにしたくないのです!
しかし無情にも彼女はこっくりと頷きました。やめて!僕の将来が!
「あなたに遊園地とか、水族館とか、商店街とかに拉致してもらいたい」
そう言って、彼女はにっこりとほほ笑みます(逆光で見えずらかったですが、口元が緩んだのがかすかに見えました。)。その笑顔に悪意を感じますよー。
って、あれ?彼女は今なんと言いましたか?遊園地とか、水族館、商店街?普通拉致されるとしたら、外国とかじゃないのですか?遊園地とか、水族館はまだ許容できるとして、商店街に拉致するわけがありません。そんな酔狂な事をする人がいるのなら、僕は迷うことなくその人を警察に突き出します。というか、まず拉致をした時点で豚箱行き決定ですよね。
それに、遊園地とか、水族館とか、商店街ってまるで、デートじゃないですか?よし。最初から考えてみましょう。まず、拉致を柔らかく言い変えてみましょう。
拉致→連れていく
成程、つまり先程の台詞を翻訳すると「明日、私を連れ出してほしい」という事になりますね~。更に分かりやすく言えば「明日、一緒にどこかに行きたい」と言う事でしょうか?
―――デートやないか、それ!セツコ、それ拉致やない、デートや!僕の頭がオーバーヒート!
しかし………、これはあくまで僕の推測です。ここで、僕が「デート!行く!」なんて言い、もし勘違いであったのなら「ウザイ!死ね」と彼女に言われてしまい、僕はショックのあまり引きこもり、首を括るしかなくなります!………そもそも彼女がそんな言葉を吐くとは思えませんが。
何にせよ、確認する必要があります。
「あ、あの、それって、世間一般に言う、デ、デート、ではないのでしょうか?」
オゥシット、物凄くドモってしまいましたよ!これでデブで汗かきだったらただのキモオタですよ!って、世界中のそういう方々、御免なさい!奏殴っていいですから、思う存分!
「拉致」
凄く………分かりづらい答えです。もう少し、分かりやすく、僕は質問を言い変えました。
「えっと、明日、僕たち二人で、どこかへ出かける、でいいのですか?」
これなら分かるでしょう。うん。
「違う」
「え?」
マ、マジで?うわ、凄く恥ずかしい!変な勘違いしてた!僕の馬鹿!バカバカバカ!
「二人きりで」
訂正するところは、そこなのですか!
僕らは、何処で(適当に商店街を)何時に(午後一時から)を決めた後、別れました。最後まで彼女の表情が逆光のせいでわかりませんでしたよ。残念極まりない。
ちなみに、その後僕は筆箱を学校に忘れたのを思い出し、教室に戻りました。
「あ、おい晃!置いて行くなんて、ひどいだろが!早く天井からおろせ!」
「眼鏡、何とかしろよ!」
「これはこれは、一次元にしか萌えられない残念すぎる奏君と、前々回に作者が素で容姿を書き忘れたニッシーではありませんか。二人とも、天井にくっついて何をしているのですか?」
「てめぇが、くっつけたんだろ!いいから、何とかしろ!」
「そうだ、もう暗くなってきたし!」
「一人おろすごとに五千円で承諾しましょう」
「ぼったくり!」
奏、仕方なかったのですよ、明日デートですからお金が欲しかったのです。それに人助けをしているのですから、見返りを求めるのは当然の権利なのです!
「分かった!払うから何とかしろ!」
「く、屈辱だが、仕方ないか!あ、ちなみに俺の容姿はイケメンで―――」
ニッシーの言葉をするーしつつ、まず奏を救出しようと動き出しました。この接着剤、少し水分を含めば簡単に取れるようになるのです。故に
「待て!そのバケツはなんだ!ヤメおせあじょあふぉヴぁヴぁヴぁ!」
ドシン!接着剤が使い物にならなくなり、奏が万有引力の法則にしたがい落ちてきた音です。
「おい!いくら何でも手荒すぎるだろ!」
「これしか手段がないんですよ!」
「それなら最初からくっつけるな!」
五月蠅いですね!
「おい眼鏡!俺も早くしろよ!」
犬のくせに刃向かうんじゃありません!携帯があれば、写メをとって全国の女子にこの滑稽な様子を送りつけられるというのに。しかし、改めてみると、やっぱりこいつもイケメンには違いないのですよね。しかもとびっきりの。しかも、身長も僕より高いという。………
「ちょ!なんだよ、その松明!え、水をかけずに下ろす方法があるって?火をつければ、服が焼けるから下りる事が出来る?って、待てって!それだと、俺人生の舞台からも下りないといけないから!待って!お願い!お願い!お願い!お願い!おねアゴアフォアフォアウェホファアフォウェホウェウォ!」
良い奴だったなあ、ニッシー………
「死んでねー!」
「チッ」
そんな事があり、後は特筆するような出来事は起きませんでしたね。ただ、ニッシーを生き埋めにしたぐらいですし。
そして、今現在。時計は午前六時半を示しています。ところで、午後一時からだというのに、こんなに早く起きているのにもきちんとした理由があります。それは、昨日僕が静かに今日の事を考えていた時です。
「おっしゃー!美少女とデートです!どんな服にするか―――って待ち合わせ場所は何処だ!」
そう、待ち合わせ場所を決めるのを忘れていたのです。僕とした事がとんだ失敗を犯してしまいました。オゥシット!しかも、電話番号やメアド(知ってても携帯ないから不可能ですが)も知らない!
どうすればいいんだー!と叫び、「うるせー」と部屋に入ってきたお父様を窓の外に放り投げながら考えていると、ある妙案を思いついたのです。
そう、彼女がウィンターヒルズに住んでいるという事は分かっているのです。それならば、迎えに行く事は十分可能です。しかし、ウィンターヒルズは約十の棟から成り立っているからして、多少彼女の家を探すのに時間はかかります。そのために、今日は早く起きたのです。家の場所を一度確認してから、一時ごろに彼女の家に再び行けばいいのです。僕って天才!
探索に行くときからデートに着ていく服を装備するのもどうかと思い、今は制服姿で朝食についています。
「はい、あなた、アーン」
「アーン」
バカップルも大概にしてください、マイペアレント。気分を害します。そもそも、食パンを箸でつまむのはどうかと。
「嫉妬か?」
「ええ、世の中の普通の両親を持っている全ての人に嫉妬しています」
「褒めるなよ」
「褒めていません」
あなたがこの家の生活費を稼いでいなかったら、とっくの昔にエベレストの頂上に磔にしてますよ、マイファザー!
「ところで」
お母様がふと疑問を言います。
「珍しいわね、晃が早起きするなんて」
「な、何ですか?僕だってたまには早起きしますよ」
「ひょっとして、昨日の彼女とデートとか?」
「いいえ、拉致です」
「やっぱりデートなんだ」
ギャグがスルーされました、泣きたいです!
「お前だけデートなんてずるい!パパも!」
「昨日行ったでしょうが!」
「足ーりーなーい、ママ成分が不足してる!」
ママ成分ってなんですか!って寝癖ぐらい直してください!アホ毛が顔をチクチクついているのです!
「ママ、俺たちも、今からデートに行こう!」
そう言って、パジャマから着替えもしないで 玄関へ向かうお父様。
「うわー!何で靴の中に画びょうが~!」
「パパ、大丈夫?」
フフフ!ひっかかりましたね。僕は考えた事は実行する派なのですよ。しかもただの画びょうじゃありませんよ?例の接着剤がたっぷり塗ってありますから、どう頑張ってもとれません!水分を含ませる以外には!
「ふう、とれた。あ、足が血まみれだ、ウワーン」
………血も水分でした
次回は彼女の家にて、でその後にようやくデート編。しかし、書き方が右も左もわからない。




